エンタープライズ:ニュース 2003/09/17 17:09:00 更新


基調講演:Sun Java Systemでソフトウェア産業のリセットを仕掛けるシュワルツ氏

Sunの新しい顔として期待がかかるシュワルツ執行副社長が、マクニーリーCEOと並んで、SunNetwork 2003のオープニング基調講演を務めた。ソフトウェア産業のリセットを狙うSun Java Systemは彼のプロジェクトだ。

 SunNetwork 2003カンファレンスのオープニング基調講演をスコット・マクニーリーCEOと並んで務めたのは、昨年と同様、ジョナサン・シュワルツ執行副社長だった。同氏は、マッキンゼーのコンサルタントとしてキャリアをスタートさせ、現在は同社のソフトウェア事業を統括する。ちょうど1週間前に退社が明らかにされたSunの共同設立者であり、UNIX界のカリスマ、ビル・ジョイ氏とは比べるべくもないが、弱冠36才の彼にはSunの新しい顔として期待がかかる。

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この1年、OrionやMad Hatterのプロジェクトを推進してきたシュワルツ氏


 マクニーリー氏やジョイ氏らによって20年前に創設されたSunは、その当初から「The Network Is The Computer」というビジョンを掲げ、TCP/IPをビルトインした最初のマシン、Sun-1を世に問うた。単にワークステーションメーカーでなければ、サーバメーカーでもなく、もちろんJavaの会社でもない。政府や企業、あるいはサービスプロバイダーらがネットワークコンピューティングを実現する際の複雑な問題を解決するのがSunのミッションだ。

 例えば、ある病院がレントゲンやCTスキャンのイメージデータをスタンドアロンのシステムで管理していたとする。しだいにLANを構築して、病院内でデータを共有できるようにしたり、地域のシェアードネットワークサービスを介して病院間で共有できるようにしていく。

 「これは自然の進化だが、問題は、悪夢のようなインテグレーション、混乱する価格、そして悪夢のようなライセンス条項だ」とシュワルツ氏。

 こうした顧客企業らが直面している問題に対処すべく、SunはSunNetworkカンファレンスで「Sun Java System」を正式デビューさせた。これは、これまで「Orion」として知られてきたSun ONEサーバソフトウェア群を統合化し、Solaris OSと同じ四半期ごとにリリースしていくという意欲的なプロジェクトが、200を超える同社ソフトウェア製品全体に拡大されたものだと考えればいい。旧Sun ONEサーバソフトウェアからなる「Sun Java Enterprise System」は、やはり中核的な存在で、これが1枚のDVD-ROMに収められ、ライセンス条項もわずか3ページに過ぎないというから驚く。

 「簡素化は品質を高め、それによってセキュリティも高まる」とジョナサン氏。

 価格も従業員当たり年間100ドルという明快かつ低コストに設定され、「従業員数に100を掛けるだけ。私でも暗算できる」(ジョナサン氏)。しかも、Java Enterprise Systemの導入企業が彼らの顧客にサービスをデプロイしても追加の課金は一切ないという。

 ジョナサン氏は、企業が成長するにつれてソフトウェアライセンス料金が跳ね上がるIBMやMicrosoftを例を挙げ、「Sunは成長に対するペナルティを支払えとは言わない」とする。

 Java Enterprise Systemは、年内に登場する。

Windowsの安全な代替案

 もう一方の主役は、Windowsに代わるセキュアなデスクトップ環境、Java Desktop Systemだ。昨年のSunNetworkカンファレンスでベールを脱ぎ、「Project Mad Hatter」というコードネームで知られていたものだ。出荷のタイミングは遅れたものの、第4四半期に登場する。

 Microsoft Office互換性のStarOffice 7を搭載しながらデスクトップ1台当たり100ドルという低価格もさることながら、3億枚を出荷しているJavaCardと組み合わせ、本人認証を確実に行うことができるのが最大の魅力だ。

 「JavaCardで本人認証を徹底して行えば、ジャンクメールもウイルスも消えていくかもしれない」とジョナサン氏。

 また、IBMによるUNIXの知的所有権侵害を受け、SCOが提訴した知的所有権問題は泥沼化している。SCOが特に問題視しているのはハイエンドのサーバだが、LinuxをベースとするJava Desktop Systemも同じ不安を抱える。ジョナサン氏は、Sunが製品に関してきちんとした責任を持つ証として、Java Desktop Systemを導入する顧客企業には、免責保証が提供されるとした。

 「これはベンダーに対するリトマス試験紙だ。われわれは製品に対してきちんとした責任を持つ」(ジョナサン氏)

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[浅井英二,ITmedia]