エンタープライズ:ニュース 2003/02/06 03:02:00 更新


岩崎通信機とHPSDがVoIP事業で提携、SIPベースの新たなアプリケーションに取り組む

岩崎通信機とヒューレット・パッカード・ソリューションデリバリは、SIPを利用した企業向けVoIPアプリケーションの開発、提供に関して提携を結んだ。ERPやCRMといった企業システムと連携したVoIPアプリケーションの実現を目指す。

 岩崎通信機とヒューレット・パッカード・ソリューションデリバリ(HPSD)は2月5日、SIPを利用した企業向けVoIPアプリケーションの開発、提供に関して提携を結んだ。今年夏ごろをめどに、ERPやCRMといったアプリケーションと連携したVoIPソリューションを提供していく方針だ。

 VoIPは長らく、通信コスト削減の手段として捉えられてきた。この要素ももちろん重要だが、最近ではもっぱら別の側面にフォーカスが当てられるようになっている。すなわち、音声とデータの統合を踏まえた、新しいコミュニケーションやアプリケーションの追求だ。その基盤となる技術がSIPである。

 次世代VoIPシステムの標準仕様と見なされているSIPだが、比較的新しいプロトコルでもある。一口に「SIP対応機器」といっても、それらがすべて、すんなり相互接続できるわけではない。企業システムと連携したSIPベースのアプリケーションともなればなおさらだ。岩崎通信機の説明によれば、「発信、着信、転送といった電話の基本的な部分については90%以上相互接続が実現できている。しかし、アプリケーションを含んだ拡張SIPについては、これからの課題だ」という。

 両社の協業は、こうした背景を踏まえたものだ。岩崎通信機のSIPサーバやSIP対応IP電話機と、HPSDの音声/データ連携ソリューション「isip」の間で、通話やアプリケーション、各種管理情報の連携を検証し、VoIPアプリケーションの基盤とする。その上に、コールセンターや営業支援など、目的ごとにさまざまな製品を加え、顧客に提供していく方針だ。

 例えば、インタラクティブ・インテリジェンスのコンタクトセンター向けユニファイドメッセージングシステム「Customer Interaction Center」やエヌツーエスエムのモバイル端末対応インテリジェントアシスタント「LISA」などが、このVoIPプラットフォーム向けに提供される。そのほかにも市場のニーズに応じて、他のアプリケーションやシステムとの連携も視野に入れているという。

 並行して、PBX環境からSIPへのマイグレーションを支援するためのセンターも設置。交換機や音声制御分野で長い経験と技術を持つ岩崎通信機と、米HP内のインターネット関連事業部に属し、国内でのインターネット関連ソリューションのデリバリやシステムインテグレーションを担い、サーバやIPインフラの構築に強みを持つHPSDが協力することで、顧客が既存の資産を活かしながら、SIPベースのアプリケーションをスムーズに導入できるように支援していく。

 ただし、沖電気工業やNEC、あるいはシスコシステムズといった多くの企業も、同様のアプローチに取り組んでいる。ことVoIPに関しては、やや出遅れた感も否めない。しかしながら、「それだけに、古い(VoIP)技術にとらわれることなく、最初からSIPベースで始めることができた。これまで築いてきたマーケットも有利に働くだろう」(岩崎通信機ENS事業部、ENS事業推進部副部長の諏江信孝氏)という。

 そもそも、両社が認めるとおり、この新たなマーケットに寄せられる期待は大きいものの、まだ固まってはいない。企業顧客を引き付けられるような魅力あるSIPアプリケーションを現実のものにできるかが鍵を握ることになる。

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[高橋睦美,ITmedia]