レビュー
2004/05/13 13:55 更新


レビュー:VBユーザー獲得を狙う新たなIDE「Sun Java Studio Creator」 (3/3)


開発支援機能の数々

 他のIDEと同様に、Java Studio Creatorにはコーディングを始めとする開発作業をスムーズに行うためのさまざまな機能がある。

  • コーディング支援

 コーディングを支援する機能として真っ先に思いつくのがコード補完だろう。当然、Java Studio Creatorにも備わっている。使い勝手は他のIDEとほとんど変わらないが、不満を挙げるとすれば、メソッド名などの大文字小文字の区別をするところだ。VB.NETではスペルさえ合っていれば候補が表示されるため、いちいち「Shift」キーを押さなければならないのはストレスかもしれない。

 また、VB.NETから新たに採用されていたコメントやメソッドの折りたたみ機能も用意されている。これは、ソースコード中のコメントやシグネチャの左にある「−」「+」をクリックすることで、ソースコード中での表示、非表示を切り替えることができる。

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画面8■折りたたみ機能


  • バリデータコンポーネント

 ユーザーからの入力に対して、文字列長や値の範囲をチェックするのは業務アプリケーションにとって必須の機能となる。JSFではGUIコンポーネント以外に妥当性チェックを行うバリデータコンポーネントが用意されており、コードを記述することなく入力された値に対して妥当性検査を行うことができる。

  • ページナビゲーション

 JSFではページ遷移をXMLファイルに記述することで、従来のようにサーブレットによるフォワードやリダイレクトを行う必要が無くなっている。誤解しないでいただきたいのは、コントローラであるサーブレットが無くなったからといって、JSPやHTMLに直接遷移先を記述するのではない、ということだ。

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画面9■ページナビゲーション


 ページ遷移の設定にはnavigation.xmlというXMLファイルを編集する必要があるのだが、Java Studio Creatorを用いることでビジュアル的に画面遷移を設定することができる。XMLファイルの編集が完了したら、ボタンクリック時のイベントハンドラに、画面10のように記述すればページ遷移のコーディングが完了する。いかにシンプルになるかが分かっただろう。また、XMLファイルでグラフィカルにページ遷移を表示することで全体の画面構成を見渡しやすくする、といった付加価値もある。

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画面10■画面遷移のコーディング


  • Antのサポート

 Java Studio Creatorでは「Ant」についてもサポートされている。これは他のIDEとの連携を図る場合や、アプリケーションサーバへのデプロイ後の作業を簡略化するためには重要な機能だ。なお、プロジェクトを作成した段階で自動生成されるbuild.xmlには初めから多くのターゲットが記述されている。warファイルを生成するターゲットなどもあり、他のアプリケーションサーバへのデプロイが容易に行えるようになっている。

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画面11■Antのサポート


オンラインデバッグも可能

 Java Studio CreatorにはIDEとして当然なデバッガ機能も搭載されている。前述した通り、アプリケーションサーバと連携させることが可能となっているため、開発環境上から直接デバッグを行うことが可能だ。画面12がデバッガを起動した際の画面となる。

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画面12■デバッガ


 デバッガについては他のIDEと比べてさほど目新しいところがないが、基本的な機能をしっかりと抑えてあることが分かった。特に注目したのは、ブレイクポイントの設定やステップ実行、変数の値の確認などだ。

不足していると思われる点もある

 Java Studio Creatorを試用していて気になった点が幾つかある。その中のひとつがファイルのバージョン管理機構が無いということだ。企業などでは多人数による開発がメインのため、CVSなどのバージョン管理ソフトウェアを用いることが多い。そのため、バージョン管理ソフトウェアとの連携に対応しているIDEも多数ある。しかし、Java Studio Creatorではバージョン管理ソフトウェアとの連携を行うことはできないようだ。また、Eclipseなどにあるローカルヒストリーとの置換機能も用意されていない。小規模な開発をターゲットにしているためだと思われるが、多少気になるところだ。

 また、GUIコンポーネントをフォームに貼り付けることで生産性を向上させられるのは大きなメリットだが、絶対座標指定でしかコンポーネントを貼り付けられないのはマイナスポイントだろう。これでは特定のブラウザサイズにしか対応させられないため、デザインが困難になる可能性が高い。早期アクセス版ということで機能制限が行われているのかもしれないが注意したい。

中小規模開発に多大な威力を発揮することに間違いない

 ここまでJava Studio Creatorの主な機能について解説してきたのだが、確かに小中規模なWebアプリケーションの開発には非常に大きな力を発揮するであろうことは間違いない。これまでJSPやJava Servletを主に開発に使ってきた人にとっては、大きな衝撃となるだろう。しかし、細かなところで気配りが足りず、慣れないうちは直接生産性の向上につながらないかもしれない。製品版でのフォローを願いたいところだ。

 JSFはまだ新しい技術のため、自在に使いこなせる技術者は少ないと思われる。だが、Java Studio Creatorを使うことで、最新の技術を利用し開発を容易に行うことができる。これまでVB.NETによる開発しか行ってこなかった人にはぜひ、Java Studio CreatorでJSP開発を体験していただきたい。

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関連リンク
▼Sun Java Studio 製品ファミリ|サン・マイクロシステムズ
▼サン・マイクロシステムズ
▼ITmedia Javaチャンネル

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[萩原 充,ITmedia]

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