| エンタープライズ:ケーススタディ | 2003/11/20 13:55:00 更新 |

「データ品質専任組織」でBIを成功させる
「Gartner Symposium ITxpo 2003」で同社リサーチバイスプレジデントを務める栗原潔氏が「ビジネス・インテリジェンスのシナリオ:インテリジェンスギャップという課題」をテーマに講演を行った
ガートナージャパンは11月19日から3日間、東京・お台場で「Gartner Symposium ITxpo 2003」を開催している。初日となった19日、同社リサーチバイスプレジデントを務める栗原潔氏が「ビジネス・インテリジェンスのシナリオ:インテリジェンスギャップという課題」をテーマに講演を行った。高品質なデータは企業経営の宝であるが、陳腐化すれば一転して、負債と同じになってしまうという。
栗原氏は、「企業に対してITが提供する価値は、これまでのようなプロセスの自動化による効率改善から、競争上の優位性の提供へとシフトしてきている」と話す。今後のITには、既存ビジネス拡大を実現する「ビジネスドライバ」と、新たなビジネスを創り出す「ビジネス・イネーブラ」としての役割が重要になるとしている。
DWHは業務系と情報系をつなぐ橋
同氏は、ビジネス・インテリジェンス(BI)で用いられる情報系アプリケーション専用のデータベース、データウェアハウス(DWH)について、「業務系と情報系をつなぐ橋」と表現している。
業務系の領域では、トランザクションデータや定型的業務、業務効率改善、コスト削減、ローリスクなどが主要なテーマになる。一方で、情報系の世界では、ビジネスインテリジェンスや創造的業務、競争優位獲得、利益率向上などを考えるという。
つまり、コスト削減などの日常業務の改善の側面と、新しい戦略の立案といったクリエイティブな業務を分離せず、DWHをベースに相互連携してイメージと言える。詳細データや長期履歴の保持、アプリケーション中立などのさまざまな条件を満たし、真の意味で正しいデータウェアハウスを全社的に構築できた企業は、効率改善も競争力強化にも貢献する強力なIT基盤を手に入れたことになるという。
詳細なデータを保持していることで、DWHは従来のレポーティングツールと比べても、ずっと複雑かつ正確な分析を行えるという。DWHと併せてBIツールを利用すれば、「何が起きたか?」だけでなく、「なぜ?」「今後は?」といった事柄も把握できるようになるとしている。
これからは、1つの企業内での情報基盤の最適化だけでなく、パートナー企業や顧客とも情報を共有し、サプライチェーン全体で最適化を行うケースも増加するという。
データ品質専任組織立ち上げのススメ
「高品質データは企業の資産」という場合の条件について同氏は、「標準化されている」「整合性が取れている」「最新かつ正確な状態を維持」「適切な文書化」「多様な源からのデータが結合している」「粒度が細かい」「履歴が保持されている」「名寄せが完了している」「セキュリティ/プライバシーが考慮されている」を挙げている。
ここで示されたガートナーの提言は、「データ品質向上のための専任組織を構築した企業は、構築しない企業と比較して、DWHとBIから得られる価値を大幅に向上できる」というもの。
ガートナーでは、CIOの直下にデータ品質責任者を置くことを勧めている。その下に、事業部門代表、情報システム室データ管理者、情報システム室データベース管理者などが来る。重要なのは、データ品質の管理に現場だけでなく、企業経営レベルで関与すべきということになる。
DWHのモデリング方針
一方、DWHを設計する上で、アプリケーション間でデータ設計ができていなければ、全社的な共通DWHを構築することは難しい。これは、技術面だけでなく、政治的な調停、ビジネス上の決断、必要最小限の妥協も伴う作業となる。
アプリケーション間でデータ設計に相違がある場合、DWHのデータモデルは、「粒度が細かい側に合わせる」「新規アプリケーションに合わせる」「パッケージアプリケーションい合わせる」「顧客に近いアプリケーションに合わせる」といったことを原則にするべきという。
また、全社的データに100%の完全性を求めるのは非現実という認識を持ち、20%の重要データにフォーカスすることが大事になる。
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[怒賀新也,ITmedia]
