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2004/05/13 13:58 更新


「今すぐ移行準備を」とNetWeaverを売り込むSAPのカガーマンCEO

SAPPHIRE '04 New Orleansは2日目を迎え、キーノートにヘニング・カガーマン会長兼CEOが登場した。同氏は、イノベーションによって企業の成長をもたらすSAPの「Enterprise Services Architecture」を説き、移行準備を今すぐ計画するよう促した。

 米国時間の5月12日、ルイジアナ州ニューオーリンズで行われている「SAPPHIRE '04 New Orleans」は2日目を迎え、キーノートにヘニング・カガーマン会長兼CEOが登場した。早朝からミシシッピ河畔のコンベンションセンターに詰め掛けた約3000人のカスタマーやパートナーらを前にカガーマン氏は、イノベーションによって企業の成長をもたらすSAPの「Enterprise Services Architecture」を説き、新しいアーキテクチャへの移行準備を今すぐ計画するよう促した。

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数学者でもあるカガーマンCEO。冗談を挟むこともなく話もロジカル


 Enterprise Services Architectureは、4つのレイヤからなる。ビジネスプロセスを定義し、業界特有のソリューションマップを作成するレイヤ、それを実行するビジネスアプリケーション、インテグレーションとアプリケーションのためのプラットフォームと続き、そしてオンデマンドのITサービスを提供できるコンピューティングインフラがそれらを支える。

 これまでSAPは、理想のビジネスプロセスである「ベストプラクティス」を前面に打ち出し、それらをテンプレート化し、機能別にERPやCRMを企業に導入してきた。しかし、企業の基幹システムはSAPだけで構築されているわけではないし、実際のユーザーの視点から見れば、ビジネスプロセスは機能や組織をまたがっている。機能を横断し、さらに他社製品も含めたインテグレーションでなれば、成長のカギを握るイノベーションを企業にもたらすことはできない。

 もちろん、優れたエンジンとしてのERPコンポーネント群は今後も重要な役割を担うことに変わりはないが、企業や組織の壁を越えた新しいシナリオを考えたとき、アプリケーションもさまざまなコンポーネント(サービス)が組み合わされた「コンポジット」型へと進化する。

プラットフォームベンダーへ飛躍

 依然としてERPベンダーのイメージがつきまとうSAPは、このところその払拭に努めている。統合化されたアプリケーションのプラットフォームであるNetWeaverを自社製品の基盤とするだけでなく、J2EEやWebサービスといったオープンスタンダードを採用することで、「プラットフォームベンダー」としてのSAPを強く印象付けたいところだ。NetWeaverを「R/3以来の革新」として喧伝し、今回のSAPPHIREでも最も大きく取り上げている背景にはそうした狙いも垣間見える。

 NetWeaverには、ポータル、ビジネスインテリジェンス、インテグレーション、マスターデータ管理といった各種コンポーネントがある。SAP R/3の後継であるmySAP ERPを皮切りに同社のアプリケーション群は、NetWeaverによって新しいエンジンに生まれ変わり、企業や組織の壁を越えた革新的なシナリオもそれらを組み合わせることで実現できるようになる。SAPでは、こうした「ネクスト」プラクティスをテンプレート化し、「xApps」として提供していくという。

 既に「xPD」(プロダクト定義)や「xRPM」(リソース&プログラム管理)がSAPからリリースされているが、今後はコラボレーションを中心に18のシナリオに対応したxAppsが登場するほか、さらに30〜40の追加も計画されている。こうしたxAppsの多くはサードパーティーから提供される点もユニークだ。近く登場する18のうち12はサードパーティーからという。

 これまでであれば、ユーザーインタフェースのカスタマイズやアプリケーション間のインテグレーションに膨大な人手とお金を費やしていた企業も、コンポジットアプリケーションのパッケージであるxAppsを利用したり、NetWeaverの機能によって組み合わせることよって大幅なコスト削減と変化に対する柔軟性が手に入れられる。

2007年にはすべて「エンタープライズサービス」に

 カガーマン氏は、コラボレーションにフォーカスした、企業がサービスとして利用できるシナリオを2004年に提供するのを手始めに、ユーザーの生産性を高めるシナリオ、ビジネスプロセスに柔軟性をもたらすシナリオなどを追加し、2007年にはmySAP Business SuiteをすべてEnterprise Services Architectureに移行させるロードマップも明らかにした。これらは単なるWebサービスではなく、企業にイノベーションをもたらし、次なる成長を可能にする「エンタープライズサービス」だ。

 この日のキーノートの冒頭、彼は「1990年代前半に単なるコスト削減を第一の戦略とした企業の71%は、その後の成長に失敗している」と、ニューヨークタイムズ紙を引用している。

 SAPとしては異例ともいえる中期的なロードマップを示すことで、カガーマン氏はカスタマーらの戦略的な投資を可能とするEnterprise Services Architectureへの移行準備を促した。

 「ためらっている時間はない。今すぐ準備を始めるべきだ」(カガーマン氏)

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▼SAPPHIRE '04 New Orleans Report

[浅井英二,ITmedia]

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