エンタープライズ:ニュース 2003/10/08 23:56:00 更新


Oracle 9i RACを支えるためのストレージ管理基盤「DBE/AC」とは? (2/2)

DBE/ACの各コンポーネントレイヤ

 セッションの後半では、Oracle 9i RACに必要な技術的要素を元に、同社のソリューションの紹介が行われた。

 VERITASが提供するソリューションはハードウェアであるサーバーと、Oracle 9i RACの間に入るコンポーネントスタックとして用意されている。この具体的な製品名が「VERITAS Database Editoin/Advanced Cluster」(DBE/AC)なわけだ。DBE/ACを細かく見ると次のようなコンポーネントレイヤに分けられる。

RAC Extensions

Cluster Server

Database Accelerator(ODM)

Cluster File System(CFS)

Cluster Volume Manager(CVM)

 CVMは、VERITAS Volume Managerをベースとしており、複数ノードから論理ボリュームに対する同時アクセスを可能にしているほか、オンラインでボリュームの拡張・縮小が行える。もちろん、構成変更情報は即座に全クラスタノードに伝播する。つまり、VERITAS Volume Managerの機能をクラスタ環境で実現しているわけだ。

 CFSは、RACの実装を容易にするための特徴を持つ。たとえば、単一の「$ORACLE_HOME」の設定や、共有ディスク上にすべてのログを集約可能であることなどである。それまで、ログファイルは各ノードがそれぞれのローカルに持ち、それをNFSでクロスマウントしていたことを考えると、その便利さが分かる。また、単一のロードにI/Oを任せる、いわゆるプロキシファイルシステムではないので、すべてのノードからのアクセスを可能にしている。

 ODMは前述のとおり、Database Acceleratorとして動作する。すべてのOracleプロセスは単一のI/Oライブラリを利用するが、このI/OライブラリがODMである。VERITASはOracleプロセスからのI/Oコールを受け取るライブラリを提供しており、結果として、ファイルシステムを利用していてもRAWデバイスと同等の性能を実現している。また、ファイル識別子を共有化するなど、クラスタ内でのファイルマネジメント機能が強化されている。

 ここで角田氏はOLTP性能を測定したTPM-Cベンチマークを示し、Solaris、HP-UXの各プラットフォームでCluster File Systemを使用した場合、RAWデバイスを使用した場合に比べ、最大でも4%程度の性能ダウンしか認められなかったとしている。

 Cluster Serverの説明では、クラスタの状態と構成情報を管理するためのノード間通信に多くの時間が割かれた。前述のコンポーネントレイヤはノード/インスタンス間で会話を行いながら協調して処理を実行しているため、スケーラビリティを確保するには、遅延時間が短く、帯域幅を確保できる通信インフラが必要としている。また、この際に使用するインフラストラクチャについては、「最大8本のNICをサポートしている。この場合、4+4の冗長構成となるが、実際の運用では4+1の冗長構成がベスト」(角田氏)としている。

 RAC Extensionsは、キャッシュフュージョンのトランザクションをハンドリングするなど、Oracle 9i RACを快適に動作させるための機能拡張となっている。このうち角田氏が強調したのはI/O Fencing機能。これは、データを破損から守るため、クラスタから除外されたノードが共有データを破壊してしまわないように排除する機構。インターコネクトに不具合が発生し、各ノードの状態が分からない状態になると、それぞれのノードは自分だけが生き残っていると判断してしまう(スプリット ブレイン)。この状態で共有ディスクにアクセスすると、データの整合性が取れなくなり、データベースの破壊に繋がってしまう。これを防ぐのがI/O Fencingである。この仕組みはSunでいうフォーラムディスクの機構に似たものともいえる。

 I/O Fencingの動作は、SCSI 3のコマンドとコーディネータディスクによって成り立つが、「SCSI 3のコマンドを使っている弊害として、サポートするディスクが限られてしまう」(角田氏)という。角田氏によると、VERITASでは今後、ストレージ検証キットなどを提供することで、サードパーティなどの力を借りてこの部分の情報収集にあたる予定だという。

RAC環境における今後の予定

 最後に今後の予定が示された。まず、これまでのシングルインスタンス Oracleで実現している各種機能をパラレル環境でも提供していくこと、ディザスタリカバリ機能のサポートなどが挙げられた。また、現在4ノードまでのサポートを8ノードまで拡張することも言及した。なお、角田氏によると「社内的には、32ノードまでベースの基本部分が動作することを確認している」という。

 そのほか、Oracle 10gのサポートも予定しているという。VERITASはすでに10gの検証を行っているが、「Oracle 9iと比べて、APIレベルでの変更点はない」(角田氏)としている。しかし、DBE/AC 4.0のリリース時にOracleによるCertificationが取れるかどうかは厳しいとしている。

 そして、これらの機能はマルチプラットフォームに対応することが力強く説明された。現バージョンのDBE/ACが対応しているのはSolaris、HP-UXだけであるが、AIX、Linuxもサポートするとしている。しかも、4つのプラットフォームで同一の操作性と機能を実現させるという。具体的なリリースタイミングは、今冬にSolaris版が、そのあとはLinux版、AIX版、HP-UX版と続き、来年の夏までにすべてのプラットフォーム版が出揃うという。

 角田氏は「これにより、システムの論理設計は同じでよい。優れた相互運用性を提供する」と語りセッションを終えた。

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[西尾泰三,ITmedia]