エンタープライズ:ニュース 2003/07/19 13:21:00 更新


SCOがLinuxユーザーに向けた「ライセンシングプログラム」を準備中

SCOによるUNIX知的所有権問題が新たな段階に入ろうとしている。Linuxユーザーに対して「警告」を与えていた同社が、ユーザーに向けたライセンシングプログラムを準備しているのだ。詳細は21日、明らかになる。(IDG)

 SCO GroupはLinuxユーザーが訴訟の心配なしに、このオープンソースOSを使い続けることができるように、新たにLinuxライセンシングプログラムを準備中だ。

 このプログラムは「来月中あたりに」発表される予定だとSCOの広報担当者、ブレイク・ストウェル氏は述べている。ただし、7月21日に開催予定の記者会見にSCOのダール・マクブライドCEOと法律事務所Boies, Schiller & Flexnerのデビッド・ボイス氏が出席し、ライセンシングプログラムの「露払い」をするという。

 SCOは3月、IBMが契約違反と企業機密の不正流用を行ったとして10億ドル規模の提訴を行った。SCOの申し立ての核心部分は、IBMがLinuxサービスビジネスのためにUNIXの経済価値を破壊しようと試み、UNIXのソースコードをLinuxカーネルに不正に寄贈したというもの。

 SCOはそれ以降、Linuxユーザーに対して、彼らがSCOの知的所有権を不正使用している責任を有するという可能性を警告し、またIBMに対しては、損害賠償請求額を30億ドルに引き上げた。SCOは6月、IBMのUNIXライセンスを停止すると発表した。このライセンスは1985年にAT&TがIBMに与えたもので、その後権利はSCOに移管されている。

 IBMはこの件に関して不正なことはないと否定している。

 ストウェル氏はSCOの新しいライセンシングプログラムに関して詳細は述べず、「われわれは特定の詳細部分について取り組んでおり、Linuxユーザーが法的な問題なしにLinuxを使うことができるような、ある種のライセンシングプログラムを作ろうとしている」と述べている。

 21日の記者会見は米国東部夏時間の午後12時、テレカンファレンスによって行われる。

 この記者会見の発表文によれば、SCOの幹部が「Linux顧客にとっての好機」について詳細説明を行うという。これはLinuxユーザーにとってよい前兆ではないとあるアナリストは述べた。

 「“Linux顧客にとっての好機”という言葉がまず目に飛び込んできた」とIlluminataのアナリスト、ゴードン・ハフ氏。「好機がいいニュースであることはめったにない」と同氏。

 Linuxの顧客の大半はSCOのライセンシングプログラムに参加しないだろうが、SCOから訴えられない保証を得るために、SCOに支払いをする企業も出てくるだろうとハフ氏は予想する。SCOは、「99%のLinuxユーザーが鼻で笑ったとしても、面倒事を追い払うためにIT予算のうちのわずかを支払ってくれる大企業がある程度はいるだろうと踏んでいる」と同氏は説明する。

 この訴訟を追跡している法律家によれば、21日に行われる記者会見は興味深いものになるという。それは、デビッド・ボイス氏がSCOと契約を結んで以来初めて、本件に関する公の場に登場するからだ。

 ボイス氏は注目を集める訴訟にかかわっていることで知られる。2000年に行われた大統領選のフロリダ州における投票結果に関しアル・ゴア氏が不正を訴えた件、米国法務省によるMicrosoft訴訟は、ボイス氏がかかわっていた。ボイス氏が21日のテレカンファレンスに登場することで、この訴訟は聴衆を引きつけることになるだろうとRosenlaw & Einschlag法律事務所のパートナーであるローレンス・ローゼン氏は述べる。ローゼン氏はオープンソース擁護グループであるOpen Source Initiativeの相談役の一人である。

 「どの世代にも一定レベルのパフォーマンスを行う弁護士はいるものだ」とローゼン氏。「デビッド・ボイス氏はその種の弁護士だ」と同氏は評する。「私がデビッド・ボイス氏を雇って何かをしようとするなら、法廷でのパフォーマンスを期待するだろうし、恐らく彼はマイクの前に立ったパフォーマンスで金を稼いでいるのだ」と同氏。

 ボイス氏がコメントすれば、既に有名なこの訴訟はさらに注目の的になるだろうと、別の法律家は賛同する。「これは、揺さぶりをかけるための戦法だ」とBrown Raysman Millstein Felder & Steinerのジェフリー・ノイバーガー氏は述べる。「デビッド・ボイス氏は明らかに注目を浴びる人物だ。なにか興味深いことか、物議を醸すようなことを言ってくれることだろう」とノイバーガー氏。

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[Robert McMillan,IDG News Service]

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