エンタープライズ:ニュース 2003/03/12 20:26:00 更新


日本IBM、約束どおり「Informix」の新バージョンを投入

米国ではひっそりと発表されたInformixの新バージョンだが、日本市場ではビジネス的に見ても決して無視できないという。IBMでは、顧客のニーズがある限り、12カ月から18カ月ごとのバージョンアップを約束している。新しいバージョンでは、マニュアルの完全日本語化も復活したという。

 日本アイ・ビー・エムが近く「Informix」をバージョンアップする。マルチプロセッサ構成で高い性能とRAS(Reliability、Availability、Scalability)機能を提供する「IBM Informix Dynamic Server」だけでなく、ユニプロセッサおよびデュアルプロセッサ構成で高いコストパフォーマンスを提供する「IBM Informix OnLine」も新しいOSに対応するなど、見るべき点が多い。

 2001年の買収によって手に入れた同RDBMSは、既存顧客からのニーズがある限り開発が続けられ、IBMによって12カ月から18カ月ごとのバージョンアップが約束されている。とはいえ、DB2をフラグシップ製品として掲げるIBMは、「IBM Informix Dynamic Server 9.4」と「IBM Informix OnLine 5.2」のアナウンスも控えめにならざるを得ない。実際に北米ではリリースで伝えられたのみだ。

 しかし、1990年代にアスキーによって十分なローカライズが行われたせいもあり、日本市場では依然として忠誠心の高いInformixユーザーが多い。開発環境であるInformix 4GLの人気も根強く、アプリケーションも豊富に存在しているという。

 日本IBMでデータマネジメントソリューション事業を統括する安田誠GMは、「顧客サイトでは、既存システムの成長に伴う追加ライセンスの購入も多く、ビジネス的に見ても堅調に推移している」と、同社にとって無視できないビジネスだとする。

 1990年代半ばに、将来を見据えて全く異なるアーキテクチャで開発されたInformix Dynamic Serverは、今回の9.4へのバージョンアップによって、さらにそのパフォーマンスやスケーラビリティに磨きがかかる。これまで2Gバイトだったチャンサイズの制限を4テラバイトまで一気に拡大し、より大規模なシステムに対応できるようにする。

 また、SAP R/3のデータベースとして使われている例も多く、当然のことながら高い可用性が求められる。これまでにも地理的に異なるサイト間でデータを複製し合う「Enterprise Replication」(ER)機能とホットスタンバイの「High Availability Data Replication」(HDR)機能があったが、残念ながら2つの構成を共存させることができなかった。

 新しい9.4では、こうしたER機能とHDR機能を共存可能とし、ホットスタンバイで切り替わったサーバが、異なるサイト間のレプリケーションも実行できるようにした。安田氏は、「アーキテクチャの変更を伴うものだが、顧客のニーズがあり、それに対応したもの」と話す。

 IBMに買収・統合されて以降、2001年の買収完了直後に9.3をリリースしているが、開発過程が統合されてからは、今回の9.4が初めてのメジャーなアップグレードとなる。

 開発環境や、Unicodeをはじめとする標準に対する作業は、IBMが先行しており、それを取り込む形となっている。さらに次期バージョンでは、管理面でDB2とInformixを統合できるようにもなるという。

 新バージョンの9.4では、Informix Dynamic Serverを特徴付けている「DataBlade」でも新しいソリューションが紹介される。

 DataBladeは、各種のモジュールをデータベースエンジンに組み込むことによって、ユーザーの要件に合わせてその機能を拡張できる仕組みだ。2次元および3次元データを高速に検索できる「R-tree Indexing」や、時系列データ、例えば時々刻々と変化する株価データの分析に有効な「TimeSeries」などが知られている。

 今回のバージョンアップでは、TimeSeriesの金融業界向け「テンプレート」ともいえる「Finance Foundation for Capital Markets」が国内でも正式発表され、ソリューションメニューに加えられている。

軽量エンジン、Informix OnLineも最新OS対応

 Informix OnLineのメジャーなバージョンアップは、「2000年対応」機能を追加した5.1を1998年にリリースして以来となる。

 Informix Dynamic Serverが登場して以降、Informix OnLineは消えていく製品として扱われた時期もあったが、現在では1CPUや2CPUという構成で快適に動作するエンジンとして位置付け直され、今回発表された5.2では、Solaris 8のような比較的新しいOSに対応した。Solaris 9やHP-UX 11i、あるいはAIX 5.2(いずれも32ビット版)にも随時対応するほか、Linux 2.4版が近く米国で発表されるという。

 安田氏は、「最新のOSに順次対応が進むことで、コストパフォーマンスの優れたハードウェアへ更新して、既存のシステムを使い続けたいという顧客のニーズにこたえられる」と話す。

 Informix Dynamic Server 9.4が4月1日から、Informix OnLine 5.2は3月21日からそれぞれ出荷が開始される。なお今回からは、アスキー時代と同様、可能な限りすべてのマニュアルが日本語化されるという。IBMの顧客に対するコミットメントは、こんなところにも表れている。

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[浅井英二,ITmedia]