エンタープライズ:レビュー 2003/12/22 08:55:00 更新


レビュー:Red Hat Enterprise Linux 3のライセンス形態を探る (2/3)

RHEL 3ベースのProfessional Workstation

 Enterprise Linuxをベースにしたといっても、デスクトップの外観、表面上はRed Hat 9から目立つ変化は見られない。標準では一貫したBluecurveテーマの顔を見せる。パネルやメニュー内容もRed Hat Linux 9とほぼ同じだ。

 しかし商用OSへの転換を裏付けるように、サポートやライセンス形態が大きく変化した。まったくの新機軸というわけではなく、従来のEnterpriseファミリーのライセンス提供に準じつつ、それに新しく追加された形だ。

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画像5■Red Hat Linux 9と変わらないデスクトップ


 Enterprise Linuxは対応アーキテクチャや機能の違いでWS、ES、ASと3つのパッケージが用意されている。

 従来のRed Hat LinuxにもFTP版、市販パッケージとあったが、いずれもデスクトップ用途からサーバ用途、開発環境までと、幅広く対応できるパッケージであった。しかし、Enterpriseファミリはそれぞれの対象用途を絞り込み、パッケージ内容、サポートの内容が異なっている。

表1■Red Hat Enterprise Linuxファミリーの主要比較
  Red Hat Enterprise Linux AS Red Hat Enterprise Linux ES Red Hat Enterprise Linux WS
対象用途 データベース、大規模なアプリケーション、クリティカル環境 部門サーバ、DNS、Web/ファイル/バックアップサーバ デスクトップ用途、Webブラウズ、開発環境
Intel x86互換
Intel Itanium
×
AMD AMD64
×
IBM PowerPC
×
×
IBM メインフレーム
×
×
3CPU(HTT含む)以上への対応
×
×
8GB以上のメモリ対応
×
×
RHN利用権
1年置き更新
1年置き更新
1年置き更新
8時間(月〜金サービス)
24時間(365日サービス)
×
×
デスクトップパッケージ
サーバパッケージ
×
主要ISV検証
Apache、Samba、NFS
BIND、DHCP、YPSERV、OpenLDAPなど
×

 実をいうと、Professional WorkstationのCD-ROMメディア、パッケージ内容はEnterprise Linux WSと同じものだ。インストール中の画面はすべてEnterprise Linuxとして表示され、firstbootで表示されるライセンス承諾書もEnterprise Linuxのものである。そして、Red Hat Network(以下、RHN)への登録でも「Enterprise WS」として認識される。つまり「Professional Workstation」と「Enterprise WS」のインストール後の構成は等しいのだ。

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画像6■RHN上ではEnterprise WS 3として認識される


サポート面で顕れる「Enterprise Linux」と「Professional Workstation」の違い

 しかし、レッドハットのラインアップとしては両者を「異なる製品」として扱う。それは、おもにサポートやサービスの面での違いからだ。Enterpriseファミリの価格には年間の保守契約料(事務用コピー機などでみられる購入保守形態だ)が含まれる。そのため、入手経路は契約内容に合意した上でVARやOEMパートナーを経由する。一般の個人ユーザーが、従来のように店頭でパッケージを見ながら吟味、購入する、ということはできないわけだ。

 しかしこの販売ルートだけでは、パートナーとコンタクトしにくい個人ユーザーにはレッドハット製品を購入する門戸が閉ざされてしまう。そのために用意された店頭販売用パッケージがProfessional Workstationなのだ。

 一方で、正規ルートを経るEnterprise Linuxの価格は39,800円から、Professional Workstationは14,800円となっている。事実上同じものでありながら倍以上の価格差だ。これにはもちろん理由がある。

 Professional Workstationには1年間のRHN利用権(Update Entitlement)が付帯するが、これを「更新する」ことができない。Enterprise Linuxであれば5年間は保証される(Entitlementを更新する必要はある)。言い換えれば、従来のように「up2date」コマンドでパッケージ更新サービスを使いながら複数年使い続けるには、毎年新しいパッケージを購入しなければならない。

 また、翌年以降の「Professional Workstation」という名称のパッケージが、現在のようにEnterprise WS 3と同一でリリースされるという保証もない。単に現時点での構成が同じというだけなのだ。

rhelfig2.gif

画像7■Professional WorkstationとEnterprise Linuxのサポート形態を比較


 サポート面に関してもかなり異なる。Enterpriseファミリは各ベンダー、パートナーへ動作の検証や保証を求めることができる。しかしProfessional Workstationは、システムをアクティべートしてから1か月間、インストールの方法がサポートされるだけだ。Enterprise WSで動作するクリティカルなシステム、データベース、アプリケーションは、Professional Workstationでも動作するだろう。しかし、万一のトラブルが発生した場合、Enterprise WSであればベンダーからのサポートが受けられる。Professional Workstationでは「at your own risk」である。

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[渡辺裕一,ITmedia]

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