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2004/04/08 21:12 更新


「ライバルを2〜3年リード」とOpswareのアンドリーセン氏、自慢のIT自動化技術を語る

今から10年前、Mosaicで世界に衝撃を与えたマーク・アンドリーセン氏。「Webブラウザの開発からはもう引退している」と話す彼だが、インターネットの普及に伴う課題の解決に今も取り組んでいる。

 かつて「インターネットの寵児」という名を欲しいままにしたMosaicの開発者が来日した。そのファッションは遥かに洗練されたが、機関銃のような早口は相変わらずだ。4月8日、カリフォルニア州サニーベールに本社を置くOpswareのマーク・アンドリーセン会長が都内のホテルで講演を行った。

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裸足でタイム誌の表紙を飾ったアンドリーセン氏も今やスーツ姿がよく似合う歳(33)に


 1993年、イリノイ大学在学中だった彼は、Webの世界を自由にサーフィンできる世界初の汎用型Webブラウザ、Mosaicを世に問うた。もちろん、Webそのものはそれまでにも存在したが、だれでも簡単に使えるMosaicは興奮を持って迎えられ、インターネットの世界を大きく変えた。

 シリコングラフィックスの創業者、ジム・クラーク氏と共同で設立したネットスケープ・コミュニーションズは1999年、AOLに買収されたが、それでもまだ20代だったアンドリーセン氏はOpswareの前身であるアウトソーシング会社、ラウドクラウドを起業。以来、インターネットの爆発的な成長によって需要が見込まれるであろうITインフラの自動化ソフトウェア「Opsware」の開発に取り組んできた。同ソフトウェアは、サービスの構成、配備、変更、拡張、セキュリティ確保、復旧、統合、監査、サーバ/ビジネスアプリケーションの割り当て変更などを含むITのライフサイクル全体を自動化してくれるという。

 前日の7日にはNTTコミュニケーションズが、Opsware最大のパートナーであるEDSの日本法人と提携し、Opswareを採用して6月下旬から新しいホスティングサービス「AGILIT」(アジリット:Agile + ITの造語)を提供することを明らかにした。ちなみにNTTコミュニケーションズは昨年3月、米EDSとはITおよびコミュニケーションサービス分野でグローバルな業務提携を発表している。

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NTTコミュニケーションズの与沢和紀ITマネジメントサービス事業部サービス開発部長(右)とがっちり握手


管理コスト、セキュリティ、品質に課題

 かつて日々改良が進むMosaicをダウンロードしてWebサーフィンを楽しんだユーザーはほんのひと握りだったが、今や世界のインターネットユーザーは10億人に届こうという勢い。しかも、ブロードバンドやワイヤレスLANの進展は、グローバルなネットワークに接続されるデバイスの多様化を加速している。

 「この数年、景気が低迷する中にあっても一貫してインターネットユーザーは増え続け、今や経済を担うまでになった」とアンドリーセン氏は振り返った。

 しかし、それに伴い、IT業界が直面する複雑さも加速している。需要にこたえるべく増え続けるインテルアーキテクチャのサーバは、2007年には世界で800万台近く出荷されるとみられている(IDC予測)。

 「ここまでは良いニュースだが、(管理)コスト、セキュリティ、品質(可用性)という3つの問題に直面する。これは悪いニュースだ」とし、アンドリーセン氏は、特にハッカーによる攻撃を例に挙げ、幾何級数的に脅威が増大していることを指摘した。

 1999年にアウトソーシング会社としてスタートしたラウドクラウドは、100%の稼動保証を売り物に、ニューズコーポレーションといった大手顧客の獲得も成功した。

 「かつては同じクルマを買っても当たり外れがあった。性能が良かったり、悪かったり。今のコンピュータシステムもそれと同じ。ラウドクラウドならそれを解決できた」(アンドリーセン氏)

 2002年には、ホスティング事業をEDSに売却、ソフトウェアベンダーとして事業転換を図り、同時に社名をソフトウェアと同じOpswareに変えた。

 「ITの運用保守を自動化し、品質を高めるという分野では、さまざまなプレーヤーが凌ぎを削っている。そこに問題があり、それを人々が認識しているからだ。競争は厳しいが、われわれはラウドクラウド以来5年間、自動化ソフトウェア技術を開発してきており、他社を2〜3年リードしている」と彼は新しい事業にも自信を見せる。

 NTTコミュニケーションズの「AGILIT」サービスは、かつてラウドクラウドが米国で提供していたのと同様、SLA(Service Level Agreement)を100%保証するユニークなもの。もちろん、障害を100%抑え込むのは不可能なため、障害の検知から料金の返還に応じ、さらに時間が経過するごとに料金変換率を高めていくという。

 Opswareは既に企業向けに同社のソフトウェアを販売するパートナーとしてNECと提携しているが、ホスティングサービスを提供する今回の提携とは補完関係にあるとしている。

 「今後もパートナーや顧客企業の成功のために優れた技術を開発していくことが、結果的にマーケットでの地位を築いてくれる」(アンドリーセン氏)

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[浅井英二,ITmedia]

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