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2004/04/22 20:16 更新


ついに出たLinux保険

ニューヨークに本社を置く新興企業のOpen Source Risk Management(OSRM)が、SCOによる訴訟からLinuxユーザーを保護することを目的とした保険プログラムを発表した。

 SCO Groupは主要なベンチャーキャピタルを失う羽目になったが、それとほぼ時を同じくして、同社の訴訟作戦にとどめを刺すかのように、Open Source Risk Managementという新興企業が、SCOによる訴訟からLinuxユーザーを保護することを目的とした保険プログラムを発表した。

 ニューヨークに本社を置くOpen Source Risk Management(OSRM)によると、IBMなどのLinuxベンダーや、DaimlerChryslerなどのLinuxユーザーに対するSCOの訴訟に続いて、今後SCOをはじめとする企業がオープンソースソフトウェアに対して知的財産権を主張するのは「ほぼ確実」だという。

 4月19日に同社初の製品を発表したOSRMでは、「ベンダーに依存しないオープンソース保険は、第三者のクレームからユーザーを保護するもの」と説明している。同社によると、所有権共有型ソフトウェアは法的に「極めて脆弱」であり、不運なユーザーが特許侵害で訴えられた場合、1件に付き15万ドルの賠償金や300万ドルの弁護費用を支払わされる可能性もあるという。

 しかし同社が示した恐怖のシナリオは、快く受け止められていないようだ。この製品に関してオンライン掲示板に書き込まれたメッセージの論調は、「ユーザーは何もコピーしたわけではないので、著作権侵害に問われる筋合いはなく、責任を問われるのはベンダーだけだ」というもの。

 Black Sheep Researchのディレクター、マーティン・ブランプトン氏も同じ意見で、「Hewlett-Packard(HP)などの企業が、自社のLinux製品を使用したことで訴えられた顧客を自動的に保護する措置を提供しているのもそのためだ」と付け加えている。

 ブランプトン氏はOSRMの保険について、「面白いアイデアだが、受け入れられるとは思えない。保険の対象となる人々が実際にリスクにさらされていないからだ」と話している。

 「SCOがIBMやHPに対する大規模な訴訟で勝利するまでは、彼らが個人ユーザーを提訴する可能性は皆無に近い。人々にライセンス料金の支払いを求める可能性はあるが、訴訟にはならないだろう。SCOは普通のユーザー企業を狙うことはない」とブランプトン氏。

 「投資会社のBayStarがSCOに対して2000万ドルの資金の返却を求めているが、これはSCOが一連の訴訟で大金を手にする見込みがなくなったとBayStarが判断したからだ。この動きは、内情に詳しい人間が、SCOの訴訟に勝ち目はないという懐疑的な人々と同じ考えを抱いていることを強く示している」(同氏)

 BayStarの動きは、SCOの企業イメージにとって新たな打撃となるもので、費用がかかる法廷闘争を戦うという同社の計画にも支障を来しかねない。

 BayStarがSCOに関心を示した背景にはMicrosoftの存在があることが先月明らかになったことで、SCOに対する同ベンチャーキャピタルの投資がやり玉に挙げられた。SCOは以前、BayStarとの契約にMicrosoftは何の関係もないと主張していた。

 また、IBMが裁判所に対して、これまで同社が開発したすべてのUNIXバージョンについて知的財産権を主張したSCOの申し立てを却下するよう請求したことも、SCOにとって打撃となった。IBMでは、SCOがその主張を裏付けるのに十分な証拠を提出していないことを確信しているとして、UnixWareの特許侵害を申し立てる反訴を直ちに提出した。

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