エンタープライズ:ニュース 2003/09/29 16:55:00 更新

Windows Media 9に見るテクノロジーとビジネス
第1回 WM9が切り開くか? デジタルシネマの本格幕開け (1/2)

映画制作と配給にかかる作業をすべてデジタルフォーマットで統一するデジタルシネマ構想。Windows Media 9シリーズは、既存のフィルム映画システムの置き換えよりも、市場拡大に向けた動きを見せる。

 「楽しめる方法が増えるのはいいこと。仕事をしているとなかなか見に行けませんから」。開場30分前には100人近い人が並んだ。彼らが期待を膨らませて待つのは、WPC EXPO 2003で行われたデジタルシネマ。日本で初めてWindows Media 9を使い商業映画本編をデジタルシネマで上映する取り組みだ。アジア最大級の規模で行われたデジタル総合展「WPC EXPO 2003」最終日を彩る試みの一つとして実現した。

開場前の人の列

WPC EXPOのイベントとあって、デジタルシネマ自体に興味のある人たちも多かった


 デジタルシネマとは、撮影、編集、配給、上映など、映画制作と配給にかかる作業をすべてデジタルフォーマットで統一する構想。この構想の端を発したジョージ・ルーカス監督が1999年「スターウォーズ エピソードII/クローンの攻撃」の製作にあたり、「デジタルシネマでしか上映させない」と発言して、広く知られるようになった。

映画100年、フィルムの歴史は変わるか?

 WPC EXPOでは、インテル、NEC、マイクロソフトの3社が技術協力して実現した。フィルムで撮影された映画「シモーヌ」をWindows Media Audio/Video形式に変換。HT対応Pentium4/3.2GHzを搭載した家庭用PCからWindows Media 9シリーズ(WM9)を使って8Mbpsのビットレートでデコードし、NECビューテクノロジーの提供する720Pに対応したDLPプロジェクター「SX10000」でスクリーンに投影した。現在公開中の映画のプロモーションに、配給会社がデジタルシネマを活用した形だ。

SX10000

左が実際の上映に使われたNECVTのDLPプロジェクター「SX10000」、右はバックアップの「XT9000」


映写システム

WM9を使った今回の上映にはプロジェクターとPCという、シンプルな構成


 配給会社を中心にして映画業界がデジタルシネマ実現へ動き出す理由は明確だ。撮影から上映といった一連の流れをデジタル技術で簡素化できるため、フィルムを用いた映画公開よりもコストを削減できるからだ。

 例えば、全米で拡大ロードショーを行うには4000本のフィルムコピーを焼かなければならない。劇場用35mm映画フィルムをコピーするコストは、1本あたり2000〜3000ドルとされる。単純計算でも800万〜1200万ドルというコストを発生させることになる。日本国内の公開であれば、話題作では400本ほどのコピーが必要になってくる。さらにリールの直径は1.5m、重さ30Kg程度になるとあって、各映画館への配送コストもバカにならない。

 また、デジタル化されれば映像が劣化しにくいというメリットもある。映画フィルムは30回上映すれば、傷みなどによる劣化を起こしてしまう。限度を超えれば、当然フィルムの交換が必要となる。

 これをデジタルデータにすれば、ネットワークを介して各映画館に届けることなどが可能になり、配給にかかる大幅なコスト削減につながるのだ。ネットワークを使ってロードショームービーを配信できるようになれば、映画館にとらわれず、ビジネス機会も拡大する。映画業界がデジタル化によって描ける絵は壮大とあり、かかる期待も大きい。

WM9をデジタルシネマ用技術に

 今回の取り組みに使われたマイクロソフトの最新Windows Mediaテクノロジー、WM9は2002年9月にハリウッドでイベントを開き、大々的に発表された。米国の発表にはジェームズ・キャメロン監督を招くなど、WM9は映画界に対し熱心なアプローチを続けている。

 今年9月初めにはWM9をSMPTE(全米映画テレビジョン技術者協会)の規格候補としてコード提出する動きも見せたSMPTEは映画界に強い影響力を持っており、デジタルシネマのフォーマットを標準化する委員会(DC28)を発足させている。

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[堀 哲也,ITmedia]