エンタープライズ:ケーススタディ 2003/07/15 12:01:00 更新


行方不明の子どもを救う分析ソフトウェア

CA World 2003で、同社の情報ポータル製品であるCleaverPath Portalのユーザー、National Center for Missing and Exploited Chilrenに話を聞いた。同団体は、行方不明の子どもを探し出す業務を行っている。

 米Computer Associates(CA)はラスベガスにおいて、同社の戦略や製品、サービスなどを紹介する年次カンファレンス「CA World 2003」を開催している。この中で、同社の情報ポータル製品であるCleaverPath Portalのユーザーの一つ、National Center for Missing and Exploited ChilrenのCTO、リック・ミニクッチ氏に話を聞いた。同団体は、全米で一日驚くことに2300人に上るという行方不明の子どもを、自社のデータベースをもとに、FBIやマスメディアの協力を得ながら探し出す業務を行っている。

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日本の組織からもシステムについて問い合わせが来たと話すリック氏。北朝鮮の拉致事件についての話題で「役に立てるならぜひ日本にもシステムを紹介したい」と話した。

「CleaverPathを導入したことで、子どもの発見率がかつての60%から、93%にまで向上した」と同氏は話す。行方不明の発生は主に、子どもの両親が離婚したことによる名前の変更が原因になるケース、性犯罪に巻き込まれるケースの2つに分けられるという。

 特に、性犯罪に巻き込まれた場合には、少なくとも24時間以内に探し出さなければ子どもの命は危ういという。そのため、不明になった子どもの写真をすばやくWebサイトに載せるなどの方法で見つけ出す必要がある。

 ここでは、子どもの基礎情報や、不明になった場所、地域ごとの過去の犯罪者の履歴などを利用して、検索対象を狭めていく必要がある。

 そこで、さまざまなデータをもとに利用されたのがCleaverPathだった。CleaverPathによって、FBIなどのデータソースを参照し、状況を分析する。過去のデータや発生地域などとマッピングされた情報の相関関係を調べ、加害者候補を割り出すなど、情報を掘り下げていくという。

もし今、子どもが姿を消したら……

 発見率が60%だったころは、30人の担当者が24時間365日体制で、紙と鉛筆を使って情報を調べていた。

「これは藁の山から針一本を探し出すような作業だ。」(同氏)

 CleaverPath導入後は、まず最初の電話が入ると、その情報がFBIと州政府に流れ、市の警察にまで降りてくる。ラスベガスならばネバダ州政府が全米犯罪IDのデータベースに情報を取り込む。

 そして、写真やポスターによる照会が始まり、Webサイトや電子メールへと「捜査網」は押し広げられていく。一般からの目撃情報などから、目や髪の毛の色など300の情報ソースが更新され、これをもとに、相関関係のあるデータをまとめていくという。データベースには、いなくなった子どもに関するものと、公開した情報に対するリプライ情報を格納する2種類がある。

 例えば、6歳の女の子が被害者の場合、目撃情報から、「不審な青い車」や「この地域で見かけた」といった情報を複合的に分析することで、発見の確率を高めることができるという。

ウォルマートも協力

 Webやテレビなどを通じた情報提供などを求めてきた結果、同団体の活動自体が知られるようになり、ウォルマートが協力を打診してくれたという。

 実際にあった話として、ウォルマート店内のビデオカメラに、誘拐を試みる不審な行動の一部始終が映し出されていたことがあった。このケースでは、ウォルマートは店のすべてのドアにロックをかけ、逃亡を阻止するという。

 ミニクッチ氏は、今後の展開として、携帯電話に行方不明の子どもの写真を配信する形で、システム化していきたいと話した。

 元々、人が加齢したときの顔の映像を制作するイメージングの企業を経営し、FBIと取引していた同氏。仕事をするうちに、人命を救う仕事に興味を持つようになり、やりがいを見つけたと話している。

 一般に、情報技術は収益の増加を目標として利用されるが、ITが実際に子どもの命を救っていることは喜ばしいことに思える。

 同団体は1985年に設立され、CAの創設者であるチャールズ・ウォン氏のバックアップなどにより、運営されている。累計で既に7万9000人の行方不明者が発見された。

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[怒賀新也,ITmedia]