エンタープライズ:ニュース 2003/05/28 10:20:00 更新


マイクロソフト、ソフトウェアアシュアランスの人気挽回策として「特典」を追加

マイクロソフトが、企業向けのライセンスプログラムを改善するため、「ソフトウェアアシュアランス」にさまざまな特典を追加する。IT支出の削減という逆風もあり、不人気の同オプションだが、自宅デスクトップPCでの使用権付与やサポートの強化を打ち出して挽回を図る。

 何かと不人気の新しいライセンスプログラムを改善すべく、マイクロソフトが、ソフトウェアアシュアランスのオプションを選択する顧客に「特典」を提供することになった。

 マイクロソフトは5月28日、企業向けのライセンスにアップグレード保証オプションであるソフトウェアアシュアランスに一連の特典を追加すると発表した。同オプションを付けた顧客には、自宅のデスクトップPCにOfficeスイートなどをインストールして使用する権利や、サーバ製品に関するWebまたは電話によるサポートなどが提供される。

 ソフトウェアアシュアランスは、企業向けのOpen License 6.0またはSelect 6.0をライセンスする顧客が、その契約期間中であれば、最新製品を追加費用なしに利用する権利を得るもの。いわゆる「サブスクリプション」形態への地ならしともいえる。サブスクリプション自体の考え方は一定の理解を得られているし、マイクロソフトも1997年、Select 4.0においてアップグレードの権利を得られる「Enterprise Agreement」の提供を既に開始している。

「長引く景気の低迷からIT支出を見直す企業が多く、タイミングが悪かった」と話すのはエンタープライズ・パートナー事業部でライセンシング部長を務める木村務氏。

 マイクロソフトのソフトウェアアシュアランス導入は、2001年5月に発表された。当初の予定では、同年10月までは従来のアップグレードも受けられる移行猶予期間を設け、それ以降はボリュームディスカウントの適用を受ける企業顧客は、ソフトウェアアシュアランスに移行するか、その都度、新規購入を繰り返すかの選択を迫られた。これが、Open License 6.0やSelect 6.0といったボリュームディスカウント契約企業のうち、かなりの契約期間を残す顧客の反発を買った。

 最終的には、アップグレードの提供期間が2002年7月まで延長されたが、Linuxやオープンソースを勢いづかせる一因になったともいわれている。

 とはいえ、マイクロソフト製品の導入を企業全体、あるいはグループ会社で一括して契約することのメリットは大きい。ボリュームディスカウントが適用されるため、「ボックスを購入するより単価が大幅に安くなるうえ、ライセンス管理も簡素化できる」(木村氏)。このことは企業が不正コピーを犯すリスクを回避することにもつながるという。

 また、マイクロソフトは人気挽回策も継続的に打ち出してきた。2002年10月、全製品についてのサポート期間を定める新しい施策「サポート ライフサイクル ポリシー」を発表し、導入製品のサポートがいつまでか分からないという顧客の不安を解消した。これにより、特に企業ユーザーは将来に渡ってかかるコストを計算しやすくなったという。今回の特典追加は、これに続くライセンス改善策の第2弾といえる。世界中の企業顧客らの声に耳を傾け、彼らの意見が反映されたものだという。

 例えば、Officeスイートではこれまでにも社員がノートPCにインストールして使用する権利を認めてきたが、今回の特典では自宅のデスクトップPCにまでその範囲を拡大している。

 また、新製品へのアップグレードを保証しても、その知識やスキルがなければ、実際の移行は進まない。既存のアプリケーションとの整合性も取らなければならない。そのため、特典の目玉として、サーバ製品に対するサポートの提供を盛り込んでいるほか、CDベースのトレーニングソフトウェアも提供していくという。トレーニングソフトウェアは、当初はOfficeスイートを中心とした20タイトルになるが、将来はサーバ製品に関するもののラインアップする。

 こうした一連の施策は、「マイクロソフトが企業顧客向けのライセンス形態を模索していく一つの過程、つまり“長い旅の始まり”だ」と木村氏は話す。

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[浅井英二,ITmedia]