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2004/05/14 17:05 更新


統合、オープン、中小企業――SAPPHIRE '04の焦点

中小企業向け取り組みの強化、小売業界への進出、RIMとの提携、統合プラットフォーム「NetWeaver」など、SAPはSAPPHIRE '04でさまざまなことに焦点を当てた。(IDG)

 かつて「全か無か」のアプローチを採り、競合ソフトメーカーの製品との統合を阻んでいたことで名高い独ソフトベンダーSAPにとって、今は「オープン性」がキーワードになっている。

 SAPが今週主催しているユーザーカンファレンスSAPPHIRE '04で、同社関係者は小売業界に進出する計画を売り込み、また中小企業向けの取り組み拡大を約束した。同社は主に、大企業顧客をターゲットにしていると見なされている。

 同社幹部はまた、統合されたWebサービスベースのエンタープライズサービスアーキテクチャ(ESA)を簡単に構築する取り組みにも焦点を当てた。こうしたアーキテクチャは、企業がSAPと他社のソフトを連係させて、複数のアプリケーションにまたがる業務プロセスを作成できるようにすることで、統合コストを削減することを目指している。

 これを念頭に、SAPのCEO(最高経営責任者)へニング・カガーマン氏は5月12日、同社は統合プラットフォーム「NetWeaver」を使って、顧客による既存のソフトウェア投資の活用を支援するつもりだと語った(5月13日の記事参照)。

 SAPのソフトは柔軟性を提供する一方で、顧客にシングルベンダーも提供すると同氏。「これは向こう10年かそれ以上にわたって、適切なアーキテクチャになると確信している」

 カガーマン氏はまた、SAPの「ロングリーチングメンテナンス戦略」により、企業は既存のR/3 ERPバックボーンから、次世代のmySAP ERPプラットフォームへの移行を強いられることはないと述べた。

 SAPが発表した新製品の1つに、中小企業向けのCRM、ERP、垂直市場向け製品をセットにしたパッケージがある。これは自動車、ハイテク、化学などの業界向けに販売される。また同社は小売市場向けのアプリケーションの販売で、IBMと提携する計画だ(5月13日の記事参照)。両社が提供するソフトは、顧客にRFIDと特殊なデータ管理技術を提供し、在庫予測と補充効率を改善する。

 また同社は、Research In Motion(RIM)との提携も発表。この提携の下、RIMのワイヤレスデバイス「BlackBerry」から、営業支援ソフトmySAP CRMにリンクできるようにする。両社が提供するソリューションは、年内に登場する予定。

 SAPは厳密に大規模企業をターゲットとしているベンダーと見られがちだが、中小企業のニーズにも応えられると、年商2億5000万ドルの製パン会社Tasty BakingのCIO(情報統括責任者)オータム・ベイルズ氏は語る。Tasty Bakingは業務の再活性化のため、R/3のコンポーネントを含むmySAP Business Suiteを導入しているところだ。ベイルズ氏は、「われわれが対処しなくてはならなかったのは、SAPがFortune 500社だけを相手にする企業であるという認識だ。私でさえそう考えていた」と述べている。

 しかし、ほかの顧客と話をし、製品のデモを受けた後、同氏はSAPを気に入ったと話す。

 同氏は、SAPは商品の安全性を規定するバイオテロ関連法への準拠など、製パン業界に特有の事項に対処できたと指摘する。「われわれはSAPのようなパートナーから、豊富なリソースを求めていた」と同氏は語り、Tasty Bakingは、年内にmySAP Business Suiteを稼動させ、レガシーアプリケーションを引退させたい考えだと付け加えた。

 SAPの新たなモジュール式導入アプローチは、スノーモービルやオフロードカーを手がけるArctic Catの社員にとって魅力的だ。同社はR/3 4.6とmySAP CRM 3.0を業務で使っている。

 「最近までSAPは、特にアップグレードに関して全か無かの方式を取ってきたことが問題となっていた」とERPアナリストでチームリーダーのロナルド・モーゼズ氏。1つのアプリケーションをアップグレードしなければならない場合に、相互運用性を確保するためにすべてをアップグレードする必要があったのだ――同氏はこのプロセスには不安があったと話す。しかし、SAPのもっと柔軟なサービスベースのアーキテクチャにより、「アップグレードしたいものを選んで、ほかはそのままにしておくことができるようになった。このモジュール式アプローチにより、最新で最高(の強化機能)を手に入れられる」。

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