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2004/05/11 01:47 更新


IBMエバンジェリスト、J2EEによるシステム統合を語る

日本IBMは技術分野別に、9人のエバンジェリストを選出したことを明らかにした。その1人である米持幸寿氏が、J2EEが今後企業でどのように利用されていくかについてプレゼンテーションを行った

 日本IBMは5月10日、都内で記者発表会を行い、同社が提供する技術分野別に、9人のエバンジェリストを選出したことを明らかにした。このうち、オープンテクノロジーやJ2EEの分野のエバンジェリストを務める米持幸寿氏が、J2EEが今後企業でどのように利用されていくかについてプレゼンテーションを行った。

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米持氏。システム統合のほか、J2EE 1.4の特徴について、「Webサービスを標準採用していること」を挙げた。

 「米持先進技塾」の名で、IBMのセミナーなどを開催している同氏。2000年から既に、ソフトウェアのテクノロジーエバンジェリストを名乗り、著書の執筆や講演など、幅広く活躍していた。メインフレームOSやミドルウェアの障害対応、障害解析ソフトウェアの開発、オブジェクト指向開発などの経験を持つ。

 同氏は、企業におけるシステムのあり方、また統合の方法に大きな変化が訪れるとする。

 「従来の統合方法ではシステムの“島”がどんどん増えてしまう」(同氏)

 これは、従来の統合ツールが、ベンダーA社用のシステム統合ツール、 B社用のツール、C社用のツールなどに分かれており、いざ、A、B、Cのシステムを統合する場合には、システム間の接続部分を手作りしなくてはならないことを示している。時間と資金の多くがこの部分に費やされ、不具合などの不確定要素を残してしまう問題点は、システムインテグレータやユーザー企業のシステム担当者の多くにとって、悩みの種になっている。

 特に、今日の企業システムはWebベースに移行しつつあることで、業務情報をリアルタイムに共有する仕組みが求められている。製品企画担当者の入力情報を迅速に生産計画に生かしたり、顧客管理担当者や営業担当者が持つ情報を顧客データベースに反映させるなど、データを全社的に活用するためには、「業務プロセスを柔軟に変化させる必要が出てくる」としている。

 当然、情報システムも、業務プロセスが実現することをシステム的にサポートしなくてはならないため、柔軟であることが求められる。

システム統合の鍵を握るSOA

 そこで、米持氏は、今後のシステム統合の方法論として、「SOA(Service Oriented Architecture)」を紹介した。これは、先ほどの例で言えば、A、B、Cのシステムを、ソフトウェアによる「サービス」として組み立て、統合するという考え方。

 コンセプトはオブジェクト指向と似ている。各システムは、レゴのブロックのようなイメージで独立しており、組み立てる場合も、一方のシステムを他方の接続用の穴に差し込むようなイメージ統合できる

 ここでは、サービスの定義について、「独立して稼動するソフトウェアであること」「公開された方式で呼び出しが可能」「インタフェースが記述可能」「発見メカ二ズムで統合可能であること」などが挙げられている。

 4つ目の「発見メカニズム」と聞くと、具体的には、UDDIによるWebサービスの検索、発見を思い浮かべるかもしれない。米持氏は、「Webサービスはサービスの実現形態の1つと」と位置づけた。いずれにしても、「ソフトウェア部品の接続、切断が柔軟で、高速に行える」ことが、サービスの定義のポイントとなる。

 現在、IBMやMicrosoft、SAPなどが、Webサービス用の言語として、「BPEL」(Business Process Execution Language)の標準化を目指し、標準化団体であるOASISに仕様を提案した。これは、企業内あるいは企業間で、異なるベンダーのシステムを含む複雑な業務アプリケーション同士の連携を、Webサービスを利用して自動化するための標準仕様案の1つだ。

 しかし、BPELと同様の仕様を、W3Cも策定している。サン・マイクロシステムズやオラクルは、W3Cの仕様を支持しており、標準化に向けた争いが懸念されている。

 IBMは、こうしたサービス指向型の統合エンジンとして、「IBM WebSphere Business Integration Foundation v5.1」を展開。WebSphere Application ServerによるJ2EEベース、BPELがネイティブで利用できるワークフロー実行エンジンとなっている。また、BPEL対応のインテグレーション開発ツールとして、「IBM WebSphere Studio Application Developer Integration Edition v5.1」を提供している。

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[怒賀新也,ITmedia]

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