エンタープライズ:レビュー 2003/10/01 17:00:00 更新


レビュー:SunのクライアントOS「Java Desktop System」を検証する

9月16日にSunがJavaコードをベースにしたデスクトップ環境を発表した。Javaを軽快に描画し、GNOME2で構成されるこのシステムは「効率の意味」を考えさせられる。
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 Sun Microsystemsのカンファレンス「SunNetwork 2003」で具体化されたデスクトップOS戦略。「Java Enterprise System」の一環としてラインアップされ、従来までコードネーム「Project Madhatter」として発表されていたものだ。果たしてエンタープライズ界のSunに、クライアントOSがコーディネートできるのか? ここでは、会場で配布されたベータ版を元に検証していく。

UNIX系OSにおけるデスクトップとは

 マウスが動き回るデスクトップは、そのOSの「顔」である。Windowsには標準でひとつの顔しか用意されない。その点、UNIX界のX Window System(以下、X)にはウィンドウマネージャを切り替えることでさまざまな顔が持てるシステムがある。そのメリットとデメリットは表裏一体だ。操作性に統一感がなければ、PCに無関心なユーザーは混乱する。逆にユーザーインタフェースにまったくの自由度がなければ、使い勝手が悪くても慣れるしかない。

 Windowsは前者を選択し、結果として幅広いユーザーの獲得に成功した。3.x時代から統一感をテーマとし、Windows 95を経てWindows XPまで、約10年近くも基本的なユーザインタフェースを変更していない。システム内部は時代とともに強化しても「ユーザーに見せる表の顔」は同じなのだ。多少色直しをしたXPでさえ、従来型のユーザーインタフェースを用意している。

 その点、Xはどうだろう。「twm」という化石のようなウィンドウマネージャもあれば、堅実な「Window Maker」、多機能さを誇る「Enlightenment」、斬新な斬り口を見せた「Ion」。そして、GNOMEとKDEはウィンドウマネージャの枠を超え、デスクトップの覇者を目指して突っ走っている状況だ。このためXにはウィンドウマネージャという「顔」があるものの、それぞれの操作、設定はむしろ共通するポイントが少ない。この違いを興味と捕らえるならば「選択の自由」となるが、「扱いを学ぶ」必要もあるわけだ。

Javaコードで補完するユーザビリティの真価

 Sunが送り出す「Java Desktop System」は、現在GNOME2をベースとしたものだ。実際、パネルの機能や「Nautilus」によるファイルマネージャ、設定部分のほとんどはGNOME2とほぼ同じであり、目を見張るような違いがあるわけではなかった。Sunというビッグネームに期待した筆者は肩すかしを食った。しかし、同じGNOME2をベースにするRed Hat Linux 9のデスクトップなどと比べると、いささか趣が違うことも事実だ。

画面
標準構成のデスクトップ。Javaの大きなロゴがインパクトとなっているが、アイコンを始め各所にSunの手掛ける品の良さが見られる

 第一印象を端的にいえば、GNOME/GTK特有の「やぼったさ」が薄れている。Sunのイメージカラーである淡いブルーをベースにしているのはもちろん、アイコンやボタンのデザインがブラッシュアップされ、デスクトップを彩るエフェクトもいくつか導入された。例えば、ディスプレイ電源のオン/オフにはフェードアウト/フェードインのエフェクトが見られ、それぞれのメニューにはグラデーションがつけられている。ボタン類はポイントするとハイライトされるといった具合だ。KDEのアルファブレンドを多用した華美なエフェクトに比べればずっと控えめだが、品があると感じた。デモ版にはアンチエイリアスがまだ実装されておらず、日本語化も不完全である。しかし、現在のGNOME2と同程度に日本語化、アンチエイリアスが組み込まれれば、十分な見栄えになることも想像に難くない。

デスクトップ上のアイコンはWindowsさがもはや標準に

 デスクトップ上に標準で配置されるアイコンは「This Computer」と「NetworkPlaces」、「ドキュメント」、そしてヘルプだ。これは、次期Turbolinux Desktop(コードネーム「Suzuka」)のベータ版と同じである。「This Computer」のトップビューは従来のファイルマネージャのような「/」や「/home」からのディレクトリツリーではなく、フロッピーやハードディスクなどのデバイス別に分類されている。そして各デバイスを選ぶと、デスクトップにアイコンが表示される。明らかにWindowsの「マイコンピュータ」を意識したものだ。

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「This Computer」をポップアップしたところ。まだ日本語化されていない荒削りなところもある


 同様に「Network Places」アイコンからは、利用可能な共有デバイスが表示される。Windows(Samba)があればその共有フォルダを、NFSでエクスポートされているディレクトリがあればプロトコルを意識することなく同じように一覧、アクセスすることができるのだ。また任意のネットワークプレイスのリンクを作成することも可能だ。これも「マイネットワーク」と同じ使い方を想定したものだろう。

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「Network Places」をポップアップしたところ。NFS、SMB(Samba)などとプロトコル別に参照先が分類されている


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Sambaサーバにアクセスしてフォルダ参照した状態


 GNOME環境のウィンドウマネージャには通常「Metacity」か「Sawfish」が利用されるが、Java Desktop SystemではOpenGLを利用する「JOGL」が採用され、「Looking Glass」と呼ぶウィンドウマネージャもテスト段階である(現時点でのベータ版は、プロセス名「Metacity」であり手が入れられていない)。Looking Glassについては、ここで取り上げたベータ版とは別物であるが、「Javaコードで記述したこと」に加えXサーバにも手を入れていると公表されており、Javaベースのウィンドウマネージャが動作するようにしているわけだ。それが「Java」を冠した由来になるのかもしれない。ひっかけ問題のようだが、Looking Glassやウィンドウマネージャ、それ自体がJavaで動作しているわけではない。

 今回試用したデモ版を厳しくいえば、「SuSE LinuxのGNOME2環境にとどまっている」点だ。MozillaやEvolution、StarOffice 7も付属していたが、もはやデスクトップ環境ならば特筆に値しないだろう。いくつかのJavaアプリケーション(メディアプレーヤ、jEdit、ほかのアクセサリ類)も辛うじて含まれるが、デスクトップ環境の独自性と見るには押しが弱い。

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ベータ版のためか日本語フォントがアンチエイリアスされていない


 それでもJavaの動作が既存のXに比して十二分に高速であることは間違いなさそうだ。デモ版CDではイメージを毎回メディアから読み込んでいたため正確な体感速度の評価ができなかった。それにも関わらず、jEditなどのJavaアプリケーションの動作はいちど読み込んでしまえばとてもきびきびとしていたし、Webブラウザ上でのJavaアプレットの読み込みも速かった。このためディスクにきちんとインストールさえできていたら、さらに軽快に動作しただろう。目には見えないが、Sunが手を入れたというだけのことはある。むしろ、デスクトップの作り込みは既存のGNOMEを流用し、内部にコストをかけたと評価すべきだろう。

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ディレクトリ構成を見るとSuSE Linuxベースであることが分かる


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Javaアプリケーションが幾つか用意されている


 そして見て分かる最大の特徴は「マイコンピュータ」や「マイネットワーク」に相当するデスクトップアイコンをNautilusに加えたことだ。この違いをどう評価するかは、読者がどれだけOSやシステムに詳しいか、興味があるかによって違ってくるだろう。

 PCは仕事の道具。興味も関心もなく、Windowsに慣れたユーザーに「マウント」という概念を伝えるのは至難の業だ。それよりもドライブ(デバイス)や、ほかのシステムの在りかをアイコンではっきり示した方が早いし、教わる側も「苦痛」を感じない。組織はユーザーがマウントを知っているかどうかより、業務をスムーズに遂行することが大切なはずだ。

 Sunは、SunNetwork 2003で「(まだ)プロトタイプのひとつに過ぎない」と表明している(参考記事)。それでも、筆者は二重の答えを出したようにも思う。外観や機能の違いは大きな問題ではない。企業や組織にとって必要なのは、何よりも「作業効率」なのだと。

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▼SuSE、デスクトップLinux新版リリースへ

関連リンク
▼Sun Microsystems | Java Desktop System
▼Java チャンネル
▼Linux チャンネル
▼エンタープライズ レビュー

[渡辺裕一,ITmedia]



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