エンタープライズ:ケーススタディ 2003/11/27 19:34:00 更新


IP Phoneによるオフィス改革で七色の効果を

企業向けITアプリケーションの教育事業などを手がけるグローバルナレッジはオフィス移転で、メッセージングをIP Phoneで統合した

 企業向けITアプリケーションの教育事業などを手がけるグローバルナレッジは、2003年5月に、従来の東京オペラシティから、新宿文化クイントビルへオフィスを移転した。総面積は922坪、教室数22は、研修施設としては日本でも最大規模になる。ネットワーク利用による教育メニューの多様化を図るなど、移転には同社の戦略的な狙いが背景にあったという。

 このオフィス移転では、電話やメール、FAX、ボイスメールといった各コミュニケーション手段、いわゆるメッセージングがIP Phoneと、ソフトバンクテクノロジーによる導入サービスを利用して統合されている。これが、オフィス改革の中核をなす取り組みの1つとなった。

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グローバルナレッジに導入されたCisco IP Phoneの画面。PCからUSB接続端末を使って電話をかけられる。

山積みだった問題点

 同社旧オフィスのメッセージング環境には数々の問題点があったという。

 例えば、不在転送ができない、不在時応答機能がない、グループ設定機能に限界があった、座席追加に伴う工事費負担が予選全体の圧迫原因になった、座席移動に伴う設定変更作業が複雑、内線番号と外線番号の連携が取れなかったなど。数えればきりがないほどで、将来的な運用には耐えられないものであることが判明していたという。

 そこで同社は、「既存システムの継続運用」「PBXシステムの導入」「Cisco IP Phoneの導入」という3つの選択肢を挙げ、運用の比較を行った。PBXでは不在転送や留守録、電話番号計画は可能なものの、ボイスメール、LAN共用、自動応答などが不可能であることが分かった。一方で、Cisco IP Phoneならばこれらのすべての機能を実装できる。さらに、36カ月後の投資効果を独自に試算した結果、IP Phoneを導入した場合、3年後の運用経費を半分にまで削減できることが判明した。これにより、同社はCisco IP Phoneの導入を決定したとしている。

導入目的は主に3つ

 IP Phone導入により同社が目指したのは、費用の抑制、デスクスペースの有効利用、いつでもどこでもオフィスの実現の3つ。

 同社は基本的に、ノートPCにUSB接続することで利用できるSoftPhoneを採用したことで、IP電話機を全員分購入するケースと比べてコストを半分に抑えることができたという。また、従来と比較して、固定電話機がなくなったことや、ノートPCの利用を基本としたことで、1人当たりのオフィス利用スペースを20%削減することができた。これは、実質的には、オフィス賃料削減にもつながる重要な効果と言っていい。

 さらに、ノートPCを利用することで、オフィスの外からも内線通話が可能になった。海外からのVPN接続によって電話ミーティングをすることもできるという。

導入検討から運用開始まで3カ月ほど

 同社は2003年の1月下旬に導入を検討してから、わずか3カ月後の4月中旬には運用を開始したという。ただし、まったく苦労しなかったわけではない。

 例えば、IP Phoneのボイスメール機能をExchange Serverを連携するためには、Exchage 5.5から2000へとバージョンアップさせなくてはならなかった。また、Exchangeのバージョンアップ時には、ユーザーのメールボックスやパブリックフォルダを1つずつ移行しなくてはならず、これを手作業で行ったために、時間を大幅に取られたという。

 また、PC上の音声と受話音が混線するなど、Soft Phoneの不具合にも悩まされた。これには、アナログジャックではなく、USBポートを利用した受話器を採用することで、PC音と通話音を分離し、影響を回避したとしている。

 ここで、Cisco IP Phoneのボイスメール機能をExchangeと統合するために、Cisco Unityを導入した。IP Phoneでボイスメールを録音すると、それがUnityを経由して各ユーザーのメールボックスに音声ファイルとして配信される。これにより、ボイスメールを電子メールとして扱えるわけだ。また、PC上からWindows Media Playerや電話でボイスメールを再生することもできる。

社内システム部門の負担

 IPテレフォニーシステムに移行したことで、社内システム部門の役割に変化が生じた。従来は、新入社員が入社する際には、PCセットアップ、ユーザーアカウントの作成、メール設定までで完了していた作業が、電話の設定、ボイスメールの設定にまで拡張され、セットアップにかかる工数は増加したという。

 一方で、座席移動が発生したとしても、設定の変更といった要件は一切発生しないため、こちらでは手間が減ったという。グループ番号の割付の変更といった電話の設定を電話会社へ依頼したりすることもなくなるため、トータルでは運用工数は削減されたとしている。

 このように、IP Phoneを導入することによる効果は、業務面、システム面、そしてコスト面ともに大きく、数値でも示すことができる。今後は、オフィス改革を企業文化の変化や、ワークスタイルの改善に結びつけていくことで、さらなる効果を見出すことも可能になるかもしれない。

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同社オフィス。テレビドラマの撮影にも利用されたことがあり、先進的オフィスとして見学依頼も多いという。

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[怒賀新也,ITmedia]