エンタープライズ:ニュース 2003/10/01 10:59:00 更新


Sun Rayを掲げるサン、システムは「サーバ中心型に移行する」と予測

サン・マイクロシステムズは、Thinクライアントシステム「Sun Ray」のコンセプトとロードマップに関する説明会を開催し、サーバ中心型アーキテクチャのメリットを強調した。

 貴重なホストのリソースを複数のユーザーが共有していたあの時代が、Webベースのアプリケーションなどでリメークされた形で再びやってくるのかもしれない。

 サン・マイクロシステムズは9月30日、Thinクライアントシステム「Sun Ray」のコンセプトとロードマップに関する説明会を開催した。9月16日から18日にかけて米サンフランシスコで行われた「SunNetwork 2003」でもたびたび言及されたSun Rayについて、改めて解説するものだ。

 ここで「改めて」と表現したのには訳がある。Sun Rayは決して、最近になって登場したコンセプトではないからだ。当時盛んに使われた「NC(ネットワークコンピュータ)」という表現こそ消えたものの、Sun Rayは、同社が1990年代後半から提唱しているThinクライアントを組み合わせたアーキテクチャである。

 Sun Rayではアプリケーションの処理はもちろん、描画処理までがサーバ側で行われる。クライアントはそれを映し出し、操作するためのインタフェースに過ぎない。どのユーザーがどういったアプリケーションやデータを利用するかは、Java Cardによる認証を経て制御する。ただしプロトコルはX Terminalで用いられているものではなく、サンが独自に開発したものを利用する。

 このような「サーバ中心型」アーキテクチャからは、さまざまなメリットが派生するというのがサンの見方だ。同社プロダクトマーケティング本部長の山本恭典氏は、その具体的な項目として、セキュリティの向上、モビリティの実現、コストの削減、複雑さからの解放を挙げた。

 これらのメリットは、つまるところ「管理ポイントの最小化」に起因すると言っていいだろう。数十台、数百台というWindowsベースのPCを管理するのに比べ、Sun Rayでは1台のサーバにのみ注意を払えばいい。セキュリティ対策の基本となるアップデートやパッチ適用は容易になるし、クライアント側にデータは存在しないため、情報漏えいなどのリスクは小さくなる。Java Cardを用いたアクセス制御により、場所を移動しても一定のポリシーを適用しながら、ユーザー個別の設置や環境を再現できる。管理ポイントが少ないため、データの冗長化などを容易にしながら、運用コストを削減できる、というわけだ。このコンセプトは、システムリソースの仮想化と有効活用を支援する同社の「N1」にもつながる。

 「Sun Rayだから100%のセキュリティが確保できるわけではないが、限りなくセキュアに近いものが実現できる。ハードディスクやOSを備えたクライアントをエンドユーザーがそれぞれ管理する(マイクロソフトの)やり方は、混乱を招くだけだ」(山本氏)。山本氏はまた、今のPC管理のありようを、本来ならばきちんとした管理・監視下に置くべき原子力発電所を、住宅一軒一軒に設置するようなものだとも指摘している。

 こうしてみるといいところづくめのように見えるSun Rayだが、今のところ市場で成功を収めたとは言いがたく、国内での出荷実績は大学やコールセンターを中心に数千台にとどまっている。その理由として同社は、Office互換アプリケーションの欠如やWindowsとは異なるインタフェース、プロモーション不足といった要因を挙げた。

 しかし今ではStarSuite(StarOffice)やGNOMEが利用できるようになったほか、Web/Javaベースのアプリケーションへと移行が進むにつれ、受け入れられやすくなると同社では期待。国内では来年リリース見込みのProject Madhatterが、導入障壁をさらに下げるとしている。それらを踏まえ、現在のクライアント偏重型のシステムに代わり「2〜3年後には、サーバ中心型アーキテクチャへと移行するだろう」と山本氏は述べている。

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[高橋睦美,ITmedia]