エンタープライズ:インタビュー 2003/07/17 07:24:00 更新


Interview:J2EE開発を簡素化すべくBEAに合流した元MS幹部のボースワース氏 (2/2)

ビジネスユーザーに力を与えたい

ZDNet 基調講演の中で「Services Oriented Architecture」(SOA)というキーワードが何度か出てきました。分かりやすく教えてください。

ボースワース プロジェクトやタスクを管理するとても単純なシステムを考えてください。通常のアプリケーションは、1日12時間くらいしか使われないし、ユーザーも何人くらいか分かっています。したがってどれくらいのハードウェアが必要かも前もって想定できます。

 しかし、このアプリケーションが、ほかのアプリケーションから利用されるサービスとなったとき、すべてが変わってしまいます。ユーザーの数が分からないため、拡張性のあるアプリケーションサーバが必要になります。信頼性も求められます。また、いつアクセスされるのか分からないため、24時間7日間止められず、それだけ運用も難しくなります。

 また、システムに変更があった場合、アプリケーションにそれを伝えられないといけないので、メッセージングが重要になってきます。1カ所の変更でシステムが壊れてしまわないように「疎結合」という考え方も必要です。

 こうしたサービスを組み合わせる新しいパラダイムを「Services Oriented Architecture」(SOA)と呼んでいます。

ZDNet WebLogic Platform 8.1のリリースで夢は実現しましたか?

ボースワース まだ道半ばです。ソフトウェアの世界では5年の歳月と3つのリリースが必要だといわれています。それは、5年のあいだに世界が変わり、そこから学ばなければならなかったり、プラットフォームを構築するとき、さらに幾つかやらないといけないことがあるからです。

 例えば、プラットフォームを管理するインフラを用意しなければならないし、ビジネスユーザーがアプリケーションを構築できるモデルも提供できなければなりません。

 私が開発したAccessや、Word、Excelが良い例ですが、ビジネスユーザーに力を与えたいのです。デベロッパーを煩わせることなく、ユーザーインタフェースなどはビジネスユーザーが定義できるようにしたいのです。

 また、先ほども触れましたが、世界そのものが絶えず変わっています。モバイルやオケージョナリーコネクテッドといった新しい接続形態が登場し、そこにサービス志向のアーキテクチャを適用しようとすると、アプリケーションの作り方が異なってきます。

 すべてのアプリケーションが情報を内包したサービスになると、取得した情報はモバイルデバイスに格納しておきたくなります。接続していなくても情報にアクセスできるからです。しかし、情報が変更された場合は、それを知る必要があります。こうなるとWebブラウザとは全く異なる世界です。携帯電話にショートメッセージがダウンロードされるのと同じで、プルではなくプッシュになるわけです。

ZDNet そうした機能は、WebLogic Platformの次期リリースに搭載されるのでしょうか。

ボースワース どのリリースになるかは分かりません。重要なことは、設定されたスケジュールどおりに製品をリリースすることです。間に合わなければ、次のリリースに回されることになります。

ZDNet 夢を実現するためにあなたが開発を進めているフレームワークに名前はないのですか?

ボースワース ありません。Javaを文字って「.JET」と呼ぶ人もいますが(笑い)。

ZDNet ライバルは名前を付けています。名前がないと、その存在が見えにくく、埋没してしまいませんか。

ボースワース そうは思いません。われわれはWebLogic Serverの上に構築したフレームワークを使い、WebLogic PortalやWebLogic Integrationを開発してきました。そうすることで、デベロッパーにモデルを提供し、彼らは低レベルのAPIではなく、アプリケーションやビジネスロジックそのものに注力できるようにします。

 基調講演や記者発表会でWorkshopによる開発のデモを行いましたが、ドラッグ&ドロップとウィザードによるアプローチの背後では、さまざまなbeanが生成され、JAX RPCメソッドもつくられています。つまり、J2EE開発で必要となるたくさんの「配管」が自動的に生成されているわけで、デベロッパーをそうした煩雑な作業から解放しています。

 呼ぶときに名前があった方が便利だとは思いますが、マーケティングのことを私に聞かないでください(笑い)。

ZDNet 日本にはしばしば来日するのですか。

ボースワース 年に2回程度です。出張ではなく、観光ということもあります。

ZDNet 日本の顧客企業を訪問する機会もあると思いますが、彼らのJ2EE採用の度合いをどのように感じていますか。

ボースワース 私が訪問する企業は当然、すべてがJ2EEを採用しているわけですが、とても慎重です。米国の場合、ややもすれば、急ぎ過ぎて必要なトレーニングがなされていないことやメソドロジーも考慮しないこともあります。しかし、日本の顧客企業は、WebLogic Platform 8.1について話をしても、「慎重に検討してから」「既存のメソドロジーとどのように組み合わせていくのかを検討したい」という声を聞きます。

 ただ、日本の企業もインドや中国の開発リソースを活用する分散開発の必要性を感じています。WebLogic Platform 8.1では、さまざまなデベロッパーが統一されたフレームワーク上で開発できるため、コストを抑えつつ、短期間で開発したいというニーズにもこたえられると思います。

関連記事
▼WebLogic Serverで知るJSP/Servlet入門
▼BEAが先制パンチ、J2EE開発を簡素化するWebLogic Workshopの実績をアピール
▼Interview:「次はプロセスベースのプログラミングモデル」とBEAのチュアングCEO
▼日本BEA、「WebLogic Server 8.1J」を発表
▼「過去」を生かし「未来」をもたらすBEA WebLogic Platform 8.1発表
▼Javaを知らない900万開発者にJ2EEのパワーをもたらすBEA
▼VB並みに簡単なJava開発ツールでさらなる勢力拡大を目指すBEA
▼BEA eWorld Japan 2003 レポート

関連リンク
▼BEA eWorld Japan 2003オフィシャルサイト

前のページ | 1 2 |      

[聞き手:浅井英二,ITmedia]