インタビュー
2003/11/04 04:16 更新


Interview:64ビットを知りつくしたビジュアルテクノロジーに聞くOpteron搭載システム (2/2)


32ビットから64ビットへと緩やかに移行できるOpteron

 では、Opteronの性能面、機能面の利点はどんなものだろうか。舟窪氏と小林氏は、Opteronの利点を次のように説明する。

 「Opteronの利点は、64ビットCPUでありながら、既存x86アーキテクチャと互換性を持つ高性能な32ビットCPUとしても動作することです。例えば、多くのパソコンで使われているWindows 2000やWindows XPをインストールし、その上でWordやExcelを快適に使用できます。弊社のお客様の中には、“今お使いのWindowsも動きますよ”とお伝えすると驚かれる方が結構いらっしゃいます。きっと64ビットという部分が前面に出すぎているためでしょう(舟窪氏)」

 「64ビットでしか使えなければユーザは一部に限られますが、32ビットでも使えるのであればユーザに対するすそ野は一気に広がります。近い将来に64ビットの環境が充実することは明らかなのですから、とりあえず現段階では32ビットで使っておいて、64ビットのアプリケーションが出揃ったら、OSを入れ替えて64ビット環境へと移行できます。つまり、これまでの32ビット資産を無駄にせず、うまく継承しながら64ビットへと緩やかに移行できるわけです(小林氏)」

 「科学技術計算向けの市販パッケージは、だいたいIA-32系プロセッサとLinuxが主要な動作条件となっています。Opteronの64ビット環境を活用するには、64ビット版のパッケージが発売されるまで待たなければなりません。現在ある市販パッケージを使用してとにかく研究を進めなければならない方は、とりあえずOpteronを32ビットCPUとして使用し、将来的に64ビットに対応した段階で64ビット対応のOSとソフトウェアを再インストールすればよいでしょう。もちろん、Opteron向けの64ビット版コンパイラはすでに発売されていますので、大学の研究室で開発したソースコードや一般に公開されているソースコードなど、いわゆるハウスコードを使用して計算している方は、今すぐにでも64ビット環境に移行できます(舟窪氏)」

舟窪辰也氏

技術本部 副本部長の舟窪辰也氏


メモリインテンシブなアプリケーションで高い処理性能を発揮

 次に、Opteronは実際にどれほどのパフォーマンスを発揮するのだろうか。舟窪氏は、科学技術計算に絞ってOpteronの性能を次のように説明する。

 「これまでは、メモリやI/Oバスなどと比べてCPUだけがダントツに高速化されている状況でした。しかし、科学技術計算は、システム全体が進歩しないとなかなか性能改善を見込めない分野です。その点、Opteronはシステムのあらゆる部分で高速化が図られており、科学技術計算においても高いパフォーマンスを期待できます」

 Opteronの直接的な競合となるCPUは、同じ価格帯でマルチプロセッサに対応したインテルのXeon/Xeon MPだが、OpteronがXeonと大きく異なるのは、64ビットに対応していることとメモリコントローラがCPUに統合されていることだ。Opteronは、CPUそれぞれに対して個別のメモリバスが設けられるため、並列計算で複数のCPUを同時に走らせる場合、メモリバスの帯域幅は見かけ上CPUの個数分に増大する。

 「Opteronは、大規模なメモリ空間に大きな配列を作り、そこに間断なくアクセスが発生するようなアプリケーションで高いパフォーマンスを発揮します。例えば、差分法、有限要素法(FEM)、境界要素法(BEM)などを用いた流体の計算、構造解析、電熱・拡散問題の解析といった科学技術計算では、広いメモリ範囲で大量のアクセスが発生しますので、Opteronの出番といえます。一方、小さなメモリ範囲に対して集中的にアクセスするようなアプリケーションは、他のCPUのほうが高い処理性能を示す場合があります」

 科学技術計算を主とするユーザにとって最も大事なのは、SPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)の数値や雑誌のベンチマーク結果ではなく、自分の実環境でどれだけのパフォーマンスを発揮できるかということだ。ビジュアルテクノロジーは、こうした問題に対処すべく、ユーザの実環境でパフォーマンスを評価できる体制を整えているという。

 「弊社には、Pentium 4やXeonといったIA-32系に加え、64ビットのAlpha、Opteron、POWER4、Itanium 2と、数多くのラインナップを取り揃えています。しかし、カタログ値だけからお客様の環境に最適な製品を選ぶことはきわめて困難です。そこで弊社は、お客様から実際に使用されているプログラムをお借りして、購入前にベンチマークテストを行い、その結果を報告するサービスを提供しています。実物をお借りできない場合には、同じような傾向を持つテストラン用のプログラムを送っていただきます。首都圏のお客様については、弊社のベンチマークセンターに出向いていただき、ご自身で直接チェックしていただくことも可能です。このような体制を敷いているハードウェアベンダは、日本でも数少ないと思います(舟窪氏)」

大規模のクラスタリングシステムにも積極的にチャレンジ

 最後に、ビジュアルテクノロジーが得意とする科学技術計算向けのクラスタ技術について詳しくお聞きした。

 「ビジュアルテクノロジーの強みは、あらゆる規模のクラスタで一つのジョブがきちんと動作するものを納入できることです。つまり、クラスタと称されたハードウェアを単に提供するのではなく、研究をされている方に最適なシステムを提案することから、実環境でのベンチマークテスト、そしてお客様の環境できちんと動作するシステムの納入までをトータルにサポートするわけです(小林氏)」

 「大規模のクラスタシステムについては、同志社大学に納入されたOpteron搭載クラスタがよい例です。当初は32ノード、64CPUという形でシステムを納入しましたが、段階的に拡張を図っていき、現在では256ノード、512CPUで動作しています。512個のOpteronを搭載したクラスタシステムは、Opteronを搭載したシステムの中では国内で最大規模となります(舟窪氏)」

 「最も売れ筋の8、16、32ノードあたりのラインナップで勝負している会社が多い中、弊社は大規模の超高性能クラスタシステムにも積極的にチャレンジしています。コンピュータは速くてナンボの世界ですからね(笑) まだ詳細は明かせませんが、近い将来にトップ500にラインナップする日本のコンピュータの上位に食い込むようなOpteron搭載クラスタシステムをビックリするような低価格で実現できる予定です。完成したら皆様に必ずご報告しますので、ぜひ期待してください(西氏)」。

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[構成:伊勢雅英,ITmedia]

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