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2004/02/04 14:57:00 更新


Oracle 10g出荷、エントリー価格が下がり中小企業にアピール

Oracleの価格体系変更は、MicrosoftのSQL Serverに対抗し、Microsoftから中堅企業と大企業部署レベルの顧客を奪おうとするもの。

 データベースソフト大手の米Oracleは2月3日、「Oracle 10g」の発売を発表した。中堅企業顧客の拡大を狙って価格体系を引き下げている。

 同社はOracle 10gのUNIX版とLinux版をリリースした。これに伴ってOracleは、データベース製品のエントリーレベル価格をMicrosoftのSQL Server 2000と同等のプロセッサ当たり約5000ドルに引き下げた。Oracle 10gのWindows版については「数週間」以内に完成の予定だという。

 Oracleはまた、「Real Application Clusters」(RAC)機能のエントリー価格をプロセッサ当たり1万5000ドルに引き下げた。これは同社ミッドレンジデータベース製品「Oracle Standard Edition」での価格。RACは、複数のサーバをつなぎ、これらで一つのアプリケーションを実行するのに使うクラスタリングソフトだが、これまではハイエンドの「Oracle Database Enterprise Edition」用の2万ドルのオプションしか提供されていなかった。

 Oracle 10gは、同社のフラッグシップ製品の重要な改訂版だ。数百台のサーバを使って性能と信頼性を高める「グリッド」機能が搭載されている。クラスタリングソフトのRACは、Oracle 10gのグリッド機能の基盤として機能する。

 Oracleは、値下げと製品強化により、Oracle 10gの管理を容易にし、中堅企業市場でのシェア拡大を目指す。同社は、中小企業市場を今後の成長の鍵を握る重要分野と見なしている。

 「当社は、まだ進出を果たしていないと感じるローエンド寄りの市場に、多角的アプローチで乗り込む」と、Oracleのグローバル価格/ライセンス担当副社長、ジャクリーン・ウッド氏は語る。

 同社は昨年10月、「Oracle Standard Edition One」という新製品を発表した。これはシングルプロセッササーバ向けに、プロセッサ当たり5995ドルで販売されている。Oracle 10g登場に伴う価格の変更で、プロセッサ2個までのサーバ向けでプロセッサ当たり4995ドルというのが、Oracleデータベースの新最低価格となる。

 IBMも昨年10月、DB2 Expressの価格体系に手を加え、2プロセッサまでのサーバ向けでプロセッサ当たり約4000ドルという選択肢を設けた。企業データベース市場はOracle、IBM、Microsoftが牛耳っており、支出額の大半はこれら3社に向けられている。

 IBMとOracleの価格体系変更は、MicrosoftのSQL Serverに真っ向から対抗し、Microsoftから中堅企業と大企業部署レベルの顧客を奪おうとするものだ。Microsoftのデータベース売り上げは、SQL Server上のパッケージアプリケーションを構築しているVARやシステムインテグレーターなどのパートナーに依存する部分も大きい。

 従来、直販でデータベースを売ってきたOracleは、パートナーとの関係改善に向けて取り組みを強化中だとしている。Oracleデータベースをアプリケーションに組み込んで中堅企業に売り込んでもらうための刺激策を用意、独立系のソフト企業やそのほかのパートナーを起用しつつあるとOracle技術マーケティング副社長のロバート・シンプ氏は説明している。

 Oracle 10gの技術強化により、Oracleデータベースはパートナーと中堅企業の両方にとって、より魅力的なものになるとシンプ氏。特に、データベースの管理、構成、保守を容易にする機能は「強力だが複雑」いうOracleに対する評価を塗り替えるのに役立つだろうという。

 「使いやすさと管理のしやすさで、市場に出ている事実上すべてのデータベース製品と戦っていける」(シンプ氏)

 Oracle 10gでは、診断、チューニング、変更管理のための既存の3種のエンタープライズ・マネジメント・パックを補完するものとして、データベースシステム設定用ツールのバンドル製品である「コンフィグレーション・マネジメント・パック」が導入される。これらのパックはいずれも3000ドル。

 管理のしやすさは、Oracleデータベースを使ってカスタムアプリケーションを構築している米アイオワ州のソフト開発企業Cisco Inc.にとっても重要なポイントだ。同社では、エンジニアがOracleのクラスタリング機能を習得するのに苦労してきたという。

 「Oracle 10gでは、クラスタリングの構成とセットアップの作業負荷が大幅に減少して、はるかに使いやすくなっている」とCisco Inc.最高執行責任者のマイク・マクダーモット氏は語っている。

 OracleはMicrosoftのエントリーレベルデータベースに合わせて価格を引き下げたが、Microsoftは、これに対抗して値下げする計画はないとしている。実際には、データベースのライセンスは一般に、定価からの大幅な値引きで販売されている。

 「(Oracleは)タダ売りだってできるだろうが、それでも顧客は、SQL Serverの方がOracleより総所有費用(TOC)が安上がりだということに気付くだろう。値下げ圧力は感じていない。怖がっているのは彼らだ」と、MicrosoftのSQL Server製品管理ディレクター、トーマス・リッゾ氏は言う。

 一方、Oracleのウッド氏は、オープンソースデータベース、とりわけMySQLやPostgreSQLからの価格圧力は感じていないとしている。だがMeta Groupのデータベースアナリスト、マーク・シャインマン氏は、特に中小企業顧客はオープンソースデータベースの導入を検討していると指摘する。

 「OracleはMicrosoftの牙城である中小企業市場に食い込もうと狙っているが、(中小企業は)オープンソースに目を向けていることを理解する必要がある」(シャインマン氏)

 同氏によると、トランザクション処理用の企業データベースの基本機能の多くはコモディティ化しつつあり、他社との差別化が難しくなっている。データベースソフトベンダーは今後徐々に、ビジネスインテリジェンスツールやデータウェアハウスツールなど、データ解析用のアドオン機能で競争していくことになるだろうという。

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[Martin LaMonica,ITmedia]

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