エンタープライズ:ニュース 2003/03/05 15:17:00 更新


Webサービス標準によるアプリケーション統合でEAIベンダーの淘汰を促すBEA

「BEA eWorld 2003」カンファレンスでは、ディッゼンCTOのテクニカルキーノートが行われ、これが事実上のクロージングセッションとなった。ディッゼン氏は、JavaとXMLという標準ベースのインテグレーションを推進し、「Web 2.0」の実現を目指す同社の取り組みを紹介した。

 米国時間の3月4日、「BEA eWorld 2003」カンファレンスでは、BEAシステムズのチーフテクノロジーオフィサー、スコット・ディッゼン氏のテクニカルキーノートが行われ、これが事実上のクロージングセッションとなった。

 ディッゼン氏は、JavaとXMLという標準ベースのインテグレーションを推進し、「Web 2.0」の実現を目指す同社の取り組みを紹介した。ディッゼン氏は、ブラウザを介してユーザーがアプリケーションにリクエストを出す現在のWeb(1.0)に対して、XMLとWebサービスによってアプリケーションとアプリケーションがプラグ&プレイでコミュニケーションできる世界をWeb 2.0と呼ぶ。

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「エンタープライズ市場には巨大なプレーヤーがあり、BEAは踏み潰されないようダンスしたい」とディッゼンCTO


 BEAをはじめとするWebアプリケーションサーバベンダーは、同期接続で密結合型のアプリケーションを構築する機能を中核としてWeb 1.0の世界を築いてきたが、アナリストらの見方では、今後、アプリケーションを非同期接続で疎結合するB2BやEAI(Enterprise Application Integration)の領域へとその市場を拡大していくという。

 BEAは、ガートナーが「アプリケーション・プラットフォーム・スイート」(APS)と定義した領域で、明確なビジョナリーとして位置付けられている。同調査会社では、2007年までには、すべてのアプリケーションソフトウェアインフラの75%は、このAPSによって占められると予測しており、つまり、スタンドアロンのB2BおよびEAIベンダーは淘汰されるというわけだ。

 しかし、現実のWebプラットフォームは、サービスベースのアーキテクチャが浸透していないため、インテグレーションや再利用の妨げになっている。ディッゼン氏は、Webサービスをアプリケーションインテグレーションのためのレイヤとして位置付け、デザイン段階から組み込んでおくべきだとする。アプリケーション内や同じJava言語であれば、RMI/IIOPやJMSを使い、アプリケーション間や言語が異なる場合は、XML/Webサービスを利用すればいい。

 とはいえ、まだまだWebサービスの普及には解決しなければならない課題も多い。

「セキュリティやリライアビリティは、企業で広範にWebサービスが採用されるためには極めて重要だ」とディッゼン氏。また、運用や管理を容易にすることも不可欠となる。

 WS-Securityは、SOAPメッセージを保護する仕様であり、相互運用性のテストがOASISとWS-Iによって計画されている段階だ。一方、WS-Reliabilityは、非同期通信を保証する仕様で、HTTPのようなプロトコルでも注文のメッセージが欠けたり、2度送られることがないようにしてくれる。BEAでは、リライアビリティをさらに高めるべく、WS-Acknowledgement、WS-CallBack、およびWS-MessageDataという3つの仕様を同社のdev2devサイトで公開した。

 ディッゼン氏によれば、セキュリティやリライアビリティを高めるこれらの仕様は新しいBEA WebLogic Platform 8.1に実装されるという。

WebLogic Platform 8.1の目玉、Workshop

 開発とインテグレーションの統合という目標を掲げたBEA WebLogic Platform 8.1の目玉は、大幅な改良が施されたWorkshopだといっていい。ディッゼン氏もテクニカルキーノートの中で、そのデモを行っている。

 ただし、Javaの開発ツールであるWorkshopは、必然的にJava言語のためにビジネスプロセスを定義する機能を搭載する。このままではビジネスアナリストのような開発スキルがない人を取り込めないし、また、言語に依存しないUMLやBPEL4WSをサポートするワークフローツールとの橋渡しも必要になる。

 新しいWorkshop 8.1では、ワークフローツールとの双方向のやり取りが実現されるほか、次期バージョンでは、今後登場するであろうビジネスアナリスト向けのワークフローツールとの連携も視野に入れているという。

 また、ディッゼン氏は国内市場では未発表の「Liquid Data」についても触れた。Liquid Dataは、企業内に散在するさまざまなタイプのデータを1つの仮想的なデータベースとして見せ、XQueryによる統一的なアクセスを実現するものだ。アプリケーションのインテグレーションをWebサービスで行い、データのインテグレーションはXQueryで行うと考えればいい。

 ディッゼン氏は、日本人プレスとのQ&Aセッションで「現在に至るまでEAIベンダーは良い仕事をしてこなかった。顧客らは投資をを今後も生かしたいと考えているし、標準化がもたらす豊かなツールを手に入れたいと考えている」と話している。

 こうした構図は「いつか来た道」でもある。EAIベンダーをアプリケーションサーバベンダーに置き換えれば分かるだろう。J2EEという標準が確立され、かつては40近くあったアプリケーションサーバベンダーは、.NETのマイクロソフトを入れても数社に収れんされている。

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[浅井英二,ITmedia]