エンタープライズ:レビュー 2003/11/28 01:05:00 更新


レビュー:リモートデバッグを実現するPHP開発ソフトZend Studio 2.6 (1/2)

Zend Studio 2.6は、デバッガや補完機能、オンラインリファレンスなど統合開発環境(IDE)として欠かせない機能を完備するPHPスクリプト開発ソフト。試用したレビュー記事をお送りしよう。

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Zend Studio 2.6の統合開発環境。MDIではなく、各表示領域へ移動可能なスプリッタで区切られる


 「Zend Studio 2.6 日本語版」(以下、Zend Studio 2.6)は、ゼンド・オープンソースシステムズ(以下、ゼンド)のPHP(Hyper Text Preprocessor)統合開発環境(IDE)ソフト。楽天市場の「Zend PHP Square」でもオンライン販売されている。コア部の開発元は、PHPの開発を中心に行うイスラエルのZend Technologiesだ。PHP言語は、Web上のアプリケーション構築に適したサーバサイドスクリプト言語であり、90年代後半の登場ながら現在でも幅広く使われているオープンソースの1つ。一般的にPHPスクリプト開発にはエディタで直接記述することが多いが、馴染みやすいようIDEのデバック環境を提供してくれることにZend Studio 2.6の真価がある。

開発環境を同梱のクライアントとサーバソフト連携で実現

 構成上の特徴は、Zend Studio 2.6がクライアントとサーバでやり取りされる点だ。「Zend Studio Client」と「Zend Studio Server」が連携し合うことで開発環境を実現する。前者のクライアントはZend Studioの核となる開発ツールであり、PHPスクリプトの編集とデバッグ、コード補完機能を搭載し、開発支援をしてくれる。後者のサーバツールは、PHPの実行環境となるサーバ上に共存させ、主にリモートデバッグ機能を提供してくれるものだ。メンテナンスを簡略化するWebインタフェースも提供される。

 このように開発環境としてクライアント(Zend Studio Client)とサーバツール(Zend Studio Server)が独立しているが、クライアントのみでも利用可能だ。それに加え、サーバツールを組み合わせると、リモートデバッグ開発が加わると考えればよい。Zend Studio Clientの動作環境は、Linux上のX11もしくはWindows上で動作し、Zend Studio Serverは、Linux、FreeBSD、Solaris、もしくはWindows上のApache HTTPサーバと連携可能だ。

中核となるツールはJavaで作られたZend Development Environment

 Zend Studio 2.6の中核となっている開発環境「Zend Development Environment」は、Windows版とLinux版の2種類が用意されている。今回の試用では、Windows 2000 Professional上にWindows版のZend Development Environment 2.6.2をインストールした。また、インストーラにはJRE(Javaランタイム)バンドル版と、省かれているものの2種類が存在する。JREはJ2SE 1.4.1として用意され、Zend Studio 2.6のインストールディレクトリ下に配置され、ほかのJREがインストールされていても干渉しないだろう。

 筆者が試用したところ、セットアップ直後のWindows版クライアントの起動時に2バイトコードが化けてしまい読めないことに気づいた。環境に依存するかもしれないが、症状から推測するに日本語表示に不適切なフォントが指定されていた。これには「ツール(T)」メニューから「カスタマイズ...」を選択し、カスタマイズウインドウの表示、さらに「エディタ」ページを開くとフォントの設定項目がある。ここで初期設定になっているCourier NewからMS Pゴシックに変更し、2バイトが利用できるようになった。

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2バイト文字を入力したら文字化けが。日本語版のZend Development Environmentとはいえフォント設定が必要だ


 インストール後は、簡単なスクリプトを使用してデバッガ機能を使い、その操作性や機能を体験してみた。PHPスクリプトの実行は、標準で「Ctrl」+「F5」キーに割り当てられている。ほかにもカーソル行までの実行(「Shift」+「F10」キー)や、ブレークポイントまで実行(「F5」キー)など、幾つかのパターンが選択可能だ。

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作成したスクリプトを実行すると、ウインドウ左側にスクリプト実行結果が表示される。デバッガとしての主な機能は、ブレークポイント、ステップ実行、そしてウオッチ式


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デバッグ中の画面。描画速度が気になった。画面上の再描画のチラツキを追うこともできた(なお、スクリーンショットの作成には便宜上VMwareを利用しているが、デバッガの動作が重いのはエミュレーションのせいではない)


 Zend Studio ClientにJREが含まれていることや、ここまでの画面を見れば気づく人は多いだろう。Zend Development Environmentは、Javaコードで作られたソフトである。そのためか、クライアントのパワーを要求し、デバッグセッションの開始やステップ単位のトレースを行っている際には、かなりの負荷となる。実際に「for」ループを追ったり、変数値の変移を追跡したりしようとすると顕著だ。ダイアログウインドウで大量のファイルが存在するディレクトリにアクセスしたところ、しばらく沈黙してしまう場面もあった。参考までに筆者のPC環境は、PentiumIII/1.2Hz、メモリ512Mバイトである。

 各機能に対するショートカットの割り当ても可能だ。筆者自身はキーボードにHappy Hacking Keyboardを利用しており、「最後まで実行」(「Ctrl」+「F5」)がどうしても使いづらかった(このキーボードでは「Fn」+「Ctrl」+「5」を入力する必要がある)。このため、この機能を「Ctrl」+「G」キーに割り当てるなど、若干のカスタマイズを行った。このようなことも、ユーザー好みにできる。

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[長谷川 猛,ITmedia]