エンタープライズ:レビュー 2003/11/28 01:05:00 更新


レビュー:リモートデバッグを実現するPHP開発ソフトZend Studio 2.6 (2/2)

コードバージョン管理のCVS支援機能を搭載

 新機能として外せないのは、統合開発環境上でCVSレポジトリへのアクセスが可能となった点だ。GUI上でメニューから操作を選択するだけで、CVSレポジトリへのコミットやアップデート、差分取得などを行うことが可能となっている。バージョン管理システムに不慣れなユーザでも、これならば比較的容易にCVSに馴染むことができそうだ。

 ただし、Zend Studio自体では、新たなモジュールのインポートが不可能である。つまり、モジュールの立ち上げ作業などは統合開発環境上からの操作ができず、Zend Studio 2.6に頼ることはできない。このことから、CVSの全機能が網羅されているわけではないため、必要に応じてコンソール上で行うか、ほかのフロントエンドを併用する必要がある。

 前述した通り、サーバソフトととなる「Zend Studio Server」は、Apache、PHP(modモジュール)と協調する形で動作する。Zend Studio Server自身にもこれらのソフトウェアのバイナリが収録されており、初期セットアップ時にインストール可能だ。しかし、収録されているバージョンはすでに過去のものであり、またPHPでもマルチバイト文字列対応などのオプションが指定されていない。このため、そのまま利用することはできないだろう。必然的に、ApacheやPHPをソースコードから構築するか、もしくはOSのパッケージシステムで導入し、環境を整えてからZend Studio Serverをインストールする必要がある。

 ところで、筆者の環境ではRed Hat Linux 9付属のRPMパッケージでApacheおよびPHPを導入してテストしたところ、正しいパスワードを入力してもZend Server Centerにログインできなくなってしまった。PHPのコンパイルオプションに関わると思われるが、RPMではなくソースコードからApache 2.0.47とPHP 2.3.3をコンパイルし、それからZend Studio Serverをインストールした上では問題なく動作した。この手順も簡単に紹介しておこう。

 Apache 2.0.47のインストールには、PHPおよびZend Studioのモジュールを利用するために、configureオプションに「--enable-module=so」を指定した。共有オブジェクト形式のモジュールが利用できるようコンパイル指定する必要がある。

% ./configure --enable-module=so
% make
# make install

 その後Apacheの設定ファイル(httpd.conf)を必要に応じて編集し、問題なく起動することを確認しよう。ここではApacheの設定方法については割愛する。

 次なる設定はPHPであるが、ここでは4.3.3をソースからコンパイルした。前述した共有オブジェクト形式のモジュールを生成するために「--with-apxs2=/usr/local/apache2/bin/apxs」を指定するほか、「--enable-crypto」「--enable-mbstring」など、利用する機能に応じて必要オプションを付加してコンパイルする。

% ./configure --with-apxs2=/usr/local/apache2/bin/apxs --enable-mbstring --enable-crypto --enable--mbstr-enc-trans --enable-versioning
% make
# make install

 今回はApache 2.0を利用したが、Apache 1.3系向けにモジュールを構築したい場合は「--with-apxs2」のかわりに「--with-apxs」を指定すればよいだろう。

サーバ上では、ApacheとPHPに加えZend Studio Serverが稼働する

 ApacheとPHPの準備完了後には、Zend Studio Serverをインストールする。今回はRed Hat Linux 9上で利用するために、該当するバイナリ「ZendStudioServer-2.6.0b-Linux_glibc21-i386.tar.gz」を利用した。

% gzip -d -c ZendStudioServer-2.6.0b-Linux_glibc21-i386.tar.gz | tar xvf -
% cd ZendStudioServer-2.6.0b-Linux_glibc21-i386
# ./install

zss03.gif

管理用パスワードも指定もインストーラ上で行う。入力されたパスワードはエンコードされ、php.iniに保存される


 インストーラによってファイルのインストール作業とApacheの設定ファイル(httpd.conf)が書き換えされ、Apache自体の再起動までが行われる。これで、Webブラウザから「http://[サーバのIPやネーム]/ZendServerCenterへアクセスすると、Zend Server CenterのWebインタフェースが表示される。

IDEとServer Center連携によるリモートデバッグ機能

 最後に、Zend Studio 2.6が持つ主要機能のひとつ、リモートデバッグを試してみた。リモートデバッグ機能は、Zend Server Centerが稼動するサーバ上のPHPスクリプトを、ほかのホストで稼動するZend Development EnvironmentからTCP/IP経由でリモートデバッグできるものだ。この機能を利用すると、LinuxやSolaris上で稼動するPHPスクリプトを、Windows上のZend Development Environmentからデバッグもできる。逆にWindowsベースのサーバ上でApacheを利用しつつ、開発作業はLinuxで行う場合にもリモートデバッグの恩恵を受けることも可能だ。

 今回の試用によって、筆者は機能的に十分なソフトだと感じた。この製品は、PHPによる開発が未経験だという層もターゲットとしており、そして比較的複雑なスクリプトまでも強力にリモートデバッグしてくれる。試用上気になった点といえば、やはりZend Development Environmentの反応速度だ。特にデバッグを行っている際、ステップ単位のトレースが思うように進まないのはストレスだろう。この点については、少しでも改善されるよう期待したい。それ以外に機能性では不満と思う個所がなかっただけに、クローズアップされてしまった。

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[長谷川 猛,ITmedia]