エンタープライズ:ケーススタディ | 2003/09/25 20:13:00 更新 |
IT People:CRM導入には「アメとムチ」が必要
CRMベンダーのオニックス・ソフトウェアで現在プリセールスを行っている市東氏。CRMは企業の収益に直接関わる重要なシステムであるため、個別企業向けにマッチした提案をすることがやりがいになっているという。
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過去
SAPにおいてERPパッケージの開発を手掛ける。米国およびドイツの本社にも開発者として赴任。その後、アーサー・アンダーセンに移籍し、ビジネスコンサルタントとして顧客のe-ビジネス戦略立案などをサポートした。
自称「オタク系プログラマー」として、学生時代からフリーソフトウェアの開発を行っていたという市東氏。「Linuxが出始めのころで、コミュニティに対してプログラムを提供していた」と当時を振り返る。米Drew University(ドリュー大学)出身で、専攻は統計学という。
ZDNet プログラマーの世界から、いわゆる「上流」へと移った理由は?
市東 プログラマーとしてずっとやっていくことに将来的な不安を感じたことと、上流を見てみたかったことが理由です。ただ、開発者のイメージには、例えばドイツと日本の間でもだいぶ違いがありました。日本では、要件定義までを行って、詳細設計やコーディングを素人同然の新人にやらせてしまうというケースも多い。しかし、ドイツ、特にSAPでは、開発者は半分はドクター出身で、要件定義から詳細設計、コーディングに至るまで、すべて自分でやってしまいます。「これぞプロフェッショナル」と思うことがありました。
現在
2001年にオニックス・ソフトウェア入社。顧客企業のCRMプラットフォーム立ち上げなどをサポートするプリセールスを担当している。
ZDNet 現在の仕事でやりがいのある点は?
市東 CRMは、会計などの基幹系のシステムと違い、システムのあるべき姿に模範解答はありません。むしろ、SFA(営業支援システム)は企業の収益を直接左右するコアバリューとも言えます。ほかの企業と一緒であってはいけないと言ってもいいものです。顧客の特徴を理解した上で、どんな営業システムがマッチするかを考えるのが今の仕事の面白さになっています。
ZDNet コツなどはありますか?
市東 CRMシステムは、データが入力され、蓄積されないと話になりません。そのため、いかにユーザーの日々の業務にシステムを浸透させるかが大きなテーマになっています。
ここでは、「アメとムチ」の考え方を取り入れることにしています。一般に、営業担当者は日々の仕事が忙しく、なかなか日報なども記入しないことが多い。そこで、ある製薬企業のシステムでは、日報を書かないとは経費の精算をできない仕組みをシステムとして提案しました。製薬業のMRは特に経費を多く使いますので、いやでも入力せざるを得ません。これが「ムチ」に当たります。一方で、情報システムは、営業担当者一人ひとりに対して、さまざまなデータをもとに、訪問すべき顧客の特徴や、リストを提供したりといった「アメ」が与えられるわけです。
ただ、単に、ボーナス査定と連動させるといった発想をするだけでは、社員の反発を買ったり、指揮を下げてしまうこともありますので成功しません。そこが難しいところです。
ZDNet オニックスの製品について教えてください。
市東 Onyx Enterprise CRMとして、従業員ポータル、顧客ポータル、パートナーポータルの3つの側面から製品を提供しています。特に、代理店向けの製品であるパートナーポータルは、日本市場にマッチしています。日本では製販が分離しているため、エンドユーザーの声をメーカーに戻すという仕組みがしっかりしていないケースが多い。そこで、実際に製品を販売しているパートナーとの連携を強化することで、それを補完することが可能になります。
注目の技術
「Webサービスに注目している」と話す同氏。OnyxのソフトウェアはWebサービスをサポートしており、あるイベントで市東氏は、包丁の切れ味をアピールするテレビショッピングの要領で、「3分間でOnyxと別システムをつなぎます」といったデモを行ったという。「なんでもバッチで処理するという発想はスマートではない」とし、Webサービスの疎結合モデルによるシステム連携の容易さに注目していると話している。
ITに関わっていて楽しいと思うとき
「もともと、プログラミングが好きなので、コーディングが終わってコンパイルに成功したときは楽しい」
ITに関わっていてやめたいと思うとき
「顧客に対して、2時間みっちりプレゼンテーションを行い、すべて終わった後で“ちょっと違うよねー”などと言われるとき」
最近考えていること
「営業の業務をエンジニア的アプローチで行うことを考えています。例えば、SFAをいきなり全社展開するのではなく、最初は1つの部門だけに導入することを勧めるなどの方法を取ります。その代わり、導入効果に関しては、定量的にしっかりと把握するのです。その結果顧客にとってプラスならば、全社導入を考えてもらうのです。顧客は、いくらこちらが“お願い”をしても、製品を買ってはくれないことを最近つくづく感じています。」
趣味、息抜き
「“夜遊び”です。夜の店で働く女性には、時事問題に精通するなど、感心するほどよく勉強している人がいる一方で、まったく話ができない人もいます。さまざまな人との会話をいかに盛り上げるかを考えることが、自分の仕事につながってると思うこともあります。サービス業の基本だと思っています。」
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オニックス・ソフトウェア
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]