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2004/05/10 14:47 更新


POWER5で64ビットサーバ市場の覇権狙うIBM

IBMは、低迷する半導体事業の業績回復をPOWER5プロセッサに託している。同社はPowerラインのライセンスでオープン路線を打ち出したほか、製造施設を増強して自社の組織を改編。態勢を整えてPOWER5をデビューさせる。(IDG)

 IBMは、次世代のハイエンドPowerプロセッサの準備に精力的に取り組んでいる。このプロセッサでは従来の世代とは違う設計アプローチを採っているが、「複数のアプリケーション環境とOSを同時に稼働できる大規模で高速なサーバを実現する」という目標は同じだ。

 IBMの64ビットプロセッサシリーズの最新版となるPOWER5は、来月ミッドレンジサーバ2モデルに搭載されて初披露される予定。POWER5の特徴には、新しい同時マルチスレッディング技術やサーバパーティショニングの強化などがあり、アナリストはこれにより35%の性能向上が見込めるとしている。

 初のPOWER5搭載サーバは最大4プロセッサに対応。IBMは年内に、最大32個のデュアルコアプロセッサを搭載し、最大で128のスレッド(アプリケーションワークロード)を実行できるPOWER5サーバを発表する計画だ。これはIBMのハイエンドサーバ「p690」(コードネーム「Regatta」)の4倍に当たる。キャッシュをプロセッサのさらに近くに設置することでプロセッサ内のトラフィックを減らし、さらにメモリコントローラをプロセッサに組み込むことで性能を向上させられるとIBMは説明している。

 新ハイエンドプロセッサ設計を実現するため、IBMは新たな半導体製造施設を用意。同社は昨年25億ドル以上を投じ、ニューヨーク州イーストフィッシュキルの半導体製造・開発施設を増強している。

 施設の刷新後、IBMは企業組織の再編に乗り出した。IBMは1月、半導体事業を中心とする技術部門と、Powerプロセッサ技術を主に採用する自社のシステム部門を統合する計画を発表した(1月29日の記事参照)。

 新しいプロセッサ技術、増強した施設、新たな企業構造をもって、IBMは右肩下がりの半導体事業の売上を回復させる考えだ。IBMの技術部門の売上高は2003年、前年比27%減の29億ドルだった。2002年には同24%減の39億ドル。IBMは年次報告書で2003年の落ち込みについて、2002年にマイクロプロセッサ事業の焦点をハイエンドプロセッサ、ASIC、標準製品に据え直したことや、OEM顧客からの需要が低調だったことが原因だと説明している。

 また、IBMは半導体開発をめぐる姿勢も変え、Powerラインのマイクロプロセッサをサードパーティに積極的に公開し、開発者が同社のマイクロプロセッサコアを使った製品を構築するのを支援している(4月1日の記事参照)。同社はサードパーティのベンダーに対して、Powerの設計や半導体製造技術のライセンスを受けることを勧めている。

 Motorola、AppleがIBMのPowerシリーズを採用していることから分かるように、IBMはある程度の成功を収めている。だが、同社はほかの企業にも自社技術を売り込み、一層の成功を手中にしようともくろんでいる。

 Illuminataの上級アナリスト、ゴードン・ハフ氏によると、IBMは過去2年間にわたって、組み込み用プロセッサや技術ライセンス、PowerPCラインおよびサーバ用ハイエンドPOWERプロセッサまで、Powerシリーズ全体への注目を高めようと努めてきた。「IBMは自社技術のライセンス先がつくる生態系を拡大しようと本気で取り組んでいる」と同氏。

 IBMは最近、かなりの成功を収めている。同社は先月、ネットワーク・ストレージ用チップ企業のApplied Micro Circuits Corporation(AMCC)と契約を結び、AMCCにPowerPCプロセッサ3モデルを売却し、Powerアーキテクチャのライセンスを供与すると発表した(4月14日の記事参照)。このほかソニーからも新規契約を獲得、デジタル家電製品向けにPower技術をライセンス供与している。

 IBMは最終的に、まだ明らかなプロセッサベンダーのいない64ビットプロセッサ市場を獲得するために、企業の総力を挙げて取り組もうとしているとハフ氏は指摘する。64ビット市場のプロセッサシェアをめぐっては、AMD、Intel、Sun Microsystemsなどがしのぎを削っている。「Powerアーキテクチャをオープンにすることは、Powerを一般的な開発対象に変え、ひいてはPower搭載サーバの魅力を高めている」とハフ氏。

 社外の人間をPowerアーキテクチャに習熟しやすくするため、IBMは3月、サードパーティへの技術情報の提供を増やし、プロセッサの設計やテストを容易にする新プログラムを発表した。同社はPowerプロセッサ開発者向けのポータルを立ち上げ、彼らのシステムがPower技術とどのように連係するかをシミュレートするソフトツールの無償配布を開始、顧客によるプロセッサのカスタマイズを支援する設計センターを世界各地に開設した。

 知的財産を開放する公算が低いライバルのIntelから、IBMを差別化する戦術だと観測筋は評価する。「PowerはIntelプロセッサよりもオープンなアーキテクチャだ」とハフ氏は述べつつも、Intelはほかのベンダー製システムに自社のプロセッサを採用させることにおいてIBMよりも成功を収めていると付け加えた。

 POWER5は、新たに統合されたシステム・技術部門にとって最初の成果の1つ。IBMのミッドレンジサーバ「iSeries」(旧称「AS/400」)に搭載されて披露される。同プロセッサはいずれ、ほかのサーバラインにも組み込まれる。

 同社は先週、POWER5を搭載した初のi5サーバ2モデルを発表した(5月6日の記事参照)。ワンウェイもしくは2ウェイのi5 Model 520は1万ドルから、2ウェイもしくは4ウェイのi5 Model 570は8万5000ドルから。

 オフィス設備、アプライアンス、自動車業界向けに配線部品を供給する複合メーカー、Group Dekko Internationalは、POWER5をいち早く導入する企業の1社。同社は新アプリケーション用開発環境に利用しているシングルプロセッサのi820サーバを、新しいPOWER5搭載i5サーバに置き換える計画だ。Group Dekkoの狙いは、プロダクション環境で乗り換えを行う前に、開発サーバで新技術になじむことだと同社のIS担当副社長クリス・エドワーズ氏は話している。

 アップグレードに踏み切る大きな理由はパフォーマンスにある。「このマシンで行うコンパイル、テスト、トレーニングといったすべての作業に関して、求められる性能要件はかなり厳しくなっている」とエドワーズ氏。さらに同社がより多くのメモリとプロセッサを必要とするJavaアプリケーションを展開するにつれ、パフォーマンスはもっと大きな問題になるという。

 IBMがさらに大規模なi5サーバを用意すれば、DekkoはERPアプリケーションとLotus Notes環境を搭載した12ウェイのi840プロダクションサーバを、さらにハイエンドのPOWER5マシンに乗り換える計画という。

 POWER5アーキテクチャによって、Group Dekkoはプロセッサの数を減らしつつ、パフォーマンスを高められるだろうとエドワーズ氏は話す。「POWER5搭載の4ウェイサーバは12ウェイサーバよりも性能面で勝ると思う。IBMのS-Starクラスのプロセッサに関する経験から言うと、現在のプロセッサ1個当たりのパフォーマンスと比べ、2〜3倍の性能を手にすることができると思う」

 POWER5のパフォーマンス向上をもたらす要因の1つに、マルチタスク処理がある。POWER5は、1つのプロセッサを2つのプロセッサであるかのように動かすマルチスレッディングに対応、1つのプロセッサで同じアプリケーションの複数のスレッドを実行できるようになる。マルチスレッディングの目的はアイドル状態を減らすことにあり、複数の作業が同時に行われれば、プロセッササブコンポーネントのアイドル時間が減ることになる。

 マルチスレッディングに対するIBMのアプローチは、Intelのそれとは異なるとハフ氏は話す。Intelはプロセッサの約5%の領域をマルチスレッディング機能に割り当て、性能を約10〜15%高めたという。一方、IBMはマルチスレッディング機能にもっと多くの領域を割いているため、より高度に効率良くスレッドの優先順位を付けることができ、性能は35%ほど強化されているとハフ氏。

 POWER5が導入されるサーバは、大抵マルチスレッディング機能を使う可能性が高いため、IBMはこの機能により多くの領域を割くことができるとハフ氏は指摘する。Intelのプロセッサはシングルスレッド指向のデスクトップに採用される割合が大きく、同社はシングルスレッドを重視する姿勢を続けている。

 来月出荷予定のIBMの新しいi5サーバ2モデルは、同社の新技術「Virtual Engine」を採用する初のマシンでもある。この技術によってPOWER5システムを、プロセッサ当たり10のパーティションに区切ることが可能になる。

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