エンタープライズ:ニュース 2003/09/19 01:00:00 更新


基調講演:N1はSunNetwork 2003でアップデートなし、プロビジョニングを強調

データセンターの未来を提案するSunのプロジェクト「N1」。SunNetwork 2003ではこれまでの歩みを振り返り、事例を交えた紹介が行われた。

 現在のインターネットには、かつてのサービス単体の提供とは異なり、より複雑化されたアプリケーションサーバによる連携された稼働形態がある。システム管理者はこのような状況に対応し、連携する個々のサービスを完璧に把握しなければならない。ユーザー数増加はこれに拍車を掛けていく。

 Sunにおけるデータセンターとは、企業における情報システム部門のこと。Orion(Java Enterprise Syetem)がユーザー層のユーティリティーコンピューティング追求であれば、N1はそのサービス自体を司る機器運用を支援するサービスだ。

 「SunNetwork 2003カンファレンス」2日目(米国時間17日)に行われた基調講演では、サーバ新製品紹介に続き「N1」についてが語られた。マーク・トリバー氏から壇上に招かれた米Sun Microsystems、N1&アバイラビリティプロダクツのデイビット・ネルソンギャル氏は、登場から1年半を迎える「N1」が歩んだ道、そして今後の進むべき道を確認する。今回の講演ではほかのプロダクトのように新たな発表はなく、これまでを確認する形となった。直近となるN1最新のトピックは、2003年春に発表されたセンターラン買収による「プロビジョニング」、そしてサービスの「バーチャル化」実現だ。

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デイビット・ネルソンギャル氏


 ネルソンギャル氏は「昨今のデータセンターはいっそう処理が複雑化する傾向にある」と語り、それはアプリケーションサーバが稼働する環境であれば顕著であり、ユーザー数やサービス数の増加の背景には、人為的ミスによるダウンタイムが許されないことを強調する。N1でSunが達成すべきポイントとして「シンプル」、「活用率の追求」、「オープン化」が課題とされている。さらに最も重要な点は、信頼性だという。「テクノロジーの実現だけでなく、信頼性がとても重要だ」とネルソンギャル氏。

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事例デモではBEA WebLogic Server、Oracle DB、などがインストールされる環境で、サービス自体をコーディネイトし、目的とするサーバを選択し稼働させるまでを容易なマウス操作で見せた


 N1最新のトピックの1つ、サービスのバーチャル化実現としては、ネットワークのバーチャル化、そしてプロビジョニングを行いリソースを動的に配置するための仕組みが取り入れられた。サービスの孤立化という概念もあり、これによりセキュリティ問題からの回避実現も盛り込まれたという。

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N1のプロビジョニングサーバによって個々のサービスが自動制御される様子


 「N1は、突発的に登場したプロダクトではない。20年以上のSunのネットワーク経験を基に構築したものであり、Jiniやクラスタテクノロジーなどの概念が集約しているものだ」とネルソンギャル氏。また、サーバ台数、サービス数やユーザー数の増大に対し、N1では自動的に操作が繰り返し可能な点、それに伴い人的なミスが起こる可能性がなくなるという点に要点が置かれた。Sunにおけるカスタマ事例からは、サーバのセットアップ時間が65%削減できたという声も聞かれる。

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サーバごとにサービスの最適化を行える。稼働率を高めると共に運用の容易さを実現する


 カスタマ紹介としてシンギラーワイヤレスのディレクター、ケビン・ヘリン氏が壇上に招かれた。シンギラーワイヤレスは、N1を利用してサービスのプロジェニングを行っているベンダーの1社。

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壇上に招かれたカスタマゲスト、ケビン・ヘリン氏はシンギラーエンタープライズでインフラ構築に関わる


 「システムは中規模です。1000程度のUNIXサーバ、2500程度のWindows Server、そして300程度のビジネスアプリケーションサーバで構成されています」とヘニン氏。また、「N1を利用するいちばんの目的は、スピードアップ、タイムトゥマーケット、ユーザビリティ、コストダウンです」と語る。稼働率が上がったと共に、サービスの適所への配置が実現され、ものによっては20週間から1週間への短縮も実現したという。

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タイムトゥマーケットの観点からのチャートも示された。効率アップと共に構築期間が劇的に減ったとヘリン氏


 ネルソンギャル氏からは、N1の究極的なゴールについても語られた。N1は今後、ポリシーをベースとしたサービスレベルでの自動化を目的とするという。「インフラがどのように対応していくか、またサービスレベルに合うよう単に分担をするのではなく、サービスレベルそのものを上げていくことが重要だ」という。

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関連リンク
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▼SunNetwork 2002 Conference レポート

[木田佳克,ITmedia]