エンタープライズ:インタビュー 2003/07/17 07:24:00 更新


Interview:J2EE開発を簡素化すべくBEAに合流した元MS幹部のボースワース氏 (1/2)

MicrosoftでAccessを開発したり、XML戦略開発を指揮したボースワース氏は、夢を実現すべくBEAに合流した。彼が取り組む統一されたフレームワークは、J2EEの煩雑さからデベロッパーを解放し、そのすそ野を大きく拡大することが期待されている。

 企業には大小さまざまなアプリケーションがある。大企業ともなれば、数百、あるいは数千に達するだろう。それらは残念ながらインテグレーションされることを前提に開発されていない。しかし、今や企業は、例えば、単一のポータルから複数のアプリケーションにアクセスできることを望んでいる。それは、より複合的な情報が競合優位のために必要だからだ。

 ポータルという考え方は、Webから生まれた。HTTP/HTMLやJavaのような技術からなるそのWebプラットフォームは、いつでもどこからでも情報へアクセスできるようにしてくれたが、BEA Systemsでチーフアーキテクト兼開発担当上席副社長を務めるアダム・ボースワース氏は「それだけでは十分ではない」と話す。

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シアトルの自宅、シリコンバレー本社、そしてニューヨークの研究所を行き来する生活のボスワース氏


 7月16日、BEA eWrold Japan 2003カンファレンスの基調講演で「Webプラットフォームの波はまだ始まったばかり」と話すボースワース氏は、インテグレーションを可能にする「Services Oriented Architecture」(SOA)こそがWebプラットフォームの革新の波をさらに大きくする進化だという。

 「将来われわれは、今のITを振り返り、プログラム間で情報がシームレスにやり取りできず、課金や管理もできない無秩序な状態でどうやっていたのだろうかと不思議に思うだろう」(ボースワース氏)

 メインフレームやミニコン、PCの登場に続き、クライアント/サーバ、そしてWebプラットフォームといった幾つもの革新の波をわれわれは経験している。IT業界がこうした過去から学ぶとすれば、それは革新の波はほぼ10年周期で起こり、そして、ボースワース氏によれば、その革新は、桁違いのユーザーを生み、コンピューティングのすそ野を拡大してきたという。

 Microsoftでは、Accessデータベースの開発・設計を指揮したり、XML戦略開発の責任者を務めた彼は、革新的な技術に飛びつくデベロッパーはごくわずかで、大多数が革新の波に乗るにはフレームワークや優れたツールの存在が不可欠だと指摘する。

 これまでしばしば、BEA WebLogic Platform 8.1でスイートに統合されたWebLogci Workshop開発環境は、「Java版のVisual Basic」と呼ばれてきた。コントロールをドラッグ&ドロップし、ウィザードでソースコードを生成する開発アプローチが似ていて、J2EE開発者のすそ野拡大が期待されているからだ。

 基調講演後のインタビューでボースワース氏は、「フレームワークを提供するとき、ビジネスユーザーがアプリケーションを構築できるモデルをつくらないといけない」と話す。

 Webプラットフォームの波をリードし、新しいパラダイムを招来するため、彼は自ら設立した新興企業をBEAに売却した。BEAの戦略や技術的な方向性に大きな影響力を持つボースワース氏に話を聞いた。


ZDNet あなたは、MicrosoftでXML関連の開発に携わったあと、CrossGainを共同設立しましたが、それもBEAに売却しました。一連の経緯について教えてください。

ボースワース 私はMicrosoftで13年間働きましたが、その間、同社はあまりにも大きくなりましたし、官僚的にもなりました。ビル・ゲイツはサポートしてくれましたが、私はうまく身を処することができなくなりました。

 そこで私は仲間と同社を去り、2000年にCrossGainを設立しました。しかし、Microsoftはその設立も、(デベロッパーリレーション担当副社長だった)トッド・ニールセン(現BEA Systemsチーフマーケティングオフィサー)をCEOに指名したことも気に入らなかったのです。

 彼らは(1年間、Microsoftとの競合を避ける、という合意事項に違反したとして)圧力をかけてきました。そこでCrossGainは2001年、(ボースワース氏を含む)該当社員をいったん解雇し、再スタートすることを余儀なくされました。

 その一方で、われわれは顧客らに話を聞いたところ、すべての企業がJ2EEを採用していましたが、きちんと活用できるデベロッパーが不足しているということが分かりました。そんなとき、BEAのアルフレッド・チュアング(会長兼CEO)に会って話をしたところ、彼はエキサイトして「会社を買いたい」と言ってくれました。

 そこで私は、トッドらと相談し、「統一されたフレームワークとIDEをつくろう」と決めました。Visual C++やVisual Basicを開発していた技術者が設立したWestsideという会社も買収し、専門知識を持つ技術者を160人に増やしてからBEAに合流し、フレームワークとIDEの構築に着手しました。

ZDNet 随分と複雑なプロセスですね。

ボースワース Westsideには、複雑な物事を簡素化する能力を備えた技術者がいました。この人とこそ仕事を進めたいと思いました。映画にさまざまな俳優が必要なのと同じです。

ZDNet なぜ、BEAと一緒にやろうと決めたのですか。

ボースワース IBMやSunともOEMの契約の話があり、いろいろとテストをしていましたが、WebLogicはダントツで優れたパフォーマンスを叩きだしていました。どうせやるならベストのベンダーと仕事をしたいと考えました。IBMは気に入らなかったでしょうが……。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]