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2004/01/23 21:45:00 更新


SCOから連邦議員に宛てた535通の手紙:「北朝鮮はLinuxのせいでスパコンを手に入れる」

SCOの次なるターゲットは、連邦議会だった。連邦議員535人に対し、Linuxとオープンソースが米国の国益と安全に反するものだという手紙をCEOのダール・マクブライド名義で送りつけていたことが判明した。

 The SCO GroupはLinuxとの闘争の場を(連邦議会のある)キャピトルヒルまで広げてしまった。今月初め、同社は連邦議会議員535人に対して手紙を送付した。その手紙の中で、SCOはLinuxとオープンソースを、米国の安全と経済にとって脅威だと糾弾している。SCOは1月22日、このことを認めた。

 この手紙は1月8日付で送付されたもので、今週、オープンソースのロビー団体であるOpen Source and Industry Alliance (OSAIA) により、インターネット上に掲載された。この手紙は、Linuxオペレーティングシステムなどのオープンソースソフトウェアの影響によりコモディティ化が起これば、米国の経済に悪影響が出ることになり、オープンソースは商用製品に対して行っている輸出規制を回避してしまうと主張している。

 「北朝鮮のコンピュータ専門家は多数のパーソナルコンピュータを持っており、インターネット接続により最新版のLinuxを入手することができる。UNIXから盗用したマルチプロセッシング機能と組み合わせれば、短期間で事実上のスーパーコンピュータを組み上げることができる」とこの手紙には書かれている。

 この手紙にはSCOの最高経営責任者(CEO)であるダール・マクブライド氏が署名しており、「米国の議員に『Linuxに関係した著作権侵害』について理解を深めてもらうために」出されたものだとSCO広報担当のブレイク・ストーウェル氏は説明した。

  十数カ国がオープンソースの利用に関する法律の制定を検討しており、SCOは「米国がオープンソースソフトウェアに関して法律的な議論をするのは時間の問題だ」と考えていると、ストーウェル氏。

 Linuxの創始者であるリーナス・トーバルズ氏はLinuxに盗用されたコードが含まれているとするSCOの主張に反論している。

 「SCOは米国の輸出規制がソフトウェアに適用されると思っているらしいが、輸出規制が適用されているのはハードウェアにであって、ソフトウェアにではない」とトーバルズ氏はメールによるインタビューに答えた。「いずれにしても、核弾頭を設計する際にはコンピュータのオペレーティングシステムはあまり役に立たない。スーパーコンピュータがあったとしても、その上で動くソフトウェアがなければどうしようもない」と一蹴する。

 SCOはIBMを昨年3月に提訴。同社がSCOのUNIXであるSystem V UNIXに由来するソフトウェアコードをLinuxに移植したとして訴えた。SCOはその後、LinuxにはSystem Vの著作権を侵害する他のコードも含まれていると主張しているが、その主張を裏付ける証拠を提出していないと批判されている。

 事実、LinuxベンダーのNovellは、SCOがSystem Vのソースコードに関する著作権を所有していないと主張している。SCOは今週はじめ、この件に関する訴訟をNovellに対して起こした。

 SCOが議会に対し、オープンソースソフトウェアに対抗するロビー活動を行ったということは、自分自身の主張を信じていないということだ、とOSAIAの会長であるエド・ブラック氏は語る。「もしもSCOの主張が正しいのならば、Linuxを批判するよりも、採用を促進する側に回ったほうがいい。適法の要償があるのならば、たくさんの人が使えば、それだけ金を回収することができるはずだ」と同氏。

 ブラック氏によれば、SCOの動きの背後にはMicrosoftがいるという。WindowsオペレーティングシステムはLinuxの人気に脅かされているからだ。「ほとんどの人は、SCOがレドモンドにいる友人たちの傀儡で、Linuxに対して恐怖、不安、疑惑(FUD)をもたらそうとしていると考えている」と同氏。

 Microsoftは以前、Linuxとオープンソースソフトウェアを反米的なもの、癌だと呼んでいたが、昨年7月以降は戦略を変更し、Linuxに名指しで戦いを挑むのではなく、アナリストによるレポートとケーススタディーを利用している。

 昨年、Microsoftから数百万ドルをソフトウェアライセンス料として獲得したSCOは、ソフトウェアの巨人が戦略転換した時点から動き始めた、とブラック氏は指摘する。「彼らはMicrosoftのPR会社、訴訟専門会社となった。ある時点では彼らには製品を持っていたが、今ではそれはもう存在しない」と同氏。

 SCOはUnixWareとOpenServerソフトウェアの販売を続けているが、SCOは次第に活動の中心をLinuxとの対決に移している。SCOはライセンシング活動に力を入れてきた。先週、同社はIntellectual Property License for Linuxを米国の中小企業向けに初めて適用した。

 Microsoftは1月8日付の手紙に関してはまったく無関係だ、とストーウェル氏。SCOとMicrosoftはLinuxの知的所有権問題に関して話し合いを行ってきているが、SCOがMicrosoftのためにLinuxを攻撃しているというブラック氏の主張には反論する。「われわれは戦略会議などを行っているわけではない」と同氏。

 手紙の全文は、OSAIAのサイトにPDF形式で掲載されている。

 SCOは22日、1月23日にユタ連邦地裁で行われる予定だったIBM訴訟の法廷審問が、2月6日に延期されたことを明らかにした。裁判所はSCOが昨年12月に出された裁判所命令に従い、IBMが同社の知的所有権を侵害したことを示す有意な詳細を提出したかどうかの判断を下すと予想される。

 「双方とも法廷審問の延期を歓迎している」とストーウェル氏は述べた。

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