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寒波も蹴散らすDelle-Day

» 2004年02月17日 15時36分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 記録的な寒波が襲ったテキサス州オースチンも、週が明けると、ようやく本来の暖かさが戻ってきた。薄手の着替えしか持って来なかった旅行者にとって太陽の恵みはありがたい。

 レストランのウェイターは、先週末には十数年ぶりという雪が降り、2インチ(約5センチ)も積もったと大騒ぎ。おまけにテレビや新聞は、テキサス・レンジャースの看板選手、アレックス・ロドリゲス(Aロッド)がニューヨーク・ヤンキースに移籍すると一斉に報じた。レンジャースは多額の年棒で彼を獲得したものの、この数年は最下位が指定席となっていた。「降れば必ずどしゃぶり」といったところか。

 今回の取材は、2月13日金曜日に絶好調のFY04第4四半期決算(1月30日締め)を発表したDell。寒波やAロッドの移籍もおかまいなしだ。製品出荷、売上高、営業利益および純利益、そして1株当たりの利益でも記録を塗り替えている。週が明けた2月16日、全米は「President Day」(ワシントン初代大統領誕生記念日)を祝って休日のはずだが、オースチン郊外のラウンドロックにある本社キャンパスは全くそのムードがない。

 ちなみにFY04通年の売上高が414億ドル、営業利益は35億ドルに達し、これも記録更新だ。同社は2002年4月、売上高を当時の312億ドルから倍増させるという大胆な「売り上げ倍増計画」を掲げたが、2年で100億ドルの上乗せに成功し、「600億ドル企業」へと着実に近づいている。

 約20年前、テキサス大学オースチン校で医学を学んでいたマイケル・デルのPCビジネスは、台数、売上高どちらも世界ナンバーワンになった。同社の成功は、そのユニークな「デル・ダイレクト・モデル」にあることはよく知られている。高品質と低コストを両立させ、顧客に最高の価値を提供するものだ。

 「スピードこそDellのアドバンテージ」と話すのは、北米の大企業顧客を担当するスティーブ・フェリス副社長兼GM。顧客のみならず、サプライヤーらともダイレクトな関係を築くことで、市場の変化に迅速に対応できるという。

 第4四半期の業績を押し上げたのも、こうしたデルモデルによって最高の価値を顧客にもたらすエンタープライズ製品の成長だという。テクノロジーのコモディティー化をにらみながら、標準化が始まったとみるや、ボリュームによるスケールメリットと高い生産性によるコスト削減によって一気にプライスリーダーとなるのがDellの手法だ。後手に回るライバルたちを尻目に、サーバやストレージシステムの分野でも価格を引き下げながら、しっかりと利益を確保できる体質を作り上げる。

 フェリス氏は、「2ウェイや4ウェイのIAサーバはかなり標準化が進んだ」とし、より一層の力を注ぐ一方、「8ウェイサーバとして企業が購入するプロセッサは全体の5%に過ぎない」と色気を出さない。

 そんな割り切りが奏効し、この第4四半期、PowerEdgeサーバの出荷台数は前年同期比40%の大幅増を達成した。EMCとの提携によってラインアップを拡大したストレージも売上高が47%も増加、通年で18億ドル規模にまで成長している。この10日には、Dell|EMCシリーズを一新したばかりだ。

 6カ月前、ストレージ担当の副社長兼GMとしてDellにやってきたダレン・トーマス氏は、「ストレージの技術も標準化が進んでいるし、顧客もそれを望んでいる。これは自然の流れで、われわれはリーダーとしてその流れを加速している」と話す。彼は15年間、Compaqでストレージ部門で要職を歴任したベテランだ。

 Dell訪問の2日目は、いよいよ創業者、マイケル・デルとのインタビュー。PCの将来を探ってみよう。

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