IDG インタビュー
2004/05/19 18:53 更新

Interview:
「ユーザーはもっと楽になる」――SAP CEOが語る今後の方向性 (1/2)

Microsoftとのプラットフォーム統合強化を発表したSAP。その提携の影響や事業拡大のための買収の可能性、ユーザーの仕事はもっとシンプルになるのか、といった問いをカガーマンCEOにぶつけた。(IDG)

 独SAPの会長兼CEO(最高経営責任者)ヘニング・カガーマン氏は、先週ニューオーリンズで開いたカスタマーカンファレンスSAPPHIREで、Microsoftとの重要なソフト開発提携やそのほか多数の事柄について発表を行った。

 8000のSAP顧客が集まった同イベントから程なくして、カガーマン氏はIDG News Serviceのインタビューに応え、Microsoftとの提携の影響だけでなく、新しいサービス志向アーキテクチャへの取り組みを深めているSAPの全体的な方向性について語った。

――Microsoftとのプラットフォーム統合強化の提携により、SAPが最も恩恵を受けると一部では言われています。SAPがビッグウィナーであるとの見方には賛成ですか?

カガーマン氏 いえ、勝者は顧客です。あなたの予想通りの答えでしょうが、実際にそうなのです。当社にはMicrosoft製品を使っている顧客がたくさんいます。特に大手顧客は、2社のプラットフォームの相互運用性を求めています。われわれが相互運用に投資することを、こうした顧客は喜ぶでしょう。

――プラットフォームの統合強化に合意することが、MicrosoftにSAPの領分、特にミッドマーケット(中小企業市場)にさらに積極的に進出するチャンスを与えるかもしれないという懸念はないのですか?

カガーマン氏 ありませんね。この提携は双方にとってプラスになります。相互運用性を高めなければ、顧客は勝者を選ばなくてはならない(つまり1社のベンダーとだけ付き合う)かもしれません。当社が常に勝者であるとは言いませんが、当社の多数のアプリケーションがわれわれに有利に働いていると言っていいでしょう。今回の提携は、それぞれが今の位置でもっと容易に(うまく競争力を保てるように)してくれます。

――ですが、ミッドマーケットはSAPとMicrosoftが直接角突き合わせている分野――両社の協力が終わり、実際に競争が始まる分野なのではないですか。

カガーマン氏 その通りです。Microsoftはミッドマーケットでビジネスソリューションを提供しています。当社もです。われわれはこの分野で競争していますが、その競争はアプリケーションをめぐるものであり、プラットフォームをめぐるものではありません。この市場の企業は、両社のソリューションを両方とも買うことはありません。そんな余裕はないでしょう。ほとんどがMicrosoftかSAP、どちらかのソリューションを選ぶでしょう。

――例えばMicrosoftのOfficeやmySAP CRMなどのアプリケーションを、顧客がもっと簡単に選べるようにしたいというのがあなたの考えですが、これはちょっとレゴに似たアプローチのように思えます。

カガーマン氏 そうですね。OfficeとSAPのいくつかのアプリケーションを一緒に使いたいという顧客もいるかもしれません。このような統合はわれわれには有益です。

――本当にそうでしょうか? こうした統合によって、顧客はベンダー各社の製品をより容易に連係できるようになるかもしれませんが、そうしたオープン性によって、顧客を囲い込めなくなるという不安はないのですか?

カガーマン氏 顧客を囲い込みたいとは思っていません。そうしたやり方は良い戦略とは言えません。顧客は囲い込まれることを恐れています。SAPがある程度の「ウォレットシェア」に達すると、そうした傾向が見られるようになります。そうなると顧客は取締役会レベルで反応し、取締役たちはSAPに依存しすぎているのではないかと議論し始めます。彼らには2つの選択肢があります。ほかのベンダーを採用するか、あるいは主要サプライヤー(SAP)に対して、顧客が選択肢を持てるほどの十分なオープン性と柔軟性を提供するよう求めるかです。私はSAPがこうしたオープン性と柔軟性を十分に提供していると確信しています。

――Microsoftとともに詳細なプラットフォーム統合のロードマップを打ち立てたわけですが、IBMについてはどうですか? WebSphereに関して同様の計画を考えていますか?

カガーマン氏 WebSphereとは既にある程度の統合ができています。SAPPHIREでIBMとの小売業向けソリューションでの提携を発表しましたが、この提携はNetWeaverとWebSphereにある程度の相互運用性がなければ不可能です。この2つの統合は、Microsoftとのプラットフォーム統合ほど広範ではないかもしれませんが、だからといってIBMがこれを拡大できないということではありません。当社はIBMを考慮から外してはいませんし、交渉する意欲もあります。ですが、これは彼らが選択した結果なのです。MicrosoftとSAPが統合を強化しているのは、双方がそれを望んでいるからです。IBMはさらなる統合を望んでいないようです。

――その理由は?

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