インタビュー
2004/03/16 21:22 更新

Interview:
「日本市場はVeritasにとって大きなチャンス」とジェレミー・バートンCMO

Veritasのジェレミー・バートンCMOは、マーケティングのグローバル化に努めてきた。Oracleの製品マーケティング担当上級副社長からVeritasに移って約2年、日本市場には大きなチャンスがあると話す。

 Oracleのプロダクトマーケティング担当上級副社長からVeritas Softwareのチーフマーケティングオフィサー(CMO)に移って約2年。ジェレミー・バートン氏はこの間、Veritasのマーケティングのグローバル化に努めてきた。今回の来日はVeritasのCMO就任直後以来、二度目。本社にいながら世界中を指揮することはできない、と笑う。最前線を大切にするのが同氏の信条だ。

 200億ドル企業を目指すOracleに比べると、同社の企業規模はまだ小さいが、「Veritasは成長するのに必要な要素をもっていた。経験のあるエグゼクティブが加わったことで、Oracleの規模に早く近づけるだろう」と自信を垣間見せる一面も。

ジェレミー・バートン氏とスティーブ・レオナルド氏

バートンCMO(右)と、インタビューに急遽参加してくれたアジアパシフィック担当上級副社長のレオナルド氏(左)


 ベリタスは今春、各種キャンペーンと連動するマーケティングシステムを導入し、マーケティングツールと営業プロセスが連動できるようにする準備を進めている。このシステムは、今年の攻めの営業戦略をサポートすることになる。

――今回の来日の目的を教えてください?

バートン 今週、アジアパシフィックリージョンのマーケティングマネジャーを集めてミーティングを行っています。私がVeritasに来て以来、マーケティングのグローバル化を進めています。広告、需要喚起、ビジネスをサポートするITシステムをグローバルなものにしていこうとする取り組みです。

――昨年10月にシンガポールにアジアパシフィック地域本部を設置し、日本もその一部としていますね。日本市場をどのように位置付けているのでしょう?

バートン アジアパシフィック担当のスティーブ・レオナルドの言葉を借りれば、アジア太平洋地域の「ビッグ・ブラザー」になるのが日本です。本社に身をおく立場としては、日本は経済大国であると認識していますし、アジアパシフィックが強力なのも、理由の一つは日本が強いからだと考えています。マーケットとしての日本も強いし、ベリタスジャパンも非常に力があると考えています。

 Veritasに来る前にはOracleで仕事をしていましたが、Oracleでは日本をアジアパシフィックの一環としていたり、別リージョンとしたりしていました。しかしながら、この地域で最も力を持っているのが日本であったことに違いはありません。そういう意味で、日本にはさまざまな分野でリードしてもらいたいし、当然のことながらベリタスジャパンには売上の面でぜひともリードしてもらいたいと考えています。

レオナルド シンガポールに地域本部を置いた理由は、そもそもオフィスがシンガポールにあったこと、人事担当の副社長もオペレーションのリーダーもそこにいたことが理由です。また、シンガポール政府は税制上の優遇措置をとっており、米国企業が改めて法人を置くにはやりやすい環境がありました。カスタマーにおいても二つの地域をまたがっていることが多く、アジアパシフィックと日本を統合することで、共有し学びあうことが重要だと判断したのです。

――日本において、Veritas製品は使われているけど認知されていない、という悩みを抱えているようです。

バートン これはVeritasにとって大きなチャンスです。経済大国、日本という大切な市場に、成長の余地がまだまだあるというわけですから。それから、Computer Associates(CA)など日本市場で成功している企業はヨーロッパなどでも成功しているケースが多いのも特徴です。こういった競合の例からも日本市場を捉えることは重要になってきます。

 そういう意味で、今年はワールドワイドで2500万ドル規模の広告キャンペーンを展開します。これは米国以外の地域での広告予算は昨年の倍になる予算です。ただ、広告というのはビジビリティを向上するための1つの手段でしかありません。エンタープライズソフトウェア分野では、私たちが直接カスタマーに話をしにいきます。特に日本においては、ベリタスの価値をカスタマーに直接話にいく人員を増やします。

 またサービスやサポートもブランドを周知していくには大切なポイントです。マーケティングへの投資ではあるには変わりないのですが、セールスやサポートに及んでいく投資になります。カスタマーのさまざまな接点で、ビジビリティを高めていきます。

レオナルド カスタマーを理解し近づくための投資はしていきますが、サービスやサポートにつきましてはパートナーを通して行っていくことには変わりありません。

――昨年発表したユーティリティコンピューティングへのコミットですが、日本では未出荷の製品を既に米国で出荷しています。日本よりも進んでいるのではないかと思いますが、進捗状況はいかがですか?

バートン 米国においてはまだその価値を説明している段階です。5、6年前のインターネット登場時期や、さらにその前のクライアント/サーバモデルが登場したときには混乱した時期がありました。ユーティリティのモデルもこの例外ではありません。数年はこの状況が続くと思います。

 米国でのユーティリティコンピューティングの認識は、セルフマネジメントやセルフヒーリングのシステムというものではなく、どちらかというと透明性の確保や説明責任といったものだと認識されています。つまり、戦術的にはセルフヒーリングのシステムを用いてコスト削減を図るわけですが、ITの戦略としては、アプリケーションを各ビジネスユニットに提供している面で透明性を確保し、説明責任を達成していくということです。

 このモデルの採用については、カスタマーによってまちまちです。アプリケーションごとにサービスレベルを設定して提供して課金まで行っているところもあれば、ストレージインフラの割り振りから行っているところもあります。あるいは、まだバックアップが失敗しないためにどうしたらいいかと考えているような企業もあります(笑)。

 ユーティリティモデルは今からでも始められるものです。ところが、企業の方では、戦略と今何を買うかという部分がどうも結びついていないようなのです。今年の「VERITAS VISION」カンファレンスでは、採用の度合いを理解しニーズとのマッピングを行うところがゴールになります。

――米国で月曜日に発表されたストレージソフトウェア市場のIDC最新調査では、レガートを統合したEMCが躍進を見せているようです。どのように見ますか?

バートン IDCの調査の中では、ハードウェアと一緒になって売られるアレイベースソフトエアも含まれています。しかし、ノンアレイベースのマーケットシェアを見れば、Veritasが逆に30%でEMCが17%というと反対になります。四半期に一度やるIDCの調査は、アレイベースとノンアレイベースをいっしょくたにして出しています。例えば、ホンダの自動車で言えば、自動車を買えばエンジンマネジメント用のソフトウェアも付いてきますので、ホンダもエンジンマネジメントソフトの販売で好位置につけるというものです。

 レガートは比較的マーケットシェアがあるようですが、はっきりいって年々マーケットシェアは落ちてきていますし、この傾向は続くと思っています。今は新しいものづくめで持ちこたえていますが、来年あたりはかなり厳しくなるだとうと予測しています。

関連記事
▼ストレージソフトウェア市場が拡大――IDCの調査で明らかに
▼駒はそろった、ベリタスが攻めの営業戦略

関連リンク
▼ベリタス

[聞き手:堀 哲也,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.