エンタープライズ:ニュース 2003/12/18 18:07:00 更新


MS、国内6大学に対しセキュリティ研究目的のソースコード開示へ

マイクロソフトは12月18日、研究目的で同社ソフトウェアのソースコードを開示する「ソースコードアグリーメント」の締結に向けて、国内6大学と協議を開始したことを明らかにした。

 マイクロソフトは12月18日、研究目的で同社ソフトウェアのソースコードを開示する「ソースコードアグリーメント」の締結に向けて、国内6大学と協議を開始したことを明らかにした。締結が実現すれば、同社が研究教育機関とソースコードアグリーメントを結ぶ国内初のケースとなる。

東 貴彦氏

ここのところマイクロソフトは教育機関に対する取り組みを積極的にアピールしている


 マイクロソフトは現在、文科省の科学研究補助金を受けて研究を進めている特定領域研究「社会基盤としてのセキュアコンピューティング実現方式の研究」(安全な情報基盤プロジェクト)に参加している慶応大、東工大、東大、東京理科大、筑波大、北陸先端技術大学院大の6大学と協議を開始している。

 安全で信頼できるコンピュータを目指し、セキュリティ分野への取り組みを強化している同社は、安全な情報基盤プロジェクトの研究成果に注目し、今回の協議に至ったという。

 安全な情報基盤プロジェクトでは、例えば電子メールを媒介とするコンピュータウイルスに対し、SoftwarePotと呼ばれる仮想実行環境や、未知ウイルス検知システムを備えた電子メールシステム「AnZenメール」などを開発しており、マイクロソフトのソースコードアグリーメントを利用することで、AnZenメールなどといった研究成果をWindowsで実行できるようにすることを目指す。また、マイクロソフトの「Outlook Express」ベースの安全なメーラーの開発や、Windowsのソースコードを分析し、脆弱な部分を見るけることで、新たな研究材料を探すことなどに意欲を示している。

 マイクロソフトの東 貴彦取締役は、「セキュリティ対策についてはいろいろな方法論が必要だと思う。安全な情報基盤プロジェクトが、未知のウイルス対策を論理的に検証してくれことを期待している」と、締結に向けた意義を説明。ソフトウェアの安全性や信頼性を保障する技術の研究を行う同プロジェクトに協力することで、日本のセキュリティ研究に積極的に寄与しようという姿勢をアピールした。

 また、安全な情報基盤プロジェクトの代表の米澤明憲氏(東京大学大学院 情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻)は、「税金を使って3年半研究してきたが、この成果を社会広範に生かすためには、Windowsプラットフォームに対応していかなければならない。また、Windowsのセキュリティを向上させたいという願望もある」と述べた。

 マイクロソフトの研究教育機関向けソースコードアグリーメントは、同社のシェアードソースイニシアティブの一環として設けられているもので、研究目的によるソースコードへのアクセス、複製、修正を許可しているほか、同アグリーメント締結大学間でソースコードレベルでの情報交換ができるなどの特徴を持つ。世界的にはマサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、ケンブリッジ大学など、125を超える大学との間で締結されている。

 安全な情報基盤プロジェクトに対しては、セキュリティ研究者の交流を行うほか、今後、研究教育機関向け知的財産(IP)ポリシーに関する提案も行う予定としている。

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[堀 哲也,ITmedia]

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