エンタープライズ:ニュース 2003/10/31 01:40:00 更新


基準は「製品価格から“情報の価値”へと変わる」、Horisonのムーア氏が指摘

米StorageTekのカンファレンス「FORUM 2003」に、ストレージ専門の調査会社、Horison Information Strategiesの会長を務めるフレッド・ムーア氏が登場した。

 「今、ストレージ業界は劇的な変化の中にあり、新たなステージへと移行しつつある」――サンディエゴで開催中の米Storage Technology(StorageTek)のカンファレンス、「FORUM 2003」のジェネラル・セッションにおいて、ストレージ専門の調査会社、Horison Information Strategiesの会長、フレッド・ムーア氏はこのように語った。

ムーア氏

今年もFORUMのジェネラル・セッションに登場したフレッド・ムーア氏


 ムーア氏は昨年もFORUMに登場し、ストレージ容量の増加と管理能力のギャップについて指摘している。これに対し今年同氏が「New Game, New Rules」というタイトルのこの講演で強調したのは、テクノロジだけでなくストレージ業界のあり方そのものが大きく変化しつつあるという点だ。

 PCの普及とドットコムブーム、その後の停滞期、さらには9.11の連続テロ事件と、ITを取り巻く世界は移り変わってきた。それに伴いストレージ業界のトレンドも、かつてのPC志向、ネットワーク志向から、今は「情報」志向に変化しつつある。その中で、情報ライフサイクル管理(ILM)という考え方も、徐々に取り入れられるようになっているという。

 こうなると当然、業界を律するルールも変わってくる。同氏はその例として、かつては「高い」とされていた99.999%のアベイラビリティが「当たり前」のものとなり、「できれば対応しておいたほうがよかった」で済んだ政府規制が「必須」のものになっているといった事柄を挙げた。

 また、かつてストレージの購入価格を検討する際に真っ先に頭に浮かぶのがハードウェアの価格であったのに対し、現在それは「サービスレベルであり、そのソリューションのビジネス上の価値が基準になっている」(ムーア氏)。逆に言えば顧客の側も、ハードウェアや管理ソフトウェアのライセンス料に基づいて価値を測るのではなく、データそのものの価値について考えるようになっているという。

デバイス自身にインテリジェンス化

 ムーア氏は今回も多くの図表を示しながら、今後のストレージ業界のトレンドについて考察を加えている。その中からいくつかを挙げてみよう。

  • ディスクに関しては、容量の伸びにパフォーマンスが付いていかないという傾向が続く。また使用率も大きな課題の1つになる
  • テープは依然として、ディスクに対する価格優位性を持っており、今後は複雑さをなくす仮想化技術の導入がポイントになる。また多くの人は意外に思うかもしれないが、テープの容量は拡大しており、実はディスクよりも大きい
  • 依然としてストレージ容量と管理能力との間にはギャップが存在する。これには仮想化による管理の簡素化とストレージ統合といた要素が重要になる
  • 重要なデータは、OracleやDB2といったデータベースに保管されることが多い。これらデータベースアプリケーションのプロファイルに基づいて、適切なストレージデバイスを選択することが大事だ
  • ディザスタリカバリについても、データの種別、データの価値に基づいて適切なストレージデバイスを選ぶことがポイントだ。ミッションクリティカルなデータはレプリケーションできちんと保護し、一方それほど重要ではないデータならば安価なシステムを採用するといったアプローチが考えられる
  • ストレージそのものの保護が今後ポイントになる。ファイアウォールやウイルス対策ソフトを用いたゲートウェイ部、およびクライアントの保護だけでなく、プライマリ、セカンダリ双方のストレージに対するセキュリティを検討する必要がある

 またムーア氏はより長期的な展望として、ファイバチャネルスイッチをはじめとするストレージデバイス自身にインテリジェンスが加わり、データの流れを把握しながら管理がなされるようになると予測。これにより、サーバ/ホストの種類によらず、ユーザーの負担が少ないストレージ管理が可能になるとしている。

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▼StorageTek FORUM 2003 レポート
▼Keynote:「ストレージ容量の増加に管理が追いついていない」
▼FORUM 2002 Denver Special Report

関連リンク
▼日本ストレージ・テクノロジー
▼Horison Information Strategies

[高橋睦美,ITmedia]