エンタープライズ:ニュース 2003/11/25 18:18:00 更新


日本IBMがオンデマンドを支えるグリッドやオートノミックの先進技術をアピール

日本IBMが都内で「IBMオンデマンド・テクノロジー・フォーラム2003」を開催した。同社のe-ビジネス・オンデマンド構想を支えるグリッドやオートノミックを担当する米IBMの副社長らが来日し、その最新動向を紹介した。

 日本アイ・ビー・エムは11月25日午後、都内で「IBMオンデマンド・テクノロジー・フォーラム2003」を開催した。午前中、同フォーラムに先立って行われたプレス向けのブリーフィングでは、同社のe-ビジネス・オンデマンド構想を支えるグリッドコンピューティングやオートノミックコンピューティングを担当する米IBMの副社長らがその最新動向を紹介した。

 オートノミックコンピューティングを担当するアラン・ガネック副社長は、e-ビジネス・オンデマンドを実現するには、ITリソースの複雑さを排除することが不可欠だとした。

 「今日、企業のITリソースは極めて複雑になっている。障害の40%はオペレーターのミスに起因しているほか、彼らは半分近い時間を問題の分析に費やすことを余儀なくされている」(ガネック氏)

 ITにまつわるコストで最も高くつくのは人材。異種混在環境の問題分析となるとスキルの高い技術者が必要となり、それによるコスト増に多くの経営者らが不満を抱いているとガネット氏は話す。

 米IBMは10月10日、システムの問題を検知し、解決するための一連の技術と共通言語の策定に向け、シスコシステムズらと共同で取り組んでいくことを明らかにしている。アプリケーションやデータベース、あるいはハードウェアコンポーネントらが吐き出すログを共通のフォーマット「コモン・ベース・イベント」(CBE)に変換することで、例えばIBMであれば、「Tivoli Autonomic Monitoring Engine」が異種混在環境のログを一括して収集・管理・分析・解決策提示および実行できるようにするのが狙いだ。一連の技術には、ナレッジデータベースとポリシーエンジンも含まれ、ITリソースを構成する各コンポーネントにフィードバックを行い、「自己回復」させる機能を実現するものも含まれている。国内からも東芝や日立ソフトがパートナーとして名乗りを挙げているという。

 なお、2004年にはTivoli Autonomic Monitoring Engineのツールキットが登場する。

グリッドはオンデマンドへの第一歩

 Oracle 10gの発表により、にわかに注目を浴びているグリッドコンピューティングについても、IBMは具体的な事例を挙げ、同社が既に提供済みで、かつ先進的なユーザーがそれによって競争力を高めていることをアピールした。証券会社のCharles Schwab、人事アウトソーシング会社のHewitt Associates、財団法人産業技術総合研究所などがそれで、特に産業技術総合研究所は2636CPUという世界最大のLinuxクラスタによるグリッドシステムを構築している。

 米IBMでグリッドコンピューティング戦略を統括するダン・パワーズ副社長は、グリッドはe-ビジネス・オンデマンドへの第一歩だとし、特に「仮想化」の技術が深く関わってくると話す。

 「グリッドはまさに仮想コンピューティング。異種混在で分散しているコンピュータを仮想化によって1台の巨大なコンピュータのように見せるものだ」(パワーズ氏)

 グリッドコンピューティングへのロードマップも明確になっており、Webサービス技術を取り入れたOpen Grid Services Architecture(OGSA)への対応から始まり、プロビジョニングの自動化、データの仮想化、ワークロード管理、課金、そしてトランザクション管理まで視野に入っている。

 パワーズ氏は、「われわれはメインフレームで学んだことを異種混在、かつ分散の環境に適用しようとしている。重要なことは、Globus Allianceのような標準団体と協力し、オープンな環境でそれを実現しようとしていることだ」と話す。

 日本IBMは今月中旬、エクサ、ティージー情報ネットワーク、日進ソフトウエアと共同で、OGSAに対応したWebサービスアプリケーションの構築実験に成功したことを明らかにしたばかり。地域の医療機関のインフラを仮想化し、カルテや医療情報を横断的に検索できるようにシステムで、例えば、規模の小さな診療所でも、Webブラウザを使って、地域の病院に散在する患者の過去の病歴や手術に関するデータを手にすることができるようになるという。

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[浅井英二,ITmedia]