インタビュー
2003/10/31 23:42 更新


Interview:IBMがCognosとの提携で目指すのは顧客へのトータルなアプローチ

IBMは今年の4月に、ビジネスインテリジェンス大手、カナダのCognosとのグローバル提携関係を拡大することを明らかにしている。両社にとって提携の狙いは何か。

 IBMは今年の4月に、ビジネスインテリジェンス(BI)大手、カナダのCognosとのグローバル提携関係を拡大することを明らかにしている。BIソリューションを販売する複数年契約を締結したもの。

 両社は、販売、マーケティング、人事など各業種向けにソリューションを共同販売している。基盤となるソフトウェアとして、、DB2 Cube ViewsやWebSphere Portalなどが採用され、その上でCognosのBIアプリケーションが稼動する形になる。

 IBMはCognosとの提携に何を求めるのか。日本IBMのe-ビジネス・オンデマンド事業CRM&BIソリューションズ部長を務める成田徹郎氏、Cognosのロバート・アッシュCOO、日本法人の田上一巳社長に話を聞いた

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左からCognosのロバート・アッシュCOO、日本IBMの成田徹郎氏、コグノスの田上一巳社長

ITmedia CognosとIBMの協業について教えてください。

成田 現在IBMでは、ミドルウェアとベーシックソフトウェアに注力することがのソフトウェア戦略の柱になっています。BIを含めたビジネス寄りのアプリケーションに関しては、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)との協力関係を重視しているのです。ISV戦略で問題となるのは、ソフトウェアの日本語版の品質です。その意味で、CognosとIBMは、カナダのオタワにIBM Competency Centerを設けることで、日本語版が出荷される時点でバグなどがフィックスされており、重大なトラブルを事前に回避できる体制になっています。

アッシュ 3年ほど前から、Enterprise BIの領域が活気付いてきました。これを進めるためにはIBMとの協業が重要と考え、製品の側面を含めて対応してきました。

ITmedia BIベンダーの中でCognosを選んだ理由は何ですか?

成田 現在顧客とビジネスを行う上では、製品をただ持っていっても買ってもらえません。結果的に、顧客のビジネスを向上させることを考えたソリューションを提示しなくてはならないのです。そのため、IBMが提供する以外の製品についても、顧客のビジネスを考えればトータルに責任を持たなくてはならないのです。

 その意味で、Cognosが、IBMの戦略製品であるDB2 Cube ViewsやWebSphereに賛同し、システムとしての運用性を確保してくれていることは、パートナーとして選んだ理由になっています。また、トップマネジメントの間で、戦略などを含めたビジョンを共有できていることも重要です。具体的には、IBMにとって、SAP導入プロジェジェクトを手掛ける顧客が多く、CogosのReportNetがSAPの製品と接続性が優れていることも評価しています。つまり、相互に、補完関係を築けているということです。

ITmedia BIに対するユーザーのニーズはどのようになっていますか?

成田 ある調査によれば、日本には、BI市場だけで4000億円の規模があります。そして、その80%はレポーティングへのニーズなのです。私が委員を務めるDWH/CRM Expoにおけるアンケートでは、ユーザーのニーズはかつてはデータの蓄積自体にあったが、現在は、それをいかに活用するかに意識が移っています。

 そのため、私は、指標をベースにした経営を推進するBSC(バランススコアカード)をユーザーに利用してもらいたいと考えています。BIは経営的な課題にいかに応えるかで価値が決まります。

ITmedia 日本の企業はまだあまりデータを活用していませんか?

成田 例えば、ある自動車会社や保険会社はこれまで、顧客データを持っていませんでした。「いいものを作れば売れる」というプロダクトアウトの時代ではないのにも関わらずです。また、顧客のデータは常にアップデートされるべきものです。企業はこれにやっと気づいてきたのです。

田上 これまでの多くの企業は、データをスプレッドシートで管理してきましたが、情報を管理するという視点がなかった。戦略が無いのに、ツールをいれれば問題が解決されると思っているところもあります。

成田 確かに、日本企業の多くは戦略を考えるのは苦手と言えます。IBMがPWCCを買収した理由もここにあります。



[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

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