エンタープライズ:インタビュー 2003/09/01 10:15:00 更新


Interview:「ソリューション志向への移行」を陣頭指揮するMSのローディング新社長 (2/2)

ZDNet かつてビル・ゲイツ会長がエコシステムといった場合、IHVやISVとのパートナーシップを主に意味していたと思いますが、製品ではなくソリューションを求めている企業に接する場合には、コンサルティングやシステムインテグレーターとのパートナーシップがこれまで以上に重要になると思います。彼らとの関係をどのように構築していくのでしょうか。

ローディング われわれは、ソフトウェアを組み合わせ、脈絡のあるソリューションとしてアピールするようにしています。かつて「管理」と言った場合、System Management Serverといった製品やWindowsに組み込まれた管理機能のことを指していたと思いますが、今では管理と言えば、特定のシナリオのことを指します。例えば、「デスクトップの管理」であったり、「ネットワークの管理」であったりします。

 一方、ソリューションプロバイダーというのは、彼らが付加価値を付けて最終的なソリューションとして顧客に提供するわけですが、通常、そこにはたくさんのプレーヤーが関わってきます。顧客の問題を解決するためには、ジェネラリストとスペシャリストを組み合わせ、さらに開発フェーズではオフショア開発のソリューションが求められるかもしれません。

 例えば、EAIプロジェクトの場合、既存システムに関する顧客の知識が必要であり、ソフトウェアの会社やサービスを提供する会社が協力し、そしてオフショア開発のパートナーの応援も仰ぐことになるでしょう。

 このように、エコシステムはたいへん複雑なのですが、われわれのソリューションを選択してもらえるように、その価値をアピールしていきます。

基幹業務の領域にもチャレンジ

ZDNet 先ほどの話にもありましたが、日本市場では、国産コンピュータメーカーが元請業者として顧客企業と包括的な関係を築いていることが多いですね。彼らにもさまざまなミドルウェア製品群があり、それを押し退けてマイクロソフトのソリューションを選択してもらうのはそんなに簡単なことではないと思います。

ローディング 業種や製品、あるいは技術によって違いますが、メッセージングやコラボレーションのExchange Serverは、日立、富士通、NECといったパートナーらによる導入実績がたくさんあります。顧客らの認知度も高いと思います。

 一方、われわれのポータルの技術は、発展途上にあります。業種ごとに専門的な技術やノウハウを持つパートナーとショーケースとなる導入事例をつくり、ソリューションとして提案していく必要があります。

 そして最もチャレンジなのは、やはり企業の基幹業務の領域です。日本では欧米よりもメインフレームへの依存度が高く、UNIXプラットフォームもたくさん使われていますが、業界標準のアーキテクチャでこれらをリプレースする先進的な企業顧客も現れています。

 例えば、旧日本長期信用銀行から生まれ変わった新生銀行です。彼らは、メインフレームをすべて捨て、IAサーバとWindowsのシステムに切り替えています。運用にかかるコストを80%削減したほか、新規参入したリテール事業においても新しいサービスの追加に柔軟に対応できています。

 レガシーシステムが複雑で、それらとの相互運用性が必要な企業や保守的な企業などがありますが、彼らにもコスト節約というプレッシャーが強まっています。64ビットのIAサーバとWindowsが叩き出すベンチマーク性能は、今やトップ争いを演じていますし、Webサービスを介して新しい事業機会も提供されるはずです。こうしたことがIAサーバや.NETプラットフォームに配備される新しいアプリケーションの開発を加速していくことでしょう。

ZDNet 昨年8月のベンダーイメージ調査(ガートナー調べ)でマイクロソフトは、「公正・誠実なビジネスを展開しているベンダーとは思われていないけれども、長く付き合いたい、あるいは長く付き合わざるを得ないと思われているベンダー」という傾向が出ています。信頼し得るベンダーになるためには、どのようなことが必要だと思いますか。

ローディング 時期的には、新しいライセンスプログラム「ソフトウェアアシュアランス」を企業顧客らに押し付けたことが影響していると思います。その後、われわれは顧客からいろいろなことを学び、現在ではソフトウェアアシュアランスにさまざま特典を追加していて、多くの顧客から評価されています。

 また、われわれは、単なる技術や製品のベンダーから顧客満足度を強く意識するベンダーへと移行する過渡期にあります。既にエンタープライズ事業を担当するチームの評価は、顧客満足度や、成功裏に導入できたか、といった戦略的な尺度を重視するよう切り替えています。

 そして、コンピューティングが遍在化するにつれ、それに対する期待も高まり、業界の責任も重くなっています。われわれは2002年初め、「Trustworthy Computing」(信頼できるコンピューティング)構想を掲げ、こうした問題に取り組んでいます。セキュリティを高め、個人のプライバシーを守る技術を前進させ、そうした機能を盛り込んだ製品を提供していきます。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]