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2004/01/29 17:45:00 更新


「元凶はデータの分断化」──スイートへの固執を捨てたエリソンCEO

「Oracle AppsWorld 2004 San Diego」は2日目を迎え、Oracleの総帥、ラリー・エリソンCEOが午後の基調講演に登場した。「アプローチは違っても目的は変わっていない。元凶はデータの分断化」とし、スイートにこだわらず、新しい「Customer Data Hub」を売り込んだ。

 米国時間の1月28日、カリフォルニア州サンディエゴで開催中の「Oracle AppsWorld 2004 San Diego」は2日目を迎え、Oracleの総帥、ラリー・エリソンCEOが午後の基調講演に登場した。同氏は、スライドを1枚も使うことなく、「Oracle Customer Data Hub」の狙いや、彼の信念ともいえる「1つの真実」について一気呵成に畳み掛けた。

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会場から4度目の結婚を祝福され、「シングルインスタンスがコスト的にも有利で、しかも安全なんだ」と返したエリソン氏


 「7年前、あらゆる角度から360度の顧客情報が得られると鳴り物入りで登場したCRMだが、そんなことは全く実現できなかった」── システムごとに異なるデータベースが構築され、例えば、CRMとERPが連携していなければ、大切な顧客の情報はバラバラのままだ。

 まさに「聖杯」を求めて数年前に開発を始めたE-Business Suiteの元々のアイデアは、単一のデータベースの周りにアプリケーションを構築し、顧客の情報すべてを1カ所に格納することだったとエリソン氏は振り返る。

 もちろんデータベースを集約することは、コスト面でも有利だ。かつてOracleには、マーケティングやセール、人事、会計といったビジネスアプリケーションのために世界中で600のデータベースが稼動していたという。当然ながらバックアップやパッチの適用といった運用保守のコストも膨大だった。

 「顧客について分からなくするために多くのコストを支払ってきたのだ。それに気づくのに時間がかかった」とエリソン氏は自嘲する。

顧客の声がCustomer Data Hubを生んだ

 しかし、大企業ともなれば、既にSAPやPeopleSoftといったライバルたちのビジネスアプリケーションは導入されているだろうし、メインフレームなどで培ってきたカスタムアプリケーションも稼動している。E-Business Suiteを薦めても、それらをおいそれとは捨てられない。さらにITバブルの消失以降は、特に既存のITリソースを活用することが最優先の課題だ。

 顧客らから「カスタムアプリもあるし、他社のパッケージソフトウェアも既にある」という声を聞いたエリソン氏は、「ならば、Customer Data Hubはどうだろう?」と着想したという。

 Oracle Customer Data Hubは、E-Business Suiteの核ともいえるデータモデルを利用し、顧客に関するデータのリポジトリを構築する。通常のデータウェアハウスと異なり、ほぼリアルタイムで最新情報にアクセスできるようにしてくれるという。

 基調講演後、金融アナリスト向けのQ&Aセッションに臨んだエリソン氏は、1月中旬に実施した経営チーム再編の狙いを聞かれ、「すべてはカスタマーのため。これまで以上にカスタマーのために経営陣が時間を割けるのが狙いだ」と話した。Oracleが培ってきた優れたデータモデルをE-Business Suiteに閉じたままにせず、他社のパッケージアプリケーションやカスタムアプリケーションにも解放するという転換には、こうした顧客の声に耳を傾けるというエリソン氏の姿勢が反映されているのかもしれない。

 「顧客に関する情報すべてを1カ所に格納するという同じ目標を違うアプローチで達成できるはずだ」とエリソン氏。

 単一のデータベースに集約することが最もコストを削減できるのはもちろんだが、すべての顧客が同じアプローチを歩めない。

 「アプローチは違っても360度の顧客情報を提供するという目的は変わっていない。元凶はデータの分断化なのだ」(エリソン氏)

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[浅井英二,ITmedia]

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