エンタープライズ:ニュース 2003/01/28 21:52:00 更新


「安心してIP電話を使ってもらいたい」、沖電気とNECが企業向けIP電話事業で提携

沖電気工業と日本電気は1月28日、企業向けIP電話システム事業に関して提携を結んだ。機器やアプリケーションの相互接続性にまつわる懸念を払い、企業が安心してIP電話システムを導入できる環境を整えていくことが目的だ。

「両社の提携によって、IP電話を企業に安心して使ってもらえるようにしていきたい」(沖電気工業、執行役員IPソリューションカンパニープレジデントの浅井裕氏)――沖電気工業(沖電気)と日本電気(NEC)は1月28日、企業向けIP電話システム事業に関して提携を結んだことを発表した。

 沖電気とNECはこれまで、それぞれ独自にVoIPゲートウェイやIP-PBXといったVoIP製品を開発し、顧客に提供してきた。しかしながら、「VoIPの世界は複雑なだけに、NEC 1社、沖電気1社だけで進めようとしても、簡単ではない」(NECネットワークス執行役員国内事業本部長の木内和宣氏)。そこで、業界標準であるSIPを利用した機器、アプリケーションの相互接続性検証に加え、VoIPサービスの基盤となるプラットフォーム開発までも視野に入れて、広範に協力していくこととした。

 沖電気とNECの提携内容は、主に4つに分かれる。まず、2002年4月に設立した「IP電話普及推進センタ(IPTPC)」の運営にNECも参加し、共同でIP電話システムの相互接続性や音声品質の検証・評価作業を行う。合わせて、今後の不足が懸念されるVoIP技術者の育成にも取り組んでいく方針だ。

 2つめは、両社VoIP製品の相互接続性検証だ。いい意味で枯れつつあるH.323はともかく、標準プロトコルとなるはずのSIPは、解釈の違いなどから実装にばらつきがあり、単につなぐだけではきちんと通話できないことも多い。音声通話ならばまだしも、呼制御やアプリケーションまで含めると、なかなか相互接続性が実現できていないのが現状だ。そこで両社は、上記のIPTPCを活用し、互いの製品ならびに他社製VoIP製品間の相互接続性を検証するほか、インタフェース実装規約の統一にも取り組んでいく。得られた成果を業界に向けて公開、提案していくことも視野に入れているという。

 PBXのリプレースを機に、コスト削減を視野に入れてVoIP機器の導入を検討する企業は多い。しかしながら、音声品質の問題へに加え、1社のソリューションに囲い込まれてしまい、拡張性に欠けたシステムになるのではないかという懸念から、なかなか導入が進まないというケースもあるという。両社の提携は、まさにそうした懸念を取り除き、安心してIP電話システムを導入してもらうためのステップだと両社は説明する。

 3つめは、VoIPならびにネットワーク関連製品の相互供給。具体的な製品名は「まだ検討段階」というが、双方が得意とする分野を補い合い、提供する製品の幅を広げていく。

 そして最後の取り組みは、新たなIP電話アプリケーションプラットフォームの共同開発だ。SIPとParleyという2つの技術をベースに、多様なアプリケーションの実現が可能なアーキテクチャを目指す。「単なる電話ではない、IPサービスとコミュニケーションが組み合わさったソリューションを実現していく」(浅井氏)。

 両社は3月末までに詳細な協力内容をまとめ、4月より本格的な活動を開始する計画だ。両社の技術とノウハウを組み合わせることにより、現時点でも合計50%以上のシェアを握っているという企業向けVoIP市場において、2004年度には「市場そのものの拡大を図るとともに、6〜7割のシェアを取りたい」(浅井氏)という。

 なお沖電気は、IPTPCの設立にあたりアジレント・テクノロジーと提携したほか、コンピュータ・テレコミュニケーション市場に関してマイクロソフトと、CRM分野でSAPと、キャリア向けIPネットワークではシスコシステムズと提携を結んでいる。こうした他社の参加について、まずはしっかり枠組みを固めることが優先としながらも、基本的にはオープンな姿勢で臨むということだ。

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[高橋睦美,ITmedia]