コラム
2004/04/30 22:30 更新

国内代表者に聞くオープンソースの今:
Fedora Coreをより扱いやすく、「Fedora JP Project」重松直樹氏コラム

Red Hatの手を離れ、Fedora Projectというコミュニティベースでの開発形態に移行したLinuxディストリビューション「Fedora Core」。日本でもFedora JP Projectが設立され、今後の活躍が期待される。

Linuxチャンネル連載「国内代表者に聞くオープンソースの今」。ここではFedora Projectの日本語環境を整えることを目標に、Fedora Projectと連携して日本で活動する団体「Fedora JP Project」を取り上げる。2004年2月10日に設立された同団体でリーダーとして活動されている重松直樹氏にコラムを執筆いただいた。


Fedora Projectの成り立ち

 Fedora Projectが出来るまでは、Red Hatには、サポートのつかない無料版のRed Hat Linux(RHL)と、サポートつきで、製品サイクルの長いRed Hat Enterprise Linux(RHEL)の2種類が存在していた。

 RHLのほうは、パッケージアップデートが1年で打ち切られるのに対して、RHELのほうは、5年間提供されることになっていた。個人ユースはRHLで、ビジネスユースはRHELという様に、用途によって、RHLとRHELを使い分けているユーザーもいたようだ。

 そんな中、Red Hatは、RHLを自社だけで提供することにビジネス的にメリットを見出せないでいた。言わずもがな、半年に1度バージョンアップされるRHLのアップデートパッケージを提供し続けることは、相当な重荷になっただろう。また、違う側面として、外部にも優秀な技術者がおり、彼らの力を取り込みたいという思惑もあったようだ。

 そのころ、Fedora Projectの前進となるFedora Linux Projectは、RHL用の追加ソフトウェア集を提供していた。ソフトウェア管理の仕組みとして、rpmパッケージを効率的に扱えるyumやaptといったパッケージ管理ツールに対応するレポジトリを提供していた。日本では余り知られていなかったが、海外では多くのユーザーが利用していた。

 Fedora Linux ProjectのリーダーだったWarren Togami氏は、プロジェクトを進行するにつれて、RHLをDebianのようなコミュニティベースでの開発形態に移行したいと考えるようになり、Red Hatにプロジェクト統合の話をもちかけた。

 Red Hatも前述のような状況だったので、両者の思惑が一致し、Fedora Projectができたのである。そして、最初の成果物として、RHL 10としてリリースする予定だったバージョンを、Fedora Projectから、Fedora Core 1としてリリースした。

Fedora JP Projectとは

 Fedora JP Projectの母体となったのは旧RHLメーリングリストである。このメーリングリストは、筆者が1999年に作ったメーリングリストで、RHLの爆発的な普及に伴い、一気にメンバーが増えていった。元々は、筆者がRHLに興味を持っていろいろ触り始めた時期に、仲間が欲しくて作ったものだ。

 昨年秋に、RHLがFedora Projectに移行されたタイミングで、日本でもコミュニティができるだろうくらいに考えていたのだが、一向に作られる気配がない。そんなときに、Red Hatの方とお会いする機会があって、日本でもそういったコミュニティができることを望んでいるということを聞き、一念発起して、メーリングリストで呼びかけて、wikiで情報を集めていた上鍵さんや翻訳を進めていたメンバー、Red Hatの開発者などでFedora JP Projectを結成した。

 現在ではユーザメーリングリストに登録している人が約4300名、開発メーリングリストが200名弱。スタッフメーリングリストは150名弱で、10名くらいの方が活発に活動している。

 活動内容としては、翻訳が中心になっていて、ソフトウェアのメッセージカタログの翻訳やウェブサイト、各種ガイドの翻訳などを進めている。ソフトウェアのメッセージカタログについては翻訳率100%だ。他のものについては、これからあたる予定である。

 また、日本独自のドキュメントの作成も行っている。斉藤博文氏によってまとめられたPDF文書が、こちらに置いてある。Fedora Projectの歴史から、インストールガイド、各種アプリケーションガイドなど充実した内容となっているので、ぜひ一読いただきたい。

 開発面に関しては、まだ動き出せていないのが現状だ。Debianの場合、日本からも開発者が多く参加しているので、これからお手本にしていきたいと思っている。そろそろリリースされるFedora Core 2に向けては、テストリリースを検証するなどして、情報を集めているところだ。本家のバグジラは、一般ユーザーには少し敷居が高いということで、日本語バグジラの提供も予定している。この部分は、もじら組でも活動されているゆきちさんが作業にあたっている。

 Fedora JP Projectは、Fedora Projectとは独立した活動ではあるが、Fedora Projectに協力、コミットしていく予定である。活動に興味のある方は、Fedora JPのサイトを参照して頂きたい。

Fedora Core 2最新情報

 最後に、Fedora Core 2の最新情報を簡単に説明しておきたい。大きな変更点としては、Linuxカーネル2.6の採用とSELinux機能の統合だろう。Fedora Coreは、RHLと同様に最先端のソフトウェアを搭載していくというポリシーを引き継いでいる。また、国際化が進むデスクトップ系では、UTF-8化に続き、入力メソッドがkinput2からIIIMFに変更されている。これらを含めた変更点には次のようなものが挙げられる。

  • Linuxカーネル2.6を採用
  • SELinux機能の統合
  • GNOMEが2.6へバージョンアップ
  • KDEが3.2へバージョンアップ
  • gcjベースのJavaソフトウェアの搭載(Ant、Tomcat、Jakarta、Eclipseなど)
  • AMD64やSPARCなど他アーキテクチャへの移植
  • 入力メソッドIIIMFの採用
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関連リンク
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