エンタープライズ:ニュース 2003/07/31 06:20:00 更新


無線LAN導入のハードルは「セキュリティ」「効率的な管理」「ROI測定」そして……

野村総合研究所(NRI)とNRIデータサービスは企業向け無線LANの設計や導入、運用に関する実証実験を行い、その結果をホワイトペーパーとしてまとめた。

 野村総合研究所(NRI)とNRIデータサービスは企業向け無線LANの設計や導入、運用に関する実証実験を行い、その結果をまとめた。実験に際しては、モバイル環境を意識して設計されたプロセッサ「Centrino」を含む技術面や情報提供などで、インテルの協力を得た。

 一連の実証実験では、実オフィスへの導入を想定して、アクセスポイントの設置場所とオフィスレイアウト、ユーザー数と帯域、スループットの関係や電波の漏れ具合を測定したほか、IPSec VPNやCisco LEAP、ハードウェアトークンなどを組み合わせたセキュリティ構成を検証。この結果、アクセスポイントの配置に留意して設計すれば、無線LANは企業のネットワークインフラとして有効だという結論に至ったという。無論、既存のインフラすべてを無線LANに入れ替えるわけではなく、扱う情報や環境に応じた適材適所での導入が前提だ。

 無線LANの導入においては、これまでたびたび指摘のあったとおり、セキュリティの確保が課題の1つだ。だがこれとともに、「よくある失敗が、きちんと設計しないままに無線LANを導入するケース。例えば800Kbps程度のスループットが必要なアプリケーションがあるのに802.11bを導入するような場合だと、無線LAN導入によってかえって不便さが増してしまう」と、NRIの高橋主氏(事業戦略コンサルティング部副主任コンサルタント)は述べる。

 高橋氏は同時に、導入後の効率的な運用管理方法が見出しにくいこと、導入効果の測定が困難なことも、企業における無線LANの普及を妨げるハードルの1つになっていると指摘した。

 損保ジャパンでは、NRIおよびNRIデータサービスによる一次実証実験を受けて、ユーザー企業として無線LANの評価を進めている。同社情報システム部課長代理の岩田卓也氏は、金融機関であり、もともと管理体制を整えていたことから、言われるほどセキュリティは問題にならなかったとし、むしろ、「単に有線LANを無線に置き換えるだけではコスト的に厳しいことから、どういった部分で無線LANを活用すれば生産性向上につながるかを模索している」と言う。

 NRIおよびNRIデータサービスでは、一連の結果や蓄積したノウハウを反映させて、事前調査を行う「ワイヤレス基盤診断」、測定結果に基づき最適なアクセスポイント設置場所を提案する「環境アセスメント」、導入作業を支援する「セキュアワイヤレス構築」「スーパーインテグレート」および導入後の監視、サポートを行う「ワイヤレスメンテナンス」といったサービス群を提供し、無線LANの設計から導入、運用までを支援していく。

 また、8月から9月をめどに、実験結果を織り込んだROI(投資効果)測定ツールの提供を開始する計画だ。高橋氏は、「こうしたツールによって、無線LANが生産性向上につながる仕組みであることを、IT部門担当者だけでなく、企業の経営層にもアピールできるようになる」と述べている。

 なお、成果発表の席ではあまり語られなかったが、無線LANの普及に当たっては機器間、サービス間の相互接続性も課題の1つとして浮上してくると思われる。

 事実NRIらの実証実験では、シスコシステムズとメルコの機器を用いたが、異なるメーカーのアクセスポイントとクライアント(カード)の接続では、当たり前といえば当たり前だがCisco-LEAPを停止する必要があった。またNTTコミュニケーションズの「HotSpot」やYahoo! BB Mobile、BizPortalといった公衆無線LANサービスからの接続も試みたが、ローミングが困難な上、各サービスの設定方法が煩雑であり、使い勝手が悪いことも指摘されている。

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関連リンク
▼野村総合研究所
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[高橋睦美,ITmedia]