エンタープライズ:インタビュー 2003/09/01 10:15:00 更新


Interview:「ソリューション志向への移行」を陣頭指揮するMSのローディング新社長 (1/2)

マイクロソフトの新社長人事に業界は少なからず驚いたが、ローディング氏は、ユニシスやレドモンド本社でエンタープライズ分野の経験を積んでいる。東京勤務も2年半に及び、就任直後から新生マイクロソフトの陣頭に立つ。

 阿多親市氏のマイクロソフトK.K.社長退任が少なからず業界を驚かせた。そして、それにも増して業界を驚かせたのは「米国人社長」が乗り込んできたことだ。この国際化の時代にあって、ましてや多国籍企業のマイクロソフトだ。何ら不思議はないのだが、「マイクロソフトよ、おまえもか」の感は否めなかった。

 しかし、後任のマイケル・ローディング氏は、かつてのスティーブ・バルマー氏(現CEO)と同様、アジア太平洋地域担当副社長として東京で働き、今年2月からは日本担当副社長として日本市場における同社のビジネスを統括してきた。ユニシスでキャリアをスタートさせ、エンタープライズ分野での経験も豊富なローディング氏に話を聞いた。

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東京勤務も既に2年半に及ぶローディング新社長(39歳)。大学では政治学とドイツ語を学んだという


ZDNet マイクロソフトでローディングさんがこれまで担ってきた仕事について教えてください。

ローディング ユニシスにおける金融インダストリーマーケティングの経験を買われ、1993年にマイクロソフトに入社したのですが、もう10年になりますね。そんなに経ったのかと信じられないです。

 レドモンドの本社でエンタープライズ分野のマーケティングや事業開発を5年間担当したあと、大学で学んだ語学を生かして海外事業をやってみたいと希望したところ、スピードのある企業らしく、翌週には北京に行け、と言われました(笑い)。

 1998年から担当した中国は劇的な急成長を遂げている地域ですが、幾つか課題もありました。

ZDNet 海賊行為やLinuxの脅威ですか?

ローディング 中央集権的な社会主義経済から市場経済への過渡期にあって、すべてのセクターで国営企業が力を持っていて、収益をベースとした経営がまだまだ徹底されていませんでした。海外から参入している企業にとってはビジネスがやりにくく、そうした体験談は日本企業からも聞かれていると思います。

 Linuxについては、多少の違いはあるものの、ほかの地域とそれほど変わりません。市場で受け入れられつつあり、われわれの製品と競合する技術です。しっかりと理解し、対処していかなければならないと考えています。

ZDNet そのあと、東京ですか?

ローディング はい、中国を3年間担当したあと、私はアジア太平洋地域を統括することになり、2001年から東京に来ました。その後、マイクロソフトは2003年2月、アジア太平洋地域では最も大きな市場である日本と潜在力の最も大きな市場である中国、そしてそのほかの地域にフォーカスを拡大し、日本市場を担当するようになりました。

ZDNet 本格的な32ビットOSとしてWindows 3.0が登場してから十数年経ちました。その間、企業のコンピューティングスタイルはクライアント/サーバ、Web、そしてXML/Webサービスへと大きく変わろうとしています。マイクロソフトが果たした、そして今後果たす役割について教えてください。

ローディング 技術的なポイントはおっしゃるとおりです。マイクロソフトは常にそうした開発モデルの進化と共に歩み、ワープロ/表計算のアプリケーションや開発ツールといったところからスタートし、ネットワークOS分野や部門向けのアプリケーションに参入しました。そして今やわれわれは、統合化された強力な企業向けインフラとして「Windows Server System」を持つに至りました。これは、Windows Server上にオペレーショナルインフラ、アプリケーションインフラ、そしてインフォメーションワーカーインフラとして、System Management Server、SQL Server、Exchange Serverといったミドルウェア群を緊密に統合したものです。

 もちろん、われわれはセールスとサポートのインフラも常に変化に対応できるよう体制を整えてきました。マイクロソフトK.K.では現在、400人の営業部隊が大手企業700社とその関連会社を合わせた約2万社を直接担当していますし、業種別のソリューション本部(金融、流通、製造、公共、および通信)を置き、顧客にわれわれの価値を提案できるようにしています。サポートについても500〜600人の陣容で企業顧客を支援しています。

顧客とも直接コミュニケーションを

ZDNet もとよりマイクロソフトが間接販売モデルだというのは承知しています。パートナーシップについてもお話しください。

ローディング はい。マイクロソフトはOS、開発ツール、ミドルウェア群を提供しており、さまざまなパートナーがソリューションとしてさらに価値を高めて顧客に届けるというパートナーモデルは一貫しています。

 技術革新の観点からすれば、われわれの使命は、インフォメーションワーカーがさらに生産性を高められるアプリケーションを開発したり、ITプロフェッショナルがより少ない投資で基幹業務に耐え得るITインフラを構築できるようにすることです。また、XML Webサービスを具現化し、顧客らに対して新しいビジネスモデルや事業機会を提供していくことでもあります。

 間接販売のモデルを一貫して採用しているため、われわれのソフトウェアはプロジェクトマネジメントを担当するシステムインテグレーターなどから購入してもらっています。われわれがプライムコントラクター(元請業者)になるわけではありません。つまり、エコシステムの中で生きているのです。

 しかし、顧客と営業部隊との関係という観点からすれば、主要な大手企業らとは直接コミュニケーションしたいと考えていますし、それが顧客の望んでいることでもあるのです。

ZDNet 日本でのビジネスは、欧米と比べて違いがありますか?

ローディング それについてはあなたの方が詳しいのではないでしょうか。元請業者が顧客との包括的な関係を築いていますし、まだまだカスタム開発に依存しています。また、企業内のIT組織もその構造が進化したものとはいえず、分権的なモデルとなっています。CIOの役割も欧米のそれとは異なっています。

 しかし、企業を取り巻く環境が劇的に変化する中、日本の企業や組織も変化を余儀なくされ、こうした現象も変わりつつあります。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]