エンタープライズ:ニュース | 2003/09/11 20:43:00 更新 |
「交渉すべきものなどない」トーバルズ氏がSCO CEOの申し出を一蹴
Linuxの創始者、リーナス・トーバルズがSCOのマクブライドCEOが公開書簡で提案した「甘い罠」を一蹴した。(IDG)
The SCO GroupとLinuxコミュニティーとで争われている世界大戦は、今週新たな局面に入った。SCOのトップとオープンソースコミュニティーの重鎮が公開書簡を出し合ったが、それにLinuxの創始者であるリーナス・トーバルズ氏が参戦したのだ。
SCOの最高経営責任者であるダール・マクブライド氏が提示した、オープンソースコミュニティーと問題について交渉しようとの申し出について、9月9日付の公開書簡の中でLinuxカーネルの管理者であるトーバルズ氏は一蹴した。「交渉すべきものは何もありません。SCOはオープンソースの領域において知的所有権を侵害しているとしているものをまだ何も見せてはいません」とトーバルズ氏は書いている。
トーバルズ氏はSCOについて皮肉を述べている。SCOはLinuxビジネスモデルに基づいてIPOを行って資金を得ていたのに、と。「資産のすべてをむだ遣いしてしまい、しかも米国の法律制度を使って宝くじをやろうという会社から、ビジネスモデルについての助言をしてあげたいという申し出を受けても、残念ながらお断りしなければなりません」と同氏。
SCOの前身はCaldera Systemsで、そのときにはLinuxディストリビューターであった。しかし、昨年オープンソースコミュニティが落ち込むに従って反Linuxの論調が増していった。3月に同社はIBMが違法にUNIXコードをLinuxに転用したとしてIBMを提訴した。それ以降、SCOはLinuxには数多くの著作権および知的所有権侵害が存在し、Linuxのユーザーに対し、自分たちのシステムを合法的に使うためには1プロセッサ当たり700ドルを支払うように要求した。
この動きに対し、Red HatとIBMは反訴し、SCOのWebサイトに対して多数のDoS攻撃が仕掛けられた。
マクブライド氏は9日、オープンソースコミュニティーに対し、SCOに対するDoS攻撃のような犯罪の取り締まりに協力することを求め、「本流社会のルールと手続きに従わなければならない」と主張。マクブライド氏とSCOは「すべてのコントリビューターのために、オープンソースコミュニティーとともにソフトウェア技術とその根幹にある知的所有権を貨幣化する作業を行ってもいい」と提案した。
マクブライド氏の公開書簡の公開直後、オープンソースの主導者であるエリック・レイモンド氏とブルース・ペレンス氏によるSCO批判文が公開され、その中でマクブライド氏の主張は「間違いの寄せ集め、真実半分、言い逃れ、中傷、虚偽の陳述」であると述べている。
レイモンド氏はインタビューの中でマクブライド氏の交渉提案を却下した。「この書簡に真摯な提案は何一つないと考えます。そう見せかけているだけです」と同氏。レイモンド氏は、侵害しているとされるLinuxのコードを特定し、主張の裏付けをするように求めたトーバルズ氏の主張を繰り返した。「問題を示してください。そしたらそこを修正しますから」とレイモンド氏は述べた。
SCOはコードを見せると提案しているが、それは機密保持契約(NDA)を交わすのが条件で、ローバルズ氏やレイモンド氏のようなオープンソースデベロッパーは契約にサインしない。この契約はオープンソースの原則に反しており、オープンソースコードを書く能力を制限してしまうからだという。「私たちはNDAを結んだ人とはともに作業をすることはできません。なぜならその人は将来、Linuxカーネルの作業をするかもしれないからです。それに、一般的に言って、NDAにサインするというのは私たちの価値に反するのです」とレイモンド氏。
ペレンズ/レイモンド氏の公開書簡はここで見ることができる。
トーバルズ氏の公開書簡は次のとおり:
2003年9月9日
ダール・マクブライド氏への公開書簡――大人になってね
親愛なるダール、
お手紙をいただき、どうもありがとう。
オープンソースが合法で安定したものであるという確証を顧客は得る必要がある、という考えにあなたが賛成してくれたことについてはうれしく思っています。そしてあなたからの手紙のその部分に関しては心から賛同します。ほかの部分は意味をなしていないようですが、対話が生まれるのは気持ちがいいものです。
しかし、(ちょっぴり皮肉なことに、Linuxビジネスモデルに基づいてIPOを行って資金を得ていたのにもかかわらず、その)資金のすべてをむだ遣いしてしまい、しかも米国の法律制度を使って宝くじをやろうという会社から、ビジネスモデルについての助言をしてあげたいという申し出を受けても、残念ながらお断りしなければなりません。私たちオープンソースグループは引き続き、顧客の関心と需要を動かす方法としてのテクノロジーを信じていきます。
また、あなたが交渉のテーブルにつくということに言及したのは納得がいきません。なぜなら、交渉するべきものなど何もないと思えるからです。SCOはオープンソースの領域において知的所有権に侵害しているとしているものをまだ何も見せてはいません。それでも、あなたがべらべらしゃべっている戯れ言を本気でこちらに伝えてくれるのを、私たちは息を殺して待っているのです。
私たちのソースコードはすべて公開されているので、あなたが問題があるという特定の部分を指摘するのは歓迎します。
それまで待っています。あなたの提案についてはありがたく受け取りました。
心を込めて
リーナス・トーバルズ
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[Robert McMillan,IDG News Service]
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