エンタープライズ:ニュース 2003/12/10 01:19:00 更新


GPLはヒッピーの夢想の産物ではない

「Linux支持者らの動きは著作権法に違反するものだ」としたダール・マクブライド氏の公開書簡に対し、リーナス・トーバルズ氏が反論を寄せた。(IDG)

 SCO Groupの最高経営責任者(CEO)であるダール・マクブライド氏は12月4日、自社のWebサイトに掲載した公開書簡の中で、「Linux支持者たちは欧米の法律で定められた著作権保護を脅かしている」と主張した。SCOはこれまでも、オープンソースOSは商用ソフトウェア産業に対する脅威であり、知的財産権の敵だとする声明を繰り返している。「米国および世界各地に、議会によって決定された著作権保護の方法を認めないソフトウェア開発者たちがいる」とマクブライド氏は記している(12月5日の記事参照)。

 Linux創始者のリーナス・トーバルズ氏は、「Linuxに適用されるGPL(GNU General Public License)ソフトウェアライセンスは多くの点で米国著作権法と共通しており、マクブライド氏の指摘は当たらない」とマクブライド氏の主張に反論している。以下に、トーバルズ氏の反論を掲載する。


 私は最近、SCOのダール・マクブライドCEOによる著作権法に関する公開書簡のコピーを受け取った。例によって、マクブライド氏はLinuxコミュニティーを著作権の敵だと表現している。いつものことだが、同氏は基本的な事実認識で間違っている。

 著作権法に関するSCOの主張は全くのまやかしであり、理性的な検証に耐えるものではない。米国憲法で認められた米国議会の「科学と有用な芸術の進歩を奨励する」権限には利潤動機が含まれる、と彼らは主張している。

 これは明らかに事実の誤解に基づく主張だ。その理屈で言えば、公立大学も基本的に憲法に違反していることになる。公立大学は「科学の進歩を奨励」するが、利潤動機を持たないからである。

 マクブライド氏にとっての動機付けは(理性や法律などではなく)金銭であることは明らかだが、金銭以外の動機を持つことが憲法違反になるわけではない。

 最近、(この件とは直接関係はないが)Linuxカーネルのディスカッションリストでも著作権をめぐる議論があった。その中で、バイナリオンリーのモジュールを入手すれば、それにはGPLが適用されないと主張する人がいた。

 この議論から、オープンソースを利用しながら自分は何も与えたくないという人もいることは分かったが、いずれにせよ、これは的外れな主張だ。私はこの議論の後で米国著作権法の正確な文言を調べたところ、次のように記載されていた。

 「『経済的利得』という用語は、価値があるものを取得すること(あるいは取得する見込み)を意味し、他人の著作物を取得することもそれに含まれる」

 これは米国法令集第17巻(著作権法)第1章101節「定義」からの引用である。つまり、著作権法の冒頭で用語を定義したセクションの記述である。これは、米国の著作権において根本的な事柄である。この問題にも関連することである。

 著作権法は、価値があるものを「取得する見込み」を明示的に含んでおり、そのような価値があるものとして「他者の著作物を取得すること」も明示的に示唆していることに注意していただきたい。米国著作権法に関する限り、これが「経済的利得」の定義そのものなのだ。

 では、GPLの本質とは何だろうか。

 「GPLとは、自ら貢献を行う代償として他人の著作物の価値を取得するためのものだ」と、誰かダール(マクブライド氏)に説明してあげるといいだろう。それがGPLライセンスの根本であり、それ以外はすべて法律的なことに過ぎない。

 つまり、GPLは「経済的利得」と対立するものだとダールが攻撃するのは間違っているだけでなく、「著作物の交換」に関するGPLの考え方が米国著作権法に明示的に含まれているのである。共産主義かぶれのヒッピーがドラッグによる恍惚状態で夢想したばかげたアイデアではないのだ。

 ダールがGPLの考え方は憲法違反だというのであれば、彼は米国の今日の法典を攻撃していることにほかならない。

 本稿で引用した法律の条文を自分で読みたい人は、こちら(http://www4.law.cornell.edu/uscode/17/101.html)をチェックしていただきたい。

原文へのリンク

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