エンタープライズ:インタビュー 2003/08/19 19:18:00 更新


Interview:「市場の拡大こそ重要」と日本オラクルの新宅社長、Oracle 10gが起爆剤? (2/2)

ZDNet しかし、IBMもパートナー戦略を打ち出し、よりマスの市場を狙ってきています。

新宅 彼らのチャネル戦略は失敗したと考えています。パートナーらから「DB2でこれだけ売った」という話を聞いたことがありません。Solaris版やHP-UX版も確かにありますが、WebShpereに比べれば、さほど成果は上がっていないでしょう。

 IBMとの競合はマスではなく、むしろ、顧客単位のものです。つまり、われわれには主要400社の企業があり、彼らの中にはDB2を使っているところもあります。個々の企業内でのシェアを争うことになります。

 しかし、改めて言いますが、シェアも大切ですが、市場を成長させることの方がもっと大切です。かつては、SybaseやInformixだけでなく、オブジェクト指向データベースなど、さまざまな個性溢れる製品があり、市場に活気がありました。そうしたベンダーが減ったことで、オラクルがシェアを伸ばしたのかもしれません。

ベールを脱ぐOracle 10g

ZDNet 「Oracle 10g」がいよいよ9月のOracleWorldカンファレンスで発表されますが、この新製品は全く新しい革新性を持ったものになるのでしょうか? あるいは、Oracle9iの延長線上にあるものなのでしょうか?

新宅 オラクルには多くの顧客がいます。アップグレーダビリティがなければ、新製品発表の意味はありません。これは大前提です。

 そのうえで、これまでOracleが得意としてきたのは、分散環境が企業に受け入れられ始めた時代には優れた分散処理機能であり、インターネットコンピューティングの時代にはサーバの集中化が可能な優れたスケーラビリティでした。

 こうしたOracleの機能を使えば、グローバルで異種混在したシステムを容易に構築できるのですが、それらを一元的に管理する技術はメインフレーム環境と比較して未熟だというのは否定できません。われわれも、24時間365日連続稼動させながら、一元的に運用管理できるメインフレームの領域を目指す必要があります。

ZDNet それが既に報道されているグリッド機能の搭載ですか?

新宅 グリッドコンピューティングは、IBM、Hewlett-Packard、Sunといった主要ITベンダーがその構想を打ち出しており、われわれもITリソースの最大活用という観点からその機能を組み込んでいきます。

 われわれのグリッド機能は、Oracle9i RACの機能を拡張したもので、グローバルなネットワーク上に複数のアプリケーションで共有することができるデータベースキャパシティのプールを構築するものです。UNIX、Windows、Linuxといった異種の環境を超えて仮想化することも目標にしています。

 こうすることによって、さらにスケーラビリティと可用性を容易に高められると同時に、柔軟で一元的な管理が実現できます。負荷の急増に対処するために、同じデータセンター内にある他社向けのリソースを一時的に割り振ってもらうこともできるようになるでしょう。

ZDNet 米Oracleでは「グローバルシングルインスタンス」(一カ所に集約されたアプリケーションとデータ)という言葉を使い、Oracle9i RACによってシステムを統合し、それによって管理コストを削減できるというメッセージを伝えてきました。Oracle 10gは軌道修正を意味するのでしょうか?

新宅 いいえ、Oracle 10gはその延長線上にあると考えてください。物理的に一カ所に集約されなくとも、企業から見ればデータは一つです。ローカルでも機動的にインスタンスを生み出せるようになり、従来であればインスタンスごとに必要だった管理も中央から一元的に、しかも異種の環境を超えて管理できるようになるでしょう。

 大企業ともなれば、各地域に人事担当者もいれば、購買担当者もいます。もちろん、IT担当者もそうです。IT部門にとっては、彼らを中央に集約し、例えば500人でやってきた運用管理を200人でまかなえるようになれば、新しい革新的な技術に投資できるようになります。そうすることで、閉塞感のあるIT市場が再び活気を取り戻せるのではないでしょうか。

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関連リンク
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[聞き手:浅井英二,ITmedia]