インタビュー
2004/02/23 14:01:00 更新


Interview:Dellモデルへの自信を語るデルCEOとロリンズCOO

オースチン郊外、ラウンドロックのDell本社キャンパスに創業者で会長兼CEOを務めるデル氏とロリンズ社長兼COOを訪ねた。二人はDellモデルへの自信を語り、その証として好調な業績を強調した。二人そろってインタビューに応じるのは極めて稀だという。

絶好調のFY04第4四半期決算(1月30日締め)を2月12日に発表したデル。テキサス州オースチンを襲った寒波もおかまいなしだ。製品出荷、売上高、営業利益および純利益、そして1株当たりの利益でも記録を塗り替えている。翌週、オースチン郊外、ラウンドロックの本社キャンパスに創業者で会長兼CEOを務めるマイケル・デル氏と社長兼COOのケビン・ロリンズ氏を訪ねた。約20年前、テキサス大学オースチン校の学生が始めたPCビジネスは、今や世界ナンバーワンだ。同社の成功は、そのユニークな「デル・ダイレクト・モデル」にあることはよく知られている。高品質と低コストを両立させ、顧客に最高の価値を提供するものだ。日本人プレスの共同取材に応じた二人はデルモデルへの自信を語り、その証として好調な業績を強調した。

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デルCEO(右)とロリンズCOO 二人がそろってインタビューに応じるのは極めて稀だという


── 1月30日に締めたFY04決算の営業利益率が、ほかのPCメーカーを大きく上回る8.6%となりました。今後も拡大する可能性があるのでしょうか。また、それを実現するための改善のポイントとは何でしょうか。

デル 他社が苦境に陥っている時期にあって、Dellは昨年度の8.0%から8.6%へと営業利益率を引き上げることに成功しました。これをさらに拡大していくのはチャレンジですが、今までの成功要因をさらに強化することで拡大する余地はあると思います。すなわち、「効率的なビジネスモデル」、サーバ、ストレージ、およびサービスといった「エンタープライズ向けの豊富な製品ラインアップ」、新しい国や市場への参入による「事業規模の拡大」、そして「生産性の改善」をさらに強化することによって収益性を高めることは可能です。ただ、Dellでは営業利益率よりも営業利益の絶対金額を重視しています(FY04の営業利益は記録更新となる前年比25%増の35億4400万ドルを達成)。

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「Dellも1992〜93年の失敗から多くを学んだ。若い人たちは過ちを恐れず、そこから何が重要なのかを学んでほしい」とデル氏


── 2年前、「600億ドル企業」を目指すという大胆な「売り上げ倍増計画」を掲げました。実現のためには事業ポートフォリオの拡大が必要だと思いますが、どのような判断基準で新規分野に参入するのでしょうか。

ロリンズ われわれの核であるPCとサーバの事業は、世界シェアが17%です。リーダー企業が30%から40%のシェアを占めている業界もあるわけですから、成長余地はまだまだあります。したがってDellは、この中核事業の成長だけでも600億ドル企業となる可能性はあります。

 さらにPCやサーバを核とし、その周囲に周辺機器、プリンタ、ストレージ、サービスの事業があり、大きな市場機会があります。これらについては、顧客らから「デルに参入してほしい」という声もあり、自然な流れといえるものです。

 このように中核事業に周辺事業を追加していくことによって600億ドル企業になるという目標を達成しやすくなるかもしれませんが、あくまでも中核事業はPCとサーバです。その事業拡大に貢献しない独立したイニシアチブは考えていません。

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1990年代前半、Dellは困難な時期を迎えたが、ロリンズ氏がコンサルティング会社のベイン&カンパニーから移籍し、短期間の立て直しに成功した


戦略の成否は利益が出たかどうか

── Dellは水平分散型事業で成功を収めていますが、日本のメーカーなどでは、差別化のために垂直統合型を再評価しています。

デル 確かにDellは垂直統合型ではありませんが、「バーチャル統合型」と呼べるモデルを採用しています。ビジネスモデルはさまざまです。日本企業のすべてが垂直統合を採用しているとも思えません。先ごろ、中国のサプライヤーパートナーのところを訪問しましたが、日本のメーカー向けに製品が作られていました。

ロリンズ 企業は、生産方式を例にとってもバーチャル統合型やフル統合型など、さまざまな戦略を採り得るわけですが、それが成功したか否かは最終的に利益が出たかどうかで判断されるべきです。われわれは自社のモデルに自信があり、その裏づけとして全世界で成長していますし、日本の市場においても11%近くまでシェアを伸ばしています。

デル われわれは前四半期(FY04第4四半期)、日本市場で前年同期比25%増(台数ベース)でシェア3位となりました。成長率は上位4社で最も高いもので、依然として競合他社はわれわれのやり方を模倣するのだと思います。

── Dellは最近、液晶テレビを投入し、コンシューマーエレクトロニクス市場に参入しました。新しい分野で勝算はありますか?

デル 新しい市場なので、われわれの成功は市場の成長・進化にかかっていますが、PCの役割が変わってきていることは追い風です。デジタルカメラやデジタルミュージック、デジタルテレビが登場し、PCはデジタルコンテントを保存したり、共有するための理想的なツールになっています。PCに接続する機器がたくさん出てくることによって、PCカンパニーにも大きなチャンスがめぐってきました。

ロリンズ この10年、テレビの市場は大きく変わったと思います。かつてはソニーやパナソニック、三菱らが市場を押さえていたわけですが、ディスプレイがCRTから液晶パネルに変わり、デジタル化によってPCのコンポーネントと同じものが使われるようになりました。新しい参入の機会が生まれ、Dellが参入するのも自然な流れです。液晶パネルに関して言えば、われわれは最大のバイヤーであり、最大のセラーです。効率的なDellモデルによって、高い品質の製品をこれまでにない低価格で提供できると思います。

サーバ、ストレージ、次々とエンタープライズ分野も標準化

── エンタープライズコンピューティングの市場でも同様の変化が期待できますか。Dellの強みが発揮できる標準化とコモディティー化はどこまで進んでいるのでしょうか。

ロリンズ サーバの領域では既に同様の変化が起こったといえるでしょう。数年前、Intelが高品質で低価格なサーバ向けプロセッサを投入したことによって、市場の変化が始まり、Dellも成長しました。日本でもサーバ事業が急成長し、首位に立つなど常に3位以内を維持しています。また最近では、高密度かつ高性能のラックマウント型サーバが注目されており、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野でも同様の変化が起きることでしょう。

 一方、近い将来、標準化とコモディティー化が進むとみられるのがストレージです。Dellは「PowerVaultシリーズ」のほか、EMCとのパートナーシップによって「Dell|EMC CXシリーズ」を提供しています。ここでも低価格の業界標準コンポーネントによってサーバと同じ変化が起こるでしょう。われわれはFY04第4四半期、ストレージ製品の売り上げを前年同期比で47%も伸ばしました。

デル 2003年(FY04)、Dellのエンタープライズコンピューティング分野における売り上げ規模は(全体の414億ドル中)85億ドルに達しました。市場の動きは、プロプライエタリな8ウェイ、16ウェイ、あるいは32ウェイといったSMP構成によるスケールアップではなく、から2ウェイ、4ウェイの小さなサーバを接続するスケールアウトに向かっています。大規模なデータベースやWebサイトも、巨大なサーバではなく、小さなサーバを数十台接続することによって運用できるようになりました。

 インターネット検索大手のGoogleだって、メインフレームのような大きなサーバを使っているわけではありません。小さなサーバを何千台もつなげて、強力なパワーを引き出しています。これがスケールアウトのやり方です。

 また、UNIXから、WindowsやLinuxへの移行も大きなコモディティー化の潮流です。

ロリンズ 「www.top500.org」をご存じでしょうか。スーパーコンピュータのトップ500リストを公開しているサイトですが、Dellのクラスタシステム(NCSA:National Center for Scientific Applicationへ納入、PowerEdgeサーバ約1400台で構成)は4位にランクされています。こうした最高峰の性能が求められる分野でも、Dellのサーバが利用されているのです。

デル Dellシステムのランクインが増えているように(現在、500中18サイト)、Intelアーキテクチャをベースとした業界標準のシステムが多くを占めるようになってきています。

── 競合他社はサービス事業を強化しています。Dellはどうでしょうか。

デル われわれは顧客主導型です。彼らはロックインされることを望んでいません。ベンダーは、プロプライエタリな技術によって、利益を得ることはできますが、顧客らは移行が難しくなってしまうし、サービスにもコストがかかってしまいます。しかも、サービスはそのベンダーからしか受けられません。Dellのシステムは、業界標準の技術を採用しているため、それほど多くのサービスを必要としませんし、さらにインストールやメンテナンスに関して顧客に負担がかからない製品にしたいと思っています。ここが他社とは大きく異なっています。



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[浅井英二,ITmedia]

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