エンタープライズ:ニュース 2003/08/04 19:41:00 更新


企業無線LAN市場の形成を阻むセキュリティ標準の不在

企業においてはセキュリティポリシーと同様、ワイヤレスLANのポリシーも必要だ。ベンダーの標準争いの陰で導入が進まない企業内無線LANセキュリティだが、企業は自己防衛の必要に迫られている。(IDG)

 相互運用可能なセキュリティが存在せず、標準の合意が得られない状態では、エンタープライズ規模での無線LANソリューション市場は死に体である。導入の可能性のある顧客は、プロプライエタリな無線標準にしり込みをしている状態だとMeta Groupの業界アナリストは論じている。

 Meta Groupの上級調査アナリストでインフラストラクチャ戦略を担当するブジャーン・ミュンシュ氏はComputerworld誌に対し、Cisco SystemsとMicrosoftが自社のプロプライアエタリな規格を推進し続ければ、採用には動かないだろうと述べた。

 「Ciscoのような大規模メーカーは企業市場に向けた完全なセキュア無線ソリューションを推進している。それは正しいものだが、プロプライエタリなソリューションを基にしているため、企業向け市場をCiscoのソリューションに限定してしまう」とミュンシュ氏。

 CiscoやMicrosoftなどは、VPNを超えるエンタープライズレベルのセキュリティを実装するのに必要な認証プロトコルの構築に関して合意していない。企業は大規模な導入は避け続けるだろうと同氏は予想する。

 「多くの企業がWi-Fiに取り組んでいるが、Wi-Fiセキュリティ認証に取り組みたいというところはどこもない。だから、VPNソリューションに流れるのだ。ただしVPNはスケーラブルなものではない。高く付くうえに管理が困難だ」とミュンシュ氏。デスクトップでの支配力を活用し、Microsoftが認証をめぐる競争に勝利する可能性は考えられると同氏は付け加えた。

 「当社の顧客は今後の行方を見守っており、ベンダーのビジネスは不首尾に終わっている。それも、大敗だ。ベンダーは自社のプロプライエタリな技術を保護するような短期的戦略よりも、長期的な視野に立って合意したほうが成功を収める可能性が高い」と同氏。

 企業としての導入が遅れ、ユーザーがどんどん無線機器をオフィスに持ち込んでくると、セキュリティホールが次々と開けられてしまう。既に、ユーザーの希望と企業の考えの衝突は必至だとミュンシュ氏は主張する。

 「無線LANのアクセスポイントを購入して自宅にインストールし、会社のラップトップも無線LAN機能を追加する。次にはそのマシンを会社に持っていってオフィスにアクセスポイントをインストールする。このように企業市場では多数の無法アクセスポイントが増えているのだ」と同氏。

 Meta Groupは、企業は即座に自社のセキュリティポリシーと合致した無線LANのポリシーを設定し、ユーザーが無線中毒になる前にそれを強制するべきだと助言している。オフィスが無認可のアクセスポイントだらけになってしまった顧客よりも深刻な自体に陥ることもあるとミュンシュ氏は指摘する。

 「ある日、無線LANは存在しないと主張している企業を訪問して探知を始めると、いくつかは見つかる。実際のところ、オフィスはWi-Fi搭載のラップトップであふれているのだ。Centrinoがマザーボードに搭載されていれば、それを取り外すことはできない。PDAもWi-Fi搭載になろうとしている。適切な運用ポリシーなしに対処していくことはできない」と同氏。

 「セキュリティのリスクは非常に現実的なもので、企業が先延ばしにすればするほど是正が困難になる」とミュンシュ氏は述べる。

関連記事
▼無線LAN導入のハードルは「セキュリティ」「効率的な管理」「ROI測定」そして……
▼802.1x、どのEAP認証メソッドを選ぶ? iLabsのお勧めは……
▼Opinion:WLANのセキュリティに向かう2つの道
▼Windows XP、WPAに対応――無線LANのセキュリティ強化で一歩前進
▼「危険な無線LAN」と「安全な無線LAN」の境目
▼無線LAN環境のセキュリティ

[Julian Bajkowski,IDG News Service]

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.