エンタープライズ:ニュース 2003/09/10 03:37:00 更新


Oracle 10gのベータユーザーは管理の自動化を評価、不満の声は上がらず

OracleWorld 2003で、Oracle 10gが発表された。10gの早期導入ユーザーはグリッドコンピューティングというキーワードで語られる10gについて何を感じているのか。

 サンフランシスコで9月7日に開幕した「OracleWorld 2003」で、米Oracleは3年ぶりのメジャーアップグレードとして「Oracle 10g」を発表した。初日のプレス向けセッションでは、10gの早期導入ユーザーが登壇し、それぞれの立場から、新プラットフォームのベータ版について話している。グリッドコンピューティングというキーワードで語られる10gについて、ベータユーザーは何を感じているのか。

 その前に、用語としてのグリッドコンピューティングについて少し考えてみる。従来グリッドコンピューティングと言う場合、世界の広範囲に散在するコンピュータの余剰能力を仮想化することで有効に活用して、スーパーコンピュータとしての機能を低コストで実現するといったニュアンスがあった。どちらかと言えば科学技術分野などが中心となっており、商用コンピューティングの領域で語られることはなかった。

 例えば、これまでのグリッドコンピューティングで有名だったのは、米カリフォルニア大学バークレー校宇宙科学研究所が行っている宇宙人探しプロジェクト「SETI@home」(The Serach for extraterrestrial Intelligence at HOME)のPCグリッド。これは、電波望遠鏡で受信したデータから、宇宙人の営みを感じさせる有意信号を検出しようというもの。9月9日現在でプロジェクトに参画しているPCは465万7569台となっており、世界に点在するCPUの余剰能力が宇宙探しに利用されている。

 Oracleが打ち出すグリッドコンピューティングも技術的にはこれに沿っているが、不特定多数のコンピュータではなく、企業が管理下に持つサーバやストレージを仮想化する点で異なる。コンピューティングパワーをプールして利用することで、例えば「年に2回来るピークに対応するためだけに、普段は使わないのにサーバマシンをたくさん所有している」といったユーザーのIT投資効率の悪さへの悩みを解決することが、テーマの1つになっている。

 同社は、これまでの評価も高い「Oracle9i Application Clusters」(RAC)をベースに、統計データの収集を自動化する機能や、インスタンスチューニング、メモリチューニングなど管理性を強化し、エンタープライズグリッドとして今回「Oracle 10g」をリリースした。

Flashback機能による作業効率アップ

 ベータカスタマーセッションに参加した米QualcomのIT担当マネジャー、アービン・ギドワニ氏は「6カ月前にOracleから話を受けたときは“10i”だった。機能としては、Flashback Database機能やAutomatic Storage Managementに興味を持った」と話す。

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「10gがリリースされる前にソースコードの提供を受けられるのは“おもしろい”と思った」と話す米qualcomのアービン・ギドワニ氏

 Flashback Databaseは、リカバリーのための作業を行うことなく、データをある時期のものへと戻すことができる機能。同氏によれば、これによりデータベースの監視や管理に取られる時間が減るため、IT部門としてビジネスプロセスの改善などの業務に時間を振り分けることができるようになるという。

パーティショニングの自動化

 一方、ニューメキシコ州運輸省のジェレミー・フォーマン氏は、「9i以前はパーティショニングが自動化されていなかったが、10gで実現したことで、別の仕事に専念できた」と話す。

 運輸省では、トラックなどの500万枚に上る画像をOracleのデータベース上の150〜200に分かれるディレクトリで管理している。これらの画像を検索して、どれだけ早く取り出すかが日々のビジネス効率を左右するため、パーティショニングは慎重に行っており、これが10gの登場で自動化されたことで作業が楽になったとしている。

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ジェレミー・フォーマン氏。「ニューメキシコ州運輸省として連邦政府への報告義務がある」と話す。

異種プラットフォームの混在環境

 また、米Proligenceのアルプ・ナンダ氏には10gの改善余地について尋ねたが、「価格が安く設定されてくれればいい」と話すに留まった。強いインド訛りの英語で10gの機能性の高さを興奮して話す同氏からは、技術的な不満について聞くことはできなかった。

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「10gの機能を高く評価している」と話すナンダ氏

 同氏が特に強調したのは、10gにおいて、UnixやWindows、Linuxなどの異種プラットフォームに存在するコンピューティングリソースを仮想化して利用する場合にも、あまり手間がかからないことだ。

 Oracleによると、Oracle9i RACを異種混合環境で利用する場合は、各プラットフォームにおいてクラスタ構築の詳細な技術知識が必要だったという。最新版となる「Oracle Real Application Clusters 10g」では、必要なすべてのクラスタリング・ソフトウェアが含まれているため、同製品がサポートするプラットフォームならば、クラスタの設定と稼動を効率的に行うことができるとしている。

 なお、10gの価格についてはまだ発表されていない。

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▼OracleWorld 2003 San Francisco Report

[怒賀新也,ITmedia]