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2004/04/12 22:11 更新


B2Bコラボレーションの可能性

刻々と変化する消費者の嗜好やニーズに応えていくためには、従来以上に柔軟な商品展開を効率的に行うことが必須となっている。これを実現するのが、迅速かつ正確な情報流通を前提とした、自社と取引企業をつなぐ企業間のコラボレーション(協業・協働)である。本稿では、事例を踏まえながら、コラボレーションの重要性と今後の展開について述べる。

なぜB2Bコラボレーションが必要なのか

 現在の流通業は「コラボレーション」の時代を迎えている。激変する市況のなかで、自社だけの努力で効率化のメリットを生み出すことはもはや困難となっており、取引企業との有機的な連動なくしては効率化が実現されないからである。

 流通業における企業間連携では、受発注EDI(電子データ交換)による業務効率化が先行し、多くの企業がそのメリットを享受してきた。しかし、メリットはあくまで一部分であり、商品企画・販促計画・販売実績・流通在庫などさまざまな情報を共有することで、より一層のメリットが得られるはずである。とは言え、この部分の情報共有は、各社独自のノウハウは出さないなど多くの障壁があり、十分に行われているとは言えない。効率化メリットを生み出すためには、従来以上に企業間でのコラボレーション強化が欠かせない条件となっている。

商品マスターからみた業務サイクル

 流通業でも、商品の取引と連動してさまざまな商取引情報のやり取りが行われている。商品の開発から販売までの一連の業務の流れを以下に示す(図1参照)。

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図1
  1. 商品の企画・立案
  2. 商談・商品の選定
  3. 商品マスター登録
  4. 発注・納品
  5. 販売
  6. 販売実績の検証・販売計画の修正
  7. 商品の改廃

 商品に関係する各企業の業務は、このサイクルによって成り立っているため、コラボレーションによるさらなる効果の向上が期待できる。

「BizMart」によるコラボレーション事例

 NRI(野村総合研究所)では、インターネットを駆使したB2Bソリューション「BizMart」を提供している。

 ここでは、BizMartを活用したコラボレーションの展開事例を紹介する。

(1)商品マスターの共有

 商品マスターにおいて、売り手(卸売)と買い手(小売)は、同一商品の共通項目についてそれぞれで登録作業を行っている。コラボレーションの実践として、たとえば商品の基本項目は売り手側で登録作業を行い、買い手側は補足情報・付加情報のみ登録作業を行うなど、マスターを共有することによって双方の登録業務が簡素化され、効率化が可能となる。

 マスターの共有による入力項目の標準化は、登録作業の省力化を可能にするだけでなく、スピーディーな商品の展開に貢献し、管理コスト削減を商品原価へ還元するなど、その有用性は大きい。流通業におけるGDS(商品情報同期化。詳細は別稿・後日掲載)なども、こうした観点から推進されている。

(2)販売実績データの共有

 流通業の保有する販売実績データは、自社内の販売動向分析には十分に活用されている。しかし、商品の需給バランスを最適化していくためには、取引先である商社や卸売、さらにはメーカー各社にまで実績データを提供することが必要である。実際の購買動向・実績値を共有することで、タイムリーに生産調整や供給改善を行うことが可能となるからである。

 ただし、このような情報・データの共有は一定の条件の下で制限および管理して行わなければならない。たとえば、販売実績データなどは、自社取り扱い商品に限定して開示・共有することにより、情報漏洩を防ぐことができる。

 コラボレーションには、強固な情報セキュリティ基盤と、安全な運用管理が必須である。その上ではじめて、情報共有による情報流通の効率化が実現できるのである。

B2Bコラボレーション拡大のために

 以上のように、コラボレーションの実践には、業務を分断しないような仕組みが重要である。業務システムや社内グループウェアと、外部情報共有ツールが1つのアプリケーション上で集中管理されることで、情報の加工も容易となり、活用展開が飛躍的に拡大されていくからである。

 SCM(サプライチェーン管理)やCPFR (協働計画・需要予測・補充活動)の発展もまた、これら情報の効率的な共有なくしては成り立たない。B2Bソリューションは、業務の流れに沿って結び付き、連携・連動するものでなければならない。

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[橋本進、綿貫智文,野村総合研究所]

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